辺り一面真っ白だった。
空と地面の区別もつかない日に、私は彼を見つけた。
真っ黒な服で全身を包む彼は、世界から切り離されているかのようにも思える。
どこかを見つめる姿は、神秘的だった。
数センチ先だって見えるはずがないのに、まるで何か明確な意思を持って見つめているように。
それが舞い落ちる雪に向けられていたのか、はたまた別のものだったのかは分からない。
彼は、私に一瞥くれたあとも、またどこかを見つめていた。
小さく私の方へ手招きをしながら。
彼は時折口を動かしていた。
何か言っていたのかは分からない。
私の耳に聞こえるのはただ、私が時々、踏み固める雪の音と寒風の切り裂くような音だけだった。
雪が、音を吸収する。
彼が発したかもしれない声も、例外なく吸収される。
それを、少しだけ憎らしく感じた。
雪の静寂
12/17/2025, 12:10:21 PM