平日の夕方頃、学ランのポケットに手を入れ、だらだらと歩いている友達がこう言った。
「今日の小テストまじ意味わかんなさすぎて東大の問題解いてんのかと思ったわ」
「いやいや… あれは普通に公式覚えてれば解けるよ?」
「あー? 天才アピかよ、だるいって」
「別にそんなのしてないって…」
私よりも頭が悪い椋本(むくもと)くんはいつも言い方に棘があって冷たい。
「てかなんで八那木(はちなき)ってなんでそんなに地頭良いの?俺には一生理解できんわ」
「私だってちゃんと努力してるよ、あと別に地頭そこまで良くないし」
「はい、八那木お前嘘ついてるよな?俺の目は誤魔化せねえよ?」
「こんなしょうもない嘘つくわけないから。少しは考えなさいよ…」
そんな他愛もない会話をしていると3つの別れ道が見えてきた。
私はいつも真ん中の道。椋本くんは1番右の道。
「じゃ、俺こっちだから」
「わかってるよ、じゃあね」
自分の前に伸びている影を見つめながら歩いていると前から大きい音が聞こえてきた。
「ん…?え、工事中?」
「あーすみません!ここ今工事してて…申し訳ないんですけど、この道戻って左側から通ってください、
ご協力お願いします!」
ぼろぼろになって汚れている作業服を着たおじいさんがそう言って軽くお辞儀をした。
まぁ仕方がない、たまには違う道くらい通ってやろうではないか。そう思い、珍しくいつもは通らない1番左側の道を進んだ。
「何回か通ったことあるけどやっぱりなんか慣れないなぁ…」
いつも通らない道を通るときはなんだか少し緊張してしまう。別に緊張なんかしなくてもいいのに。
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15分くらい経っただろうか。
自分が今どこにいるのかすらわからなくなってしまった。
空がオレンジ色から紺色へと変わってきた。
「あーもう… ここどこなの? もはやイライラしてきた…」
一体どこにいるのかわからないが、「世矢馬町(よやまちょう)」と書いてある看板を見たぐらいだ。
世矢馬町なんて町あったっけ?
いや、もしかして隣町まで来てしまったのか?
方向音痴すぎる自分に絶望しながらもスマホでマップを開く。
だが、マップを見たところで地図が読めないから何も読み取れないしわからない。
さぁどうする八那木、来た道を戻るという謎の記憶力ゲームを1人でするしかないのか。
うん…するしかない。
「帰るのにどれだけ時間がかかってもいいからとにかく元の道に戻ろう…」
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20分くらい経った頃。
「よし、あの角を曲がれば元の道に戻れる…!」
曲がった先に広がるその光景は私にとって絶望を感じさせるものだった。
「えぇ…何ここ?」
そう、全く知らない場所だったのだ。
途中まで全て完璧にあっていたはずなのに、突然知らない場所に着いてしまった。
時刻は19時2分。今日は好きなドラマの放送があるから早く帰りたいのに。
「あっ、そっか!!親に迎えに来てもらえばいいんだ!!」
今居る住所をお母さんに送ってここに来て欲しいって送ればいいんだ、なぜ私は記憶力ゲームなんてことをしたのか。
とにかく今いる現在地の住所をお店、建物の名前からなんとか検索し、お母さんに送った。
「琴葉(ことは)ちゃん?」
「道に迷っちゃって、迎えに来て欲しい」
「お母さん今お家にいないから迎えに行けない、ごめんね」
「わかった、とりあえずなんとかして帰るね」
「 うわ〜、タイミング悪すぎ、数打てば当たる精神で元の道を探そう…」
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どのくらいの時間が経ったのだろうか。
体力も無くなってきたし、喉も乾いた。
古民家の家の前には錆だらけの古びた自転車。
コンビニエンスストアや公園は1つも見つからない。
表札が掠れていて読めなくなっている家。
もうどうしたらいいかわからない。
あ、AIに頼ればいいのかな。
スマホの画面をマップからトーク画面へと変える。
「ねえねえ、世矢馬町 〇〇-△△-15-2から○○公園までの案内ってできる?」と打ち込んだ。
○○公園は私の家の近くの公園だ。
数秒待ち、帰ってきた言葉は私を氷のように固まらせた。
「世矢馬町 〇〇-△△-15-2 という町名はXXXX年X月
X日現在、確認される限り存在していないです。」
あ、もう帰れないんだな。
※ この物語はフィクショ
※※この物語はフィクショんでス。
登場嵷ル人物名・地名・団体名蔬どは実在のも█とは関係あリませン。
テーマ 「たまには」
作品名 「隣町」
朝、起きると7時55分だった。
あと5分で家を出ないと遅刻する。
急いで1階に降り、お母さんに「行っていらっしゃい」と声をかけられる。急いでるから今はそんな返事をしている場合では無い。
横断歩道の信号は赤だが、車は一切いない。
まあいいや、と思い渡った瞬間、ものすごいスピードでトラックが突っ込んできた。
「あ''ぁっっっ!!!!!……………………」
俺の人生はここで終わりなのか。
目の前が暗くなってきた。
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目を開けると時計は7時55分だった。
「えっ……俺、さっき……いや、夢か……」
急いで1階に降り、お母さんから「行ってらっしゃい」と声をかけられる。
とにかく走った。横断歩道の信号はまた赤色だった。
だが、地面には血痕がたくさん残っていた。
「え…?」
でも今は急がないといけない。
走り出すと遠くからものすごいスピードでトラックが
突っ込んできた。
声も出せないまま、目の前が暗くなってくる。
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目を開けると、7時55分。
「は…?なんだこれ…」
とりあえず1階に降りる。
お母さんから「行ってらっしゃい」という声が聞こえた。「ループ…?いや、でもさっき血痕あったよな…?」
今度はゆっくりと歩き、いつもの横断歩道の場所に向かう。
すると、さっき俺が死んだ場所、横断歩道の少し手前に血痕がある。「なんだよこれ…ループしてるのかしてないのかわかんねぇな…」
すると、後ろから大きい音が聞こえてきた。
「またトラっ…」
目の前が暗くなってくる。
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目を開けると7時55分。
「なんかマジで怖くなってきた…んだよこれ…」
1階へ降りるとお母さんの声が聞こえてくる。
どうやったらこの状況から抜け出せるのか。
いや、むしろ抜け出そうとすればするほど抜け出せなくなる…?そんな感じの内容、この前ゲームで見たな。
抜け出せそうなタイミングが来るまで、同じことを
繰り返せばいいか…
外を出て横断歩道の信号を見る。
赤色だ。
よし、あとはタイミングが来るまで待つだけ。
「おいっっ!!そこの君!!避けてくれーーー!!!」
振り返ると、運転席から顔を出しているトラックの
運転手が後ろから叫んでいる。
これもどうせ夢に決まってる。
死ぬのもなんだか慣れてきたし、まぁいいか。
足元を見ると、血痕の痕がなかった。
「 え 」
テーマ 「こんな夢を見た」
作品名 「7時55分」
※この物語は最後まで見ることを推奨しています。
「また会社で失敗してしまって…ほんと、消えたい
気分ですよ…(笑)」
「そうなんですね…では…これからとある話をしますね。これは最近、私が体験した話です。」
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私は仕事帰り、いつも通り改札を抜け、駅の出口に向かって歩いていました。
暗くなってしまった静かな夜の中、星がきらきらと
輝いていたのを覚えています。
大きい通りへ出て、住宅街に入りました。
時刻は20:12分、その日はかなり早く帰れた方でした。
今日は何のドラマを見ようかな〜…そんなことを
考えていると、公衆電話が見えてきたんです。
だけど、問題は公衆電話の横にあるものなんです。
「え…タイムマシーン…?」
この世界は好きなタイミングでタイムマシーンが
使える。一応戻れるのは自分が生きているときの時代のみだ。
「え、普通コンビニの横とかじゃないの?
なんでここにあるんだ?」
通常であれば、コンビニエンスストアや公園の近くに設置してあるが、ここは公園もなければ学校もない
ただの辺鄙(へんぴ)な住宅街。
「公衆電話の横って珍しい…変なところにあるなぁ…
なんか設定とか、入ったときの雰囲気とかが違うからここに設置してあるのかな?」
私は中の構造がどんなものなのか気になり、
重たい鉄製のドアを引っ張り、中へ入りました。
開けた扉を閉じて、機械の中を見渡したんですけど、
普通のタイムマシーンと変わんない気がしたので
出ようとしました。
扉に再び手をかけたその瞬間、視界の中にあるものが入ってきました。
日記のような小さなノートがあってその場でしゃがんでノートを手に取りました。
そのノートには「管理ノート」と書いてありました、
修理人が置いていったんでしょうかね…
中をパラパラと開くとこんなものが書いてあったんです。
「XXXX年X月X日 扉のサビ部分を修理
XXXX年X月X日 異常無し
XXXX年X月X日タッチパネルの汚れを除去
XXXX年X月X日 異常無し」
などとこのタイムマシーンの点検をまとめたものでした。「なーんだ…面白いものが見れると思ったのに…」
次のページをめくると同じような内容。
その次のページも、またその次のページも。
1番後ろのページをめくると違う内容が書いてありました。
「利用者記録
XXXX年X月X日 〇〇 〇〇さん
XXXX年X月X日 △△ △△さん
XXXX年X月X日 ✕✕ ✕✕さん」
記録された人数が少ないということはきっとこの
タイムマシーンの利用者記録を付け始めたのは最近
ということ…いや、修理のページがかなり多いから、きっとこれまで利用した人数がそもそも少ないのでしょうか。
下まで見ると「※タッチパネルの修理マークを押すと
詳細を見ることが可能」と書いてありました。
つい興味が出てしまい、タッチパネルのある方向を
向き、画面を押し、操作を進めました。
「へぇ〜…タイムマシーンを使った理由が見れるんだ…なんだか悪いことしてる気分…」
上から順に、
「XXXX年X月X日 〇〇 〇〇さん
過去の失敗を成功に変えるため」
(あ〜…よくあるパターンね…)
「XXXX年X月X日 △△ △△さん
母親の死を止めるため」
(たまにあるやつか…)
「XXXX年X月X日 ✕✕ ✕✕さん
友人を殺すため」
(えぇ…こっわ…)
合計3人しか記録されていなかったです。
点検のページが多いのは、ずっとここに設置していたから。利用者数がこんなにも少ないのは変な場所に
置くから、きっと誰も入りたがらなかったからでしょう。
タッチパネルの1番下に赤い文字で、
「関係者以外、この詳細を見たものは1週間以内に
誰かにこの話題を話さないと死ぬ。
誰かにこの話をしたら語り手は死を逃れられるが、
その代わりに聞き手が死ぬ。」
変なものを見たと思い、そのあと私はタイムマシーンから出て、家へ帰りました。
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最初にも言った通り、これは私の実体験の話です。
少し話題を変えますね。
ところで、なぜわたしがこのはなしをあなたにしたかわかりますか
テーマ 「タイムマシーン」
作品名 「耳にすれば最期」
僕は自分の気持ちを隠していた。
ずっと、ずっと。
でも、相手は僕のことをきっと受け入れてくれない。
————————————————————————-「遥斗(はると)の弁当美味そうだな…」
「えっ、あげないよ…?」
「欲しいって言ってねえよ(笑)」
温かい太陽が2人の影を作っている。
学校近くの海の音が聞こえる。
「ねぇ、樹(いつき)はさ、恋人とか作らないの?」
「えぇ〜、まぁ俺も男だし?彼女とか流石に欲しいよ」
「そっか、」
「遥斗は?彼女作らんの?」
「僕は好きな人がいるからいいかな〜…」
樹の卵焼きを食べようとしていた手が止まった。
「えっ!?遥斗好きな人いんの!?」
「あれ、言ってなかったっけ」
「言ってねぇよ!(笑)俺らの仲だろ?教えろよ!」
「うーん、樹には秘密にしておく」
「はー?なにそれ、ずるくね?」
樹は再び箸を持ち直し、卵焼きを食べる。
その拗ねたような顔が僕の中の感情をかき乱す。
本当にずるい男だ。
「僕の好きな人はね〜…きっと一生振り向いてくれないと思う」
「いやいや、遥斗ならどんな相手でもいけるって!
結構顔もいいし?頭もいいし!」
「そうかなぁ、どうやったら振り向いてくれるかな…」
樹は少し考え込んだあと、口を開いた。
「相手の好きそうな仕草とかは?どう?結構良くね?」
「確かに…樹はどんな仕草が好き?」
「ん〜、そうだな〜…仕草かどうかわからんけど、笑顔とか好きだな、やってくれねぇかな〜…」
「ふーん…笑顔ね〜…他は?」
「えぇ、でも普通に俺がキュンとくるのは…髪型がいつもと違ったらとか?」
「なるほどね〜…」
「遥斗は?やっぱり頑張ってる姿とか?」
「僕は好きな人だったら何してても好きだな」
「遥斗がそんなに惚れるって…そんなに俺より良い奴なの?遥斗の好きな人とか俺で良くね?(笑)」
僕は適当に笑い、なんとかその場は終えた。
————————————————————————
半年が経った寒い冬の頃。
遥斗が行方不明になったらしい。
けれど、あのメールを見たときは正直、嬉しかった。
遥斗が行方不明になった日。
夜の19時58分に来たメールだった。
「突然すぎてごめん、僕さ、ずっと樹のことが好きだったんだよね。本当は直接言いたかったんだけど、
樹の顔を見るのが怖くて言えなかった。
朝も夜も、夢の中でも樹のことばっかり考えてて。
でも、男が男を好きになるなんて気持ち悪いよね、
本当にごめん。どんだけ笑っても、髪型を変えてみても、樹に振り向いてもらえないのはわかってた。
だから余計に苦しかった。
だけど、僕と僕のこの感情が一緒に消えれば、
全部なかったことになるかなって。
意味がわからないことばっかり言っちゃってごめん。
生まれ変わったらまた出逢おうね。」
このメールと共に、霧に包まれた海の写真が送られてきた。
きっと、学校近くの海に飛び込んだのだろう。
「生まれ変わったらまた出逢おうね。」ってことはさ、遥斗が死ぬとき、最期に思い出したのは俺ってことだよな。どうしよう、にやけが止まらない。
ずっと俺に振り向いてもらいたくて頑張ってたことも全部知ってる。いつもよりずっと笑顔でみんなに
接してたのも知ってる。髪型も、センター分けの日もあれば、ストレートの日もあった。
遥斗が笑う理由は全部、俺に振り向いてもらうためなんだもんね。
遥斗、俺の願いを叶えてくれてありがとう。
大丈夫、遥斗の願いも今叶えてあげるからね。
俺は海へ向かい、身体を海という名の棺に入れた。
これでまた、生まれ変わった遥斗に出逢える。
テーマ「海の底」
作品名 「来世で答え合わせ」
高校1年生が終わり、春休みを友達と一緒に過ごしていたときだ。
「やっぱりここの喫茶店の雰囲気が1番好きだな〜、
はーちゃんは?」
「…そのはーちゃんって呼び方まじでやめてって…(笑)
ん〜、私は八幡(はちまん)前駅の喫茶店かなー、まあここも好きだけどね〜…」
私は泡だらけになったメロンクリームソーダを
飲みながら店内を見渡していた。
すると友達の純恋(すみれ)が月のように丸いパンケーキに、メープルシロップをかけながらこう言った。
「花菜(はな)ほんとそこの喫茶店好きだよねぇ、
飽きたりしないの?」
「しないかな〜、あの店のマスターさんが超優しくてさ、居心地良くてつい行っちゃうんだよね(笑)」
「えー!?なにそのアニメとかに出てきそうな設定!!ずるいってー!」
そんな会話をしていると、純恋がパンケーキを
一口サイズに切りながらこう言った。
「え、てかさ、忽那湊(くつな みなと)って知ってる?」「なにそのアニメに居そうな名前…」
「おぉパクるな?(笑)1組にいる男子なんだけどさ、
なんかめっちゃ嘘つきまくってるらしいよ」
「え、それってかなり''危険''じゃない?」
この世界は嘘を付くと自分に関係している''何か''が
消える。自分の持っている''物''が消える場合もあれば、''記憶''が消える場合もある。
完全にランダムなため、次に何が消えるかわからない。
「そうなんだよね、本人は全然呑気な感じらしいけど」
「えぇ…変な人と同じクラスになりたくないなぁ…」
————————————————————————
この世に春が来たことを知らせるかのような満開の
桜が公園に咲き、4月になった。
新しい担任の先生が来た。
鼓膜が破れそうなくらいの声量で
「これから1年間、よろしくお願いしますねぇ〜!!」
と言った。
(担任ガチャ、大外れ。なんだこの今にも犯罪を
犯しそうな顔面の先生は。てかこの先生見たことないんだけど、まじで誰だよ…)
その日は純恋と一緒に帰った。
「はぁ…純恋とクラス離れたのまじでしんどいわ…」
「え、そんなに?(笑)でも1組と3組って離れてるか…」
「私も1組になりたかった…てか聞いて、この前純恋が言ってた、くつなんとか…みなと?って人と一緒の
クラスになっちゃったし、担任ガチャも大外れだった…」
すると純恋は目をまん丸にさせ、
「えぇ!?忽那と一緒のクラスになったの!?
…ご愁傷さまです。」
「ふざけんな不謹慎野郎」
家に帰り、部屋の窓から見える桜の木を眺めていた。
「私のキラキラJKライフもここで終わりか…」
———————————————————————-
「はーちゃんおはよ〜、」
「おはよー…待って今はーちゃんって言っ」
「そうそう昨日課題やるの忘れててさぁ〜!!
今日私徹夜なんだよねー!!」
「私の声をかき消すなよ…ご愁傷さまです。」
「…なんか言った?」
「ん?」
学校に着き、2年生の階についた。
「はぁ、早く教室行こ〜…あっ、私3組なのか…」
「そうじゃん、じゃあ頑張れよ〜」
「うぃ〜…」
席に着くと廊下からくしゃみをする音が聞こえてきた。「音でかすぎない…?誰…?」
3組の教室のドアには175cmほどの男がいた。
本当になぜなのか分からないが、あの男が「忽那 湊」であることは何故か一発でわかった。
————————————————————————
その日の帰り、スマホをいじりながら帰っているとSNSのフォローが来ていた。
「Minato._.731」というIDの人からだった。
「絶対あのくしゃみ男じゃん…まぁいいか…」
そう思い、フォローを返した。
1週間後、クラスの女子と男子が少し揉め合い、
色々あった結果、席替えをすることになった。
「このクラス本当に大丈夫か…?」
でも1番前の席はずっとストレスだったからちょうどいい、指定された席に移動し、隣の人に声をかける。
「やっほ!」
「誰…?」
「え、SNSでフォロー返した人、花菜って名前なんだけど…」
「んー、?あ〜…確かそんな人フォローしたっけな…」
(きっとまた嘘を付いて記憶が消されたんだろう、
早く席替えしたい…したばっかりだけど…)
次の日の朝、学校に着き、席に座るとあのくしゃみ男が来た。
「ねえねえ、昨日のストーリーに載せてたあの飲み物
どこで飲めんの?」
「えっ?あぁ、あれは八幡前駅の喫茶店だよ」
(なんだこの明らかに「アホ丸出しです!!」みたいな
質問の仕方は。まずはおはようとか言えよ…)
「そうなん?俺喫茶店とか行ったことないから行ってみてえなぁ〜…あぁ誰か一緒に行ってくれないかな〜…」
「…一緒に行けってこと?」
「そうだけど」
「そうだけどじゃないよ…」
(でも今日マスターさんに誕生日プレゼント渡したかったし、ちょうどいいから行くか…)
「今日だけね」
「えっ!まじー!?じゃあ決まりな!」
————————————————————————放課後になり、湊とかいう変な男と行きつけの喫茶店に行くことになってしまった。
あのとき断ればよかったと後悔していると、声をかけられた。
「花菜!早く行こーぜ!」
「あぁ、うん」
学校から15分ほど歩くとお店が見えてきた。
中に入るとマスターさんが笑顔で出迎えてくれた。
「あの!これお誕生日プレゼントです、よかったらどうぞ!」
「えぇ、そんなことしなくてもいいのに…
でも嬉しいから受け取るね!(笑)ありがとうねぇ」
喜んでくれてよかった。
「もしよかったら今日はこのカウンターで過ごすのはどう?」
「いいんですか!じゃあお言葉に甘えて…!」
私はいつも通りメロンクリームソーダを飲み、
湊くんは綺麗な青色のメロンクリームソーダを注文した。
「なんかあの男の人すげぇ優しそうだな…」
「あ、やっぱりわかる?」
「言葉に出来ないけど、なんか、すげぇ…」
(湊くんの場合は言葉に出来ないんじゃなくて、
単純に言葉を忘れただけでは…?)
————————————————————————
意外なことに時間はあっという間にすぎた。
日が暮れそうになったころ、湊くんはコンビニで
買った安いアイスを食べながらこう言った。
「俺さ、友達と遊んだことないんだよね」
「珍しすぎない?」
「昔から嘘ついてばっかだったから友達居なくて」
「あー、そっか…なんで嘘なんか付くの?
メリットよりもデメリットの方が多くない?」
湊くんは私の言葉を無視し、アイスを食べ続けた。
(なんなんだこいつは…)
————————————————————————
季節は7月になったばかりの頃。
あの日から週に1回は湊と遊ぶようになった。
このことを純恋に話したら「頭でも打った?」と
聞かれたがスルーした。
一緒に行きつけの喫茶店に行ったり、ときには水族館に行ったり。
正直、私は胸を張って友達と言える人は片手で数えられるくらいだ。
自分と似たような人、湊に勝手に親近感を感じていた。
新しい友達が増えた感覚が久しぶりでつい嬉しくなってしまい、色んなことを一緒に話し合った。
————————————————————————
7月もついに最終日になっていた。
明日から夏休みが始まる。
公園のベンチに座り、2人で喋っているときのことだ。
「ねぇ湊」
「どうした?」
「この前水族館行ったじゃん?」
「あー、うん」
「また一緒に行こ」
「ん…?おう…」
(もう、言ってもいいかな。どうせ湊もまた嘘を付き続けると思うし。どうせ記憶も消えるだろうし。)
「湊」
「んー?」
「好きだよ」
湊の表情が固まる。
「へっ、?」
「だから、好きって言ってんの。
その…私と付き合ってよ。」
彼は顔を赤くして、数秒後に頷いた。
「えっ…ほんとに!?」
「俺も…花菜のことが好きだよ」
どうしよう、今までないくらいに嬉しい。
その後はもう、嬉しすぎて何を話したかは正直覚えていない。
「じゃあ、花菜。また明日。」
「あっ、!待って!」
「まだなんかあった?」
「その…湊がずっと嘘を付き続けてる理由が知りたくて…」
「あ〜… みんなの記憶に残りたくてさ。
ずっとみんなに俺のことを覚えててほしくて。
だからわざとあんなに嘘付いたりしてた。」
「え…?」
「ほら、やっぱりみんな嘘ついたりしないじゃん?
俺だけじゃん、こんなに嘘付いたりするのって。
だから印象的にみんなの記憶に残るかなって…」
「まぁ、確かに… 最初に湊のことを聞いたときは本当に変な人だと思ったよ」
「酷くね?(笑)俺は最初花菜のこと見たとき可愛いって思ったよ?」
「うるさ…」
「あははっ(笑)なんで横向いてんの、照れてる?(笑)
花菜が照れてるのちょっときもい…(笑)」
「はぁー!?ほんとにうるさいな〜!(笑)…え……?」
目の前を見ると湊の姿はどこにもなかった。
下を見ると、乱暴に脱ぎ捨てられたかのように
くしゃくしゃになっている制服と青いイルカの
キーホルダーがついているリュックだけが残っていた。
テーマ「君に会いたくて」
作品名 「勿忘草に再会を」