ああ嫌だ!!!
嫌だ嫌だ嫌だ!!
産まなきゃよかった!!
こんな子供!!
可愛くもなんともないじゃない!!
死ぬような思いまでして、やっと産んだ子供なのに!!!
ぶよぶよで、赤くて、何もかわいくない!!
まるで私の嫌いなアレ!!
ああ、気持ち悪い。
やっと大きくなって、“普通”の子供になったのに!!
色んな物を壊して、すぐ癇癪を起こして、泥だらけで帰ってきたと思ったら、ご飯はまだかと……。
どうして感謝してくれない相手に、こんなに尽くさないといけないの??
辛い辛い。
本当に、もう…。
自分の子なのに!
愛してるのに…。
……あいしてる?
あら。
私、アレのこと、あいしてたかしら。
あら?
愛おしいと思ったことが……?
あら?
変ね。
おかしくなってしまったの?
でも、もしもこれで、私が楽になれるのなら。
私は……。
私は、穏やかに眠るその顔を見ながら、そっと、柔らかな首に、手をかけていた。
どうして
そろそろスキー授業が始まります…。やだー。
「貴方は今、幸せですか?」
あなたはいま、しあわせですか?
アナタハイマ、シアワセデスカ?
ぐるぐる回っている。
頭の中で、ずっと。
耳の奥で、響いている。
どこで聞いたんだっけな。
テレビを見ながら、ふと頭に浮かんだ言葉。
『貴方は今、幸せですか?』
えーと。
なんだっけ?
えー。
んん。
んーと…。
えー…。
誰から言われたんだっけ。
そもそも自分に言われた言葉ではない?
なんだっけな。
玄関で…そう。
玄関で聞いた気がする…。
えーーーー。
あっ。
そうか。
思い出した。
変な声が聞こえて、外に出たら、人がいたんだ。
なんて言ってたっけ。
確か…………なんとか教。
なんだっけ。
どうなったんだっけ、そこから。
中に入ろうとしてきたから……。
えー………と。
そう。
押し出したんだ。
で、えーと。
鍵をかけて……。
えー。
あ、そうか。
今がその後か。
…そうか。
外から変な声が聞こえるのはそのせいか。
「「貴方は今幸せですか!!!私たちの神が仰るには!!」」
あーだこーだ。
煩いな。
帰ってもらおう。
ガチャ
「あのー」
「「教えを聞く気になったんですね!!外ではあれなんで、中お邪魔しますー」」
「えっ、いや。え。あの。」
「「失礼しますね!」」
「えっ。駄目です!!でてってください!」
「「あっ、貴方ちょっと!!!」」
ガチャ
ふー。
そうだった。
入ろうとしてきたから、鍵をかけてたんだ。
そうだった…。
……。
………………。
……………………………?
なんだっけ、テレビでも見よう。
幸せとは
辺り一面真っ白だった。
空と地面の区別もつかない日に、私は彼を見つけた。
真っ黒な服で全身を包む彼は、世界から切り離されているかのようにも思える。
どこかを見つめる姿は、神秘的だった。
数センチ先だって見えるはずがないのに、まるで何か明確な意思を持って見つめているように。
それが舞い落ちる雪に向けられていたのか、はたまた別のものだったのかは分からない。
彼は、私に一瞥くれたあとも、またどこかを見つめていた。
小さく私の方へ手招きをしながら。
彼は時折口を動かしていた。
何か言っていたのかは分からない。
私の耳に聞こえるのはただ、私が時々、踏み固める雪の音と寒風の切り裂くような音だけだった。
雪が、音を吸収する。
彼が発したかもしれない声も、例外なく吸収される。
それを、少しだけ憎らしく感じた。
雪の静寂
乱雑に郵便受けの中に手を突っ込む。
指先に感じたのは、柔らかくて少し硬い、沢山の紙の感触。
彼は白い息を吐きながら、それらを無造作に引っ張り出した。
見ると、堅苦しい字で書かれた手紙や、几帳面に封緘された手紙、可愛らしい柄のある手紙などが十枚程度届いている。
彼は家に上がると、まず封のしてある手紙から、一通一通丁寧に中身を出した。
そうして出した手紙と、封のしていない手紙とを順番に座卓に並べる。
それに満足すると、左上の手紙を手に取った。
どうやら読むらしい。
太陽は真上に昇っていた。
いつの間にか、通りは騒がしく、鳥はさえずることをやめている。
彼も、あらかた手紙に目を通しおえたようだった。
手紙を一つの束にまとめ、立ち上がり、タンスに向かう。
一番上の引き出しを、静かに引いた。
中には、複数枚に分け、一纏まりにしてある手紙の束がぎっしり詰まっていた。
彼はそれらの上に、今年届いた手紙の束を投げるように置いた。
秘密の手紙
たとえ自分が、二千円のものを買ったとしても、それと同等の値段のものが返ってくるとは限らない。
大体は、数百円で買える安いもの。
でもいいの。
問題は値段じゃなくて、相手の気持ちだから。
………普段からずっと気にかけてた人に、同等の気遣いも返されないまま、見切られるのってどんな気分?
正直に言うとね、同等の価値があるものをもらいたい。
……思い返せば、なにも返してもらったことないかもな。
だいたい三千円とかのものあげてたのに、誕生日プレゼントも、ホワイトチョコのお返しもなし。
別に特別私に優しいわけでもない。
なんだか長い夢から覚めたかんじ。
贈り物の中身