ミツ

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11/14/2025, 7:59:13 AM

彼が私を傷つけるような言葉を言ったら。

そうして溢れた私の涙が、彼の心に突き刺さったら。

それはどんなに良いだろう。

気にしてほしい。

私の事を、深くまで知って。

表面は、嫌ってほしい。

でも、私の心は愛してほしい。

一緒に帰って、一緒に笑って、そのうち手もつないで。

それでも、外では、「私と一緒にいるのが恥ずかしいから」って、距離をとってほしい。

誰にでも完璧な彼の、心の内を見せてほしい。

私にだけ、「汚い感情」を見せてほしい。

全てぶちまけてほしい。

それから、全部理解して、その上で、彼の本心で、「愛してる」って聞けたら。

それはどんなに良いだろう。


 祈りの果て

11/8/2025, 1:16:05 PM

その昔、地上にも天使がいた。

天使は、とても美しい羽を持っている。

夜になれば、全てのものを吸収してしまいそうな、真っ黒な羽を。

朝になれば、全てのものを跳ね返してしまいそうな、真っ白な羽を背中に生やした。

愚かにも人々は、天使を捕まえて、その羽を一目見ようと躍起になった。

しかし当然、天使が人間の好きにされるわけもなく。

各地でポツポツと目撃情報はあがっても、決して人間が触れることは叶わなかった。

やがて、天使の話題が収まった頃。


一人の天使が、天に帰ろうとしているところ、強烈な眠気に襲われた。

天使はふらめく。

そうしてゆっくりと、地面に足をつけた。


何時間か経った頃、天使は目を覚ました。

どうやら寝てしまっていたらしい。

目の前には、大勢の人。

いや、その前に、鉄格子が見えた。

天使は捕らえられてしまったのだ。

人々は口々に言う。

「素晴らしい。」

「美しい。」

「真っ白だ。」

そこに、仕切り役のような人物が声をはった。

「順番に並んでください!今、檻をどかしますから。」

人は続々と列に並ぶ。

ゆうに百は超えるだろうか。

先頭の数名は、いまだ一番を取り合っている。

仕切り役が合図を送ると、重たい音を立てながら、鉄格子があがり、もう天使と人とを遮るものは何もない。

先頭の座を勝ち取った人間がゆっくりと前へ進んだ。

仕切り役が言う。

「一人、一本ですから。」

天使の背中に、焼かれるような痛みが走った。

人間の手には天使の羽根。

天使は転がり、悶えている。


何十回目か。

天使の美しかった羽の片側は完全にむしり取られていた。

天使は人間の数百倍の回復力をもつ。

それが、天使に生き地獄を味あわせていた。

もはや、息をしているかすら分からない。

ひたすら背中の羽をむしられ続ける。

天使は、限界を迎えていた。


天使の羽が、数秒真っ黒に変わる。

人々は息を呑んだ。

天使の羽が元の色に戻る時には、天使の息は尽きていた。

天使から抜いた羽根は色を失う。

天使の背中に生えている羽も、抜けば色を失った。


それならばと、天使ごと展示しようとしたが、時間が立つにつれて、天使のからだは薄くなり、最後には感触すらも消えてしまったと言う。


 透明な羽根

11/1/2025, 3:21:57 PM

「こんにちは。
突然ごめんなさい。
貴方から何の連絡もないので、今こうして、手紙を書いています。

最近、寒くなってきましたね。
そちらは、どんな景色になったのでしょうか。
良ければ、写真を送ってください。
どんな形でも構いませんから。

もうすぐ貴方と別れて、一年経ちます。
英語には慣れましたか?
毎日楽しいでしょうか。
物騒なニュースも見ますから、どうか、気を付けてください。

去年、来月には帰ると言っていましたが、実際帰れそうですか?
心待ちにしております。
ですからどうか、この手紙を開いたのなら、返事を書いて欲しいのです。
私は、貴方が心配です。

追記
Is the address correct?
If it's incorrect, please send it to the address below.

○○○○○○○○□□○○」


「Hello.
The address is probably correct, but the person who used to live here no longer resides here, so I am returning this letter.
I'm going to write something a little inappropriate, so please read carefully.

... Is that alright?
... The person who used to live here apparently passed away about three months ago.
I heard it from the landlord.
If you'd like, please send another letter.
I'll be lonely for a while.」


「Thank you so much for explaining the reasons so carefully.
And I also appreciate your kind consideration.
It's true that I'm filled with complex emotions right now.
However, I don't think it's right for me to rely on you.
I haven't fully come to terms with the reality yet, but I will do my best to move forward.
Please continue to support me.
I sincerely wish you happiness.」


 凍える朝

10/31/2025, 1:42:37 PM

【小さい頃から、絵を描くのが好きだった。】

目の前に、彼女が立っていた。

人通りの少ない歩道の真ん中に、数年前に見て以降、一度も見なかった彼女が。

【君も、褒めてくれたよね。】

〈君〉という呼び方が鼻についた。

【それで、話すようになった。】

心臓が、煩い。

【いつの間に、唯一無二の親友になってた。】

吐きそうなほど、頭の中が、グワングワンと揺れていた。

【いつからだっけ?】

彼女がこちらに近づく。

息がかかりそうなほど、まつげがあたりそうなほど、いつのまにか近くにいた。

【君が私をいじめ始めたのは。】

彼女は、少し楽しそうだった。

【ねぇ、理由を聞きたいの。】

甘ったるい声が、耳をなぞる。

そのまま、耳の中に、こびりつきそうだった。


 光と影

10/25/2025, 2:05:38 PM

世界は素晴らしい。

なぜなら、こんなにも綺麗なのだから。

綺麗は正義だ。

綺麗は無二だ。

綺麗なものは、つねに人の心を揺さぶってきた。

それがどんなものであれ、人々は美を求めた。

どんな犠牲があっても、そんなもの、知ったこっちゃない。

なぜなら、…言っただろ?

綺麗が正義だからだ。

それが全てさ。


綺麗なものを誰よりも綺麗な角度からみようとする。

もっと、もっと。

優越感を覚え、背徳感をすする。


世界は素晴らしい!

素晴らしい!

なぜなら、…そうさ綺麗だから!

自ら命を投げ出すのは、この世界の「綺麗」を見つけられなかったから。

それでも、思考が絶えると、それを美しいと話すやつは必ずいる。

どんな人でも、この世界の「綺麗」だが、それを見出すのも、誰かに見入られた人なのだ。

人は支え合って生きている。

自ら命を投げ出すのは、人の「綺麗」が、心に届かなかった人なのだ。


カラスは綺麗だ。

そう、とても、どこもかしこも愛おしい。

カラスは、光るものを集める習性がある。


物事のはじまりは、興味。

ひいては、綺麗から始まるのかもしれない。


 揺れる羽根

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