私は会社から出るとどっとため息をついた。
繰り返される上司からの叱責。
断れない性格のせいで増える終わりのない仕事。
このままどこかへ行ってしまいたい。
そう思ったとき新しく通りにオープンした雑貨屋さんを見つけた。
そのときなぜかわからない。
まるで吸い寄せられるように扉を開いた。
雑貨屋さんには何も商品が置いていなかった。
壁にはいろんな絵がかかっていた。
独特の雰囲気にうっとりしていると奥の方から澄んだ声がかかった「何かお探しですか?」レジの方からだ。
レジには不釣り合いな大きい水晶玉が鎮座している。
視線を水晶玉から上にスライドさせるとメガネをかけたいかにもな店員さんがいた。
特徴のない普通の顔だ。
「あの、ここ商品ってどこにあります?」「当店はお客様のオーダーするものをお出しするシステムになっております。お客様が欲しいものはなんですか?」私の憂鬱に耽っていた心に、新しい光が差し込んでいるような気がした。
そしてこれをなぜ自分が欲しいのかわからなかったが腹は決まっていた。
「キャンドルが欲しいんだ。何か特別なキャンドルがあれば教えてくれないか?」店員は微笑みながら頷き、奥から引き出しを取り出した。
その引き出しから、美しく装飾されたキャンドルが次々と現れた。
花の形をしたものや、星座の模様が施されたもの、どれもが他では見たことのないような独創的なデザインだった。
店員は手際よくキャンドルを並べながら言った。
「お好きなものが見つかりましたら、お気軽におっしゃってください。一つ一つに特別な意味が込められていますよ。」
私は一つ、また一つとキャンドルを手に取りながら、その背後にあるストーリーを知りたくなった。
店員の話に耳を傾けると、それぞれのキャンドルには願い事や感動的なエピソードが込められていた。
驚くべきことに、そのキャンドルたちが本当に奇跡を起こしてきたというのだ。
「これらのキャンドルは、ただの灯りではなく、心の奥底に秘めた思いをかなえる力があるとされています。」店員は優雅に手招きし、奥の席に案内してくれた。
「どれかお好みのキャンドルがありますでしょうか?」
私は心のなかで何かが騒ぎ始めているのを感じた。
これが私が求めていたものだと確信し、一つのキャンドルに手を伸ばした。
それは深紅の色調で、表面には小さな金箔が散りばめられていた。
店員は微笑みながら言った。
「素晴らしい選択です。このキャンドルは『運命の紅』と呼ばれています。」
「運命の紅?」私はその名前に興味津々で尋ねた。
店員は微笑みを浮かべながら語り始めた。
「このキャンドルは、運命を変える力を秘めています。その火を灯すことで、あなたの人生に大きな変化が訪れるでしょう。ただし、その力は慎重に扱わなければなりません。」
私はキャンドルを手に、その言葉に耳を傾けた。
話の間、店内には神秘的な雰囲気が漂っており、まるで他の次元に足を踏み入れたような錯覚に陥った。
「このキャンドルには願いを込めることができます。そして、願いが叶ったときには、灯りが特別な輝きを放ちます。」店員は続けた。
「ただし、その代償もまた払う必要があります。何か特別なものをお持ちでしょうか?」
私は少し戸惑いながらも、あるものを提案した。
店員は静かに頷き、キャンドルに火を灯した。
その瞬間、部屋は幻想的な輝きに包まれた。
それからというもの、私の人生は次第に変わり始めた。
仕事では思わぬチャンスが巡ってきて、孤独もまた新しい友情に変わった。
キャンドルの力が奏功しているのか、それとも偶然か。しかし、私は運命の紅に救われたと信じていた。
その不思議なキャンドルを通じて、私の人生は喜びと希望に満ちたものとなった。と
ある日、封筒が届いた。
件名は「同窓会のご案内。」誰が送ってきたのだろうか。
送り主は知らない人の名前だった。
手紙には送り主が自分の高校の友達であったこと、自分との思い出らしきこと、良ければまた同窓会で会いたいことが書かれていた。
なぜか鼻がツンとした気がしたがすぐに治った。
「怪しい手紙だな。何の冗談なのだろうか」私はその手紙を封筒ごとそっとゴミ箱に投げ入れた。
恋人が天に旅立ってもう半年になる。毎年イルミネーションされたこの通りを通るたび、その人のことを思い出す。幼なじみの君は2人きりになるとなかなかシャイでびっくりしたよ。喫茶店でようやく話が弾んで嬉しかったなあ。この人しか私好きじゃないと思ったのに、なんで、なんで.....。あの日、愛を誓ったツリーの下に気づいたらいた。目を閉じると恋人とのたくさんの思い出が頭をよぎる。初めて一緒に作った料理を持って行って初めてピクニックに行ったこと。一緒に映画を見に行った後に2人してどハマりして映画の聖地巡礼もしたね。これからもっと楽しい日々を過ごすはずだったのに。顔を温かいものが伝う。でも神様は最後に私にプレゼントをくれた。私が彼のことを忘れてしまわないように。私もいつか向こうに行ったら彼に自慢してやるんだ。彼が見ることのできない神様からのプレゼントを。私は大きくなったお腹をさすって病院へ向かって再び歩き始めた。
冬になるとイルミネーションが街中を燦々と照らしている。でも僕は今イルミネーションに浸る気分になれなかった。なぜなら幼なじみとイルミネーションを見に行くという話になって2人で歩いているのだが、どうしても幼なじみを異性として意識してしまい、普段通りに話せない。いつもはこんなはずじゃないのに。お互いが下を向いて少し気まずくなってきたところで、幼なじみが言った。「あそこの喫茶店入ろうよ。」「そうだね。外寒いし。」2人で同じ暖かいコーヒーを飲む。暖かいコーヒーが冷え固まった心を溶かしたのか、今までが嘘かのように思い出話に花が咲いた。帰り道に大きなツリーがイルミネーションされているのを2人で見上げた。ふと視線があった。彼女が口を開いた。「好きだよ。」僕は目を見開いた。「僕も好きだよ。」僕たちは吸い寄せられるように歩み寄って、そっと口づけを交わした。
飛べない翼が私にはある。
昔は空を自由に泳いでいた。
まっすぐ飛んだり回転したり、他の子と並べて走 ったり何でもできた。
でも今は違う。
私の翼は悪い人たちによって手折られてしまった。
今はもう地をはいつくばって進むことしかできない。
飛んだ感覚を私の体は覚えている。
だから、余計に悔しい。
でも、私は少しずつ昔の自分を取り戻すためにトレーニングしている。
何度くじけそうになっても諦めない。
必ず飛んでみせる。
あの太陽にたどり着くために。
ありがとう。
悪い人たち。
私はもっと強くなったよ。
よくここに来たね。知りたいかい?君のもう一つの物語。
この世界には二つの世界がある。一つは君たちがいる現実世界。もう一つはパラレルワールド、並行世界。君の行動を決めているのは君じゃなくて向こうの世界の君なんだよ。