真夜中に君が会いに来た
風はそんなに強くない日
狭い箱を君は開けに来た
僕はただ目を見開くことしか出来なくて
瞬き1つしてしまえば彼女は微笑んでいる
差し出された手を掴んで
羽ばたく音がとても心地よかった
_天使と旅をした
「今日の心模様は〜っ、うーん、テスト面倒臭い!」
「んな事言ってないで、さっさと支度しろー」
何でこの世にテストなんてものが存在するんだろうね〜など色々愚痴を漏らしながら居候は制服を着ていく。
「てゆーか、私、君よりも年上だよね!?敬語は!?」
「あんたのことを年上だと思ったこと1度もねぇよ…」
「そっかぁそれは残念」
ニコニコ笑顔で彼女は支度を済ませる。ふと、棚の上にある薬に気がついた。あれは確か、
「…これ、忘れてる」
しっかりと昼分のカプセルを渡した。終始彼女は困ったように笑うので、ほんの少し自分まで胸がチクリと傷んだ。
「…テスト、頑張れるといいなぁ」
「出来るだろ、あんた頭良いんだから」
「…そうだねぇ」
俺たちは2人並んで通学路を進む。
彼女に猶予がないことを知りながら。
_残り少ない居候
「何も要らないよ。強いて言うなら君が欲しいところだけど」
「ハイハイ、口説き文句はいいですから、早く治してくださいね、それ」
「うーん、努力するよ…それにしても、君には敵わないなぁ」
ふふ、と呆れたように笑うので、私はその顔をただ不思議そうに見る。この人はいつも笑う。なんとゆうか、笑顔を無理やり貼り付けているような感じ。
丁度私が大学に入学したタイミングで彼はやらかしたのだ。仕事のついでに、私の家へ寄ろうとしたところ、アクセルとブレーキを踏み間違えて事故ったらしい。
いや、高齢者じゃあるまいし。まだ20代なのに。
そして、どことなく今に至った。
終わらせるはずだった彼との関係も、結局はこれでぱぁだ。
まだまだ義兄は、私を好きらしい。LIKEかLOVEかは知らないが。
_これがイケナイ恋?
もしも未来を見れるなら、あの人の未来を見たい。
あの人は高嶺の花だからきっと誰かと恋に落ちそうな気がする。だからせめて、無駄だろうけど、誰とも恋に落ちない未来であってほしい。
その時までにはきっと私は勇気を溜めておくから。ちゃんと私から気持ちを伝えるから。
でも、恋人出来ちゃうんだろうなぁ。
あの人が見つめるあの子への視線は、単なる「友達」なんかじゃない、多分だけど。好きなんだろうなぁ。
意識しているからこそ沸くこの「ヤキモチ」とゆうよりかははるかに重い「嫉妬」と「嫌悪感」がぐちゃぐちゃに混ざりあって、私の胸を締め付ける。
忘れてしまうことも出来ないぐらい私はあの人のことを憶えているだろうね。
だったらまぁ、しょうがない、遠くへ行こうかな。
_未来を知るよりも先に
桜散るその瞬間、私はあの人に恋をした。
慣れない制服に身を包んだ私たちは桜に歓迎されながら帰路に着く。
各々が帰る中、私と彼だけが取り残されていた。私は純粋に、桜を堪能してから帰ろうと思ったのだけれど、もう1人お客さんがいたみたい。
名前も知らない男の子は桜並木に咲く1本の八重桜を見上げている。桜越しに見える彼はとても綺麗だった。寂しそうにしていた顔は、桜を前にすると綻んでしまうらしい。
不意に、彼と目が合った。見つめ過ぎたかな。
「今日はとても天気が良くて、桜が綺麗だよね」なんて、言えたら良かっただろうに。私の頬はほんのり赤く染っているだろう。
花びらが風と踊る間、私はずっと迷っている。
_桜色の初恋を