沈溺 つろ (シズレ)

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1/23/2026, 10:45:44 AM

朝、起きると7時55分だった。
あと5分で家を出ないと遅刻する。

急いで1階に降り、お母さんに「行っていらっしゃい」と声をかけられる。急いでるから今はそんな返事をしている場合では無い。

横断歩道の信号は赤だが、車は一切いない。
まあいいや、と思い渡った瞬間、ものすごいスピードでトラックが突っ込んできた。

「あ''ぁっっっ!!!!!……………………」
俺の人生はここで終わりなのか。
目の前が暗くなってきた。
————————————————————————
目を開けると時計は7時55分だった。
「えっ……俺、さっき……いや、夢か……」

急いで1階に降り、お母さんから「行ってらっしゃい」と声をかけられる。

とにかく走った。横断歩道の信号はまた赤色だった。
だが、地面には血痕がたくさん残っていた。
「え…?」

でも今は急がないといけない。
走り出すと遠くからものすごいスピードでトラックが
突っ込んできた。

声も出せないまま、目の前が暗くなってくる。
————————————————————————
目を開けると、7時55分。
「は…?なんだこれ…」

とりあえず1階に降りる。
お母さんから「行ってらっしゃい」という声が聞こえた。「ループ…?いや、でもさっき血痕あったよな…?」

今度はゆっくりと歩き、いつもの横断歩道の場所に向かう。

すると、さっき俺が死んだ場所、横断歩道の少し手前に血痕がある。「なんだよこれ…ループしてるのかしてないのかわかんねぇな…」

すると、後ろから大きい音が聞こえてきた。
「またトラっ…」

目の前が暗くなってくる。
————————————————————————
目を開けると7時55分。
「なんかマジで怖くなってきた…んだよこれ…」

1階へ降りるとお母さんの声が聞こえてくる。
どうやったらこの状況から抜け出せるのか。

いや、むしろ抜け出そうとすればするほど抜け出せなくなる…?そんな感じの内容、この前ゲームで見たな。

抜け出せそうなタイミングが来るまで、同じことを
繰り返せばいいか…

外を出て横断歩道の信号を見る。
赤色だ。

よし、あとはタイミングが来るまで待つだけ。

「おいっっ!!そこの君!!避けてくれーーー!!!」
振り返ると、運転席から顔を出しているトラックの
運転手が後ろから叫んでいる。

これもどうせ夢に決まってる。
死ぬのもなんだか慣れてきたし、まぁいいか。

足元を見ると、血痕の痕がなかった。

「 え 」





テーマ 「こんな夢を見た」
題名 「7時55分」

1/23/2026, 9:40:37 AM

※この物語は最後まで見ることを推奨しています。

「また会社で失敗してしまって…ほんと、消えたい
気分ですよ…(笑)」
「そうなんですね…では…これからとある話をしますね。これは最近、私が体験した話です。」
————————————————————————
私は仕事帰り、いつも通り改札を抜け、駅の出口に向かって歩いていました。暗くなってしまった静かな夜の中、星がきらきらと輝いていたのを覚えています。

大きい通りへ出て、住宅街に入りました。
時刻は20:12分、その日はかなり早く帰れた方でした。

今日は何のドラマを見ようかな〜…そんなことを
考えていると、公衆電話が見えてきたんです。
だけど、問題は公衆電話の横にあるものなんです。

「え…タイムマシーン…?」

この世界は好きなタイミングでタイムマシーンが
使える。一応戻れるのは自分が生きているときの時代のみだ。

「え、普通コンビニの横とかじゃないの?
なんでここにあるんだ?」

通常であれば、コンビニエンスストアや公園の近くに設置してあるが、ここは公園もなければ学校もない
ただの辺鄙(へんぴ)な住宅街。

「公衆電話の横って珍しい…変なところにあるなぁ…
なんか設定とか、入ったときの雰囲気とかが違うからここに設置してあるのかな?」

私は中の構造がどんなものなのか気になり、
重たい鉄製のドアを引っ張り、中へ入りました。

開けた扉を閉じて、機械の中を見渡したんですけど、
普通のタイムマシーンと変わんない気がしたので
出ようとしました。

扉に再び手をかけたその瞬間、視界の中にあるものが入ってきました。

日記のような小さなノートがあってその場でしゃがんでノートを手に取りました。

そのノートには「管理ノート」と書いてありました、
修理人が置いていったんでしょうかね…
中をパラパラと開くとこんなものが書いてあったんです。

「XXXX年X月X日 扉のサビ部分を修理
XXXX年X月X日 異常無し
XXXX年X月X日タッチパネルの汚れを除去
XXXX年X月X日 異常無し」

などとこのタイムマシーンの点検をまとめたものでした。「なーんだ…面白いものが見れると思ったのに…」

次のページをめくると同じような内容。
その次のページも、またその次のページも。

1番後ろのページをめくると違う内容が書いてありました。

「利用者記録
XXXX年X月X日 〇〇 〇〇さん
XXXX年X月X日 △△ △△さん
XXXX年X月X日 ‪✕‬‪✕‬ ‪✕‬‪✕‬さん」

記録された人数が少ないということはきっとこの
タイムマシーンの利用者記録を付け始めたのは最近
ということ…いや、修理のページがかなり多いから、きっとこれまで利用した人数がそもそも少ないのでしょうか。

下まで見ると「※タッチパネルの修理マークを押すと
詳細を見ることが可能」と書いてありました。

つい興味が出てしまい、タッチパネルのある方向を
向き、画面を押し、操作を進めました。

「へぇ〜…タイムマシーンを使った理由が見れるんだ…なんだか悪いことしてる気分…」

上から順に、

「XXXX年X月X日 〇〇 〇〇さん
過去の失敗を成功に変えるため」
(あ〜…よくあるパターンね…)

「XXXX年X月X日 △△ △△さん
母親の死を止めるため」
(たまにあるやつか…)

「XXXX年X月X日 ‪✕‬‪✕‬ ‪✕‬‪✕‬さん
友人を殺すため」
(えぇ…こっわ…)

合計3人しか記録されていなかったです。
点検のページが多いのは、ずっとここに設置していたから。利用者数がこんなにも少ないのは変な場所に
置くから、きっと誰も入りたがらなかったからでしょう。

タッチパネルの1番下に赤い文字で、

「関係者以外、この詳細を見たものは1週間以内に
誰かにこの話題を話さないと死ぬ。
誰かにこの話をしたら語り手は死を逃れられるが、
その代わりに聞き手が死ぬ。」

変なものを見たと思い、そのあと私はタイムマシーンから出て、家へ帰りました。
————————————————————————
最初にも言った通り、これは私の実体験の話です。
少し話題を変えますね。

ところで、なぜわたしがこのはなしをあなたにしたかわかりますか





テーマ 「タイムマシーン」
題名 「耳にすれば最期」

1/20/2026, 11:12:30 AM

僕は自分の気持ちを隠していた。
ずっと、ずっと。
でも、相手は僕のことをきっと受け入れてくれない。
————————————————————————-「遥斗(はると)の弁当美味そうだな…」
「えっ、あげないよ…?」
「欲しいって言ってねえよ(笑)」

温かい太陽が2人の影を作っている。
学校近くの海の音が聞こえる。

「ねぇ、樹(いつき)はさ、恋人とか作らないの?」
「えぇ〜、まぁ俺も男だし?彼女とか流石に欲しいよ」
「そっか、」
「遥斗は?彼女作らんの?」
「僕は好きな人がいるからいいかな〜…」

樹の卵焼きを食べようとしていた手が止まった。

「えっ!?遥斗好きな人いんの!?」
「あれ、言ってなかったっけ」
「言ってねぇよ!(笑)俺らの仲だろ?教えろよ!」
「うーん、樹には秘密にしておく」
「はー?なにそれ、ずるくね?」

樹は再び箸を持ち直し、卵焼きを食べる。

その拗ねたような顔が僕の中の感情をかき乱す。
本当にずるい男だ。

「僕の好きな人はね〜…きっと一生振り向いてくれないと思う」
「いやいや、遥斗ならどんな相手でもいけるって!
結構顔もいいし?頭もいいし!」
「そうかなぁ、どうやったら振り向いてくれるかな…」

樹は少し考え込んだあと、口を開いた。
「相手の好きそうな仕草とかは?どう?結構良くね?」
「確かに…樹はどんな仕草が好き?」
「ん〜、そうだな〜…仕草かどうかわからんけど、笑顔とか好きだな、やってくれねぇかな〜…」
「ふーん…笑顔ね〜…他は?」

「えぇ、でも普通に俺がキュンとくるのは…髪型がいつもと違ったらとか?」
「なるほどね〜…」
「遥斗は?やっぱり頑張ってる姿とか?」
「僕は好きな人だったら何してても好きだな」
「遥斗がそんなに惚れるって…そんなに俺より良い奴なの?遥斗の好きな人とか俺で良くね?(笑)」

僕は適当に笑い、なんとかその場は終えた。
————————————————————————
半年が経った寒い冬の頃。
遥斗が行方不明になったらしい。
けれど、あのメールを見たときは正直、嬉しかった。

遥斗が行方不明になった日。
夜の19時58分に来たメールだった。

「突然すぎてごめん、僕さ、ずっと樹のことが好きだったんだよね。本当は直接言いたかったんだけど、
樹の顔を見るのが怖くて言えなかった。
朝も夜も、夢の中でも樹のことばっかり考えてて。
でも、男が男を好きになるなんて気持ち悪いよね、
本当にごめん。どんだけ笑っても、髪型を変えてみても、樹に振り向いてもらえないのはわかってた。
だから余計に苦しかった。
だけど、僕と僕のこの感情が一緒に消えれば、
全部なかったことになるかなって。
意味がわからないことばっかり言っちゃってごめん。
生まれ変わったらまた出逢おうね。」
このメールと共に、霧に包まれた海の写真が送られてきた。

きっと、学校近くの海に飛び込んだのだろう。
「生まれ変わったらまた出逢おうね。」ってことはさ、遥斗が死ぬとき、最期に思い出したのは俺ってことだよな。どうしよう、にやけが止まらない。

ずっと俺に振り向いてもらいたくて頑張ってたことも全部知ってる。いつもよりずっと笑顔でみんなに
接してたのも知ってる。髪型も、センター分けの日もあれば、ストレートの日もあった。

遥斗が笑う理由は全部、俺に振り向いてもらうためなんだもんね。

遥斗、俺の願いを叶えてくれてありがとう。
大丈夫、遥斗の願いも今叶えてあげるからね。

俺は海へ向かい、身体を海という名の棺に入れた。
これでまた、生まれ変わった遥斗に出逢える。





テーマ「海の底」
題名「来世で答え合わせ」

1/19/2026, 2:03:25 PM

高校1年生が終わり、春休みを友達と一緒に過ごしていたときだ。

「やっぱりここの喫茶店の雰囲気が1番好きだな〜、
はーちゃんは?」
「…そのはーちゃんって呼び方まじでやめてって…(笑)
ん〜、私は八幡(はちまん)前駅の喫茶店かなー、まあここも好きだけどね〜…」

私は泡だらけになったメロンクリームソーダを
飲みながら店内を見渡していた。

すると友達の純恋(すみれ)が月のように丸いパンケーキに、メープルシロップをかけながらこう言った。

「花菜(はな)ほんとそこの喫茶店好きだよねぇ、
飽きたりしないの?」
「しないかな〜、あの店のマスターさんが超優しくてさ、居心地良くてつい行っちゃうんだよね(笑)」
「えー!?なにそのアニメとかに出てきそうな設定!!ずるいってー!」

そんな会話をしていると、純恋がパンケーキを
一口サイズに切りながらこう言った。

「え、てかさ、忽那湊(くつな みなと)って知ってる?」「なにそのアニメに居そうな名前…」
「おぉパクるな?(笑)1組にいる男子なんだけどさ、
なんかめっちゃ嘘つきまくってるらしいよ」
「え、それってかなり''危険''じゃない?」

この世界は嘘を付くと自分に関係している''何か''が
消える。自分の持っている''物''が消える場合もあれば、''記憶''が消える場合もある。
完全にランダムなため、次に何が消えるかわからない。

「そうなんだよね、本人は全然呑気な感じらしいけど」
「えぇ…変な人と同じクラスになりたくないなぁ…」
————————————————————————
この世に春が来たことを知らせるかのような満開の
桜が公園に咲き、4月になった。

新しい担任の先生が来た。
鼓膜が破れそうなくらいの声量で
「これから1年間、よろしくお願いしますねぇ〜!!」
と言った。

(担任ガチャ、大外れ。なんだこの今にも犯罪を
犯しそうな顔面の先生は。てかこの先生見たことないんだけど、まじで誰だよ…)

その日は純恋と一緒に帰った。
「はぁ…純恋とクラス離れたのまじでしんどいわ…」
「え、そんなに?(笑)でも1組と3組って離れてるか…」
「私も1組になりたかった…てか聞いて、この前純恋が言ってた、くつなんとか…みなと?って人と一緒の
クラスになっちゃったし、担任ガチャも大外れだった…」

すると純恋は目をまん丸にさせ、
「えぇ!?忽那と一緒のクラスになったの!?
…ご愁傷さまです。」
「ふざけんな不謹慎野郎」

家に帰り、部屋の窓から見える桜の木を眺めていた。
「私のキラキラJKライフもここで終わりか…」
———————————————————————-
「はーちゃんおはよ〜、」
「おはよー…待って今はーちゃんって言っ」
「そうそう昨日課題やるの忘れててさぁ〜!!
今日私徹夜なんだよねー!!」
「私の声をかき消すなよ…ご愁傷さまです。」
「…なんか言った?」
「ん?」

学校に着き、2年生の階についた。
「はぁ、早く教室行こ〜…あっ、私3組なのか…」
「そうじゃん、じゃあ頑張れよ〜」
「うぃ〜…」

席に着くと廊下からくしゃみをする音が聞こえてきた。「音でかすぎない…?誰…?」

3組の教室のドアには175cmほどの男がいた。
本当になぜなのか分からないが、あの男が「忽那 湊」であることは何故か一発でわかった。
————————————————————————
その日の帰り、スマホをいじりながら帰っているとSNSのフォローが来ていた。

「Minato._.731」というIDの人からだった。
「絶対あのくしゃみ男じゃん…まぁいいか…」
そう思い、フォローを返した。

1週間後、クラスの女子と男子が少し揉め合い、
色々あった結果、席替えをすることになった。

「このクラス本当に大丈夫か…?」
でも1番前の席はずっとストレスだったからちょうどいい、指定された席に移動し、隣の人に声をかける。

「やっほ!」
「誰…?」
「え、SNSでフォロー返した人、花菜って名前なんだけど…」
「んー、?あ〜…確かそんな人フォローしたっけな…」

(きっとまた嘘を付いて記憶が消されたんだろう、
早く席替えしたい…したばっかりだけど…)

次の日の朝、学校に着き、席に座るとあのくしゃみ男が来た。

「ねえねえ、昨日のストーリーに載せてたあの飲み物
どこで飲めんの?」
「えっ?あぁ、あれは八幡前駅の喫茶店だよ」

(なんだこの明らかに「アホ丸出しです!!」みたいな
質問の仕方は。まずはおはようとか言えよ…)

「そうなん?俺喫茶店とか行ったことないから行ってみてえなぁ〜…あぁ誰か一緒に行ってくれないかな〜…」
「…一緒に行けってこと?」

「そうだけど」
「そうだけどじゃないよ…」
(でも今日マスターさんに誕生日プレゼント渡したかったし、ちょうどいいから行くか…)

「今日だけね」
「えっ!まじー!?じゃあ決まりな!」
————————————————————————放課後になり、湊とかいう変な男と行きつけの喫茶店に行くことになってしまった。
あのとき断ればよかったと後悔していると、声をかけられた。

「花菜!早く行こーぜ!」
「あぁ、うん」

学校から15分ほど歩くとお店が見えてきた。
中に入るとマスターさんが笑顔で出迎えてくれた。

「あの!これお誕生日プレゼントです、よかったらどうぞ!」
「えぇ、そんなことしなくてもいいのに…
でも嬉しいから受け取るね!(笑)ありがとうねぇ」

喜んでくれてよかった。
「もしよかったら今日はこのカウンターで過ごすのはどう?」
「いいんですか!じゃあお言葉に甘えて…!」

私はいつも通りメロンクリームソーダを飲み、
湊くんは綺麗な青色のメロンクリームソーダを注文した。

「なんかあの男の人すげぇ優しそうだな…」
「あ、やっぱりわかる?」

「言葉に出来ないけど、なんか、すげぇ…」
(湊くんの場合は言葉に出来ないんじゃなくて、
単純に言葉を忘れただけでは…?)
————————————————————————
意外なことに時間はあっという間にすぎた。
日が暮れそうになったころ、湊くんはコンビニで
買った安いアイスを食べながらこう言った。

「俺さ、友達と遊んだことないんだよね」
「珍しすぎない?」
「昔から嘘ついてばっかだったから友達居なくて」
「あー、そっか…なんで嘘なんか付くの?
メリットよりもデメリットの方が多くない?」

湊くんは私の言葉を無視し、アイスを食べ続けた。
(なんなんだこいつは…)
————————————————————————
季節は7月になったばかりの頃。
あの日から週に1回は湊と遊ぶようになった。
このことを純恋に話したら「頭でも打った?」と
聞かれたがスルーした。

一緒に行きつけの喫茶店に行ったり、ときには水族館に行ったり。

正直、私は胸を張って友達と言える人は片手で数えられるくらいだ。
自分と似たような人、湊に勝手に親近感を感じていた。

新しい友達が増えた感覚が久しぶりでつい嬉しくなってしまい、色んなことを一緒に話し合った。
————————————————————————
7月もついに最終日になっていた。
明日から夏休みが始まる。
公園のベンチに座り、2人で喋っているときのことだ。

「ねぇ湊」
「どうした?」
「この前水族館行ったじゃん?」
「あー、うん」
「また一緒に行こ」
「ん…?おう…」

(もう、言ってもいいかな。どうせ湊もまた嘘を付き続けると思うし。どうせ記憶も消えるだろうし。)

「湊」
「んー?」

「好きだよ」

湊の表情が固まる。
「へっ、?」
「だから、好きって言ってんの。
その…私と付き合ってよ。」

彼は顔を赤くして、数秒後に頷いた。
「えっ…ほんとに!?」
「俺も…花菜のことが好きだよ」

どうしよう、今までないくらいに嬉しい。
その後はもう、嬉しすぎて何を話したかは正直覚えていない。

「じゃあ、花菜。また明日。」
「あっ、!待って!」
「まだなんかあった?」

「その…湊がずっと嘘を付き続けてる理由が知りたくて…」
「あ〜… みんなの記憶に残りたくてさ。
ずっとみんなに俺のことを覚えててほしくて。
だからわざとあんなに嘘付いたりしてた。」
「え…?」

「ほら、やっぱりみんな嘘ついたりしないじゃん?
俺だけじゃん、こんなに嘘付いたりするのって。
だから印象的にみんなの記憶に残るかなって…」
「まぁ、確かに… 最初に湊のことを聞いたときは本当に変な人だと思ったよ」

「酷くね?(笑)俺は最初花菜のこと見たとき可愛いって思ったよ?」
「うるさ…」

「あははっ(笑)なんで横向いてんの、照れてる?(笑)
花菜が照れてるのちょっときもい…(笑)」

「はぁー!?ほんとにうるさいな〜!(笑)…え……?」

目の前を見ると湊の姿はどこにもなかった。

下を見ると、乱暴に脱ぎ捨てられたかのように
くしゃくしゃになっている制服と青いイルカの
キーホルダーがついているリュックだけが残っていた。





テーマ「君に会いたくて」
題名「勿忘草に再会を」

1/17/2026, 3:52:59 PM

11月29日。7時54分。

「はぁ…マジで学校行きたくない…最近寒すぎて
死ぬんだけど。てか、スカートの下にジャージ履いたらダメとかいう校則ほんと意味わかんないって…」

ソファの上でSNSを見ていると、出発時間の8時に
なりそうだった。スマホから充電コードを抜き、
立ち上がる。

玄関へ向かいローファーを履き、
横を見る。写真の中に写っているお母さんに
「行ってくるね」と声をかけ、ドアを開けた。

(寒…もう冬じゃん…)
バスを待っている間にネットニュースを見ていた。
(うわぁ…朝から人身事故か…なんかこういうの考えるだけで鳥肌経つんだよなあ…ん…?なにこれ?)

「木枯らし警報を導入」と書いてある文字が表示されていた。スマホの画面をタップする。

「気象庁から木枯らし警報を導入させるということ。
内容としては過去の出来事を捨てる。
目的としては過去の出来事を捨てることにより、
心理的ストレスを軽減させるためである」

(え、マジでなにこれ?変なの…うちの高校の校則くらい変じゃん。まあいいや、あんまり気にしないでおこう…まだ今日恋みくじ引いてないから引こ…)と
考えているとバスが来た。

足が寒すぎるあまり少しふらついた。
「あっ、やばっ、」急いで定期券を出し、機械へかざす。

バスから出てるとまた寒い空気に肌が触れる。
「早歩きで行こ…うあっ!?」
「あははっ!(笑)夢奈(ゆな)の反応おもしろっ!(笑)
「もう、!望愛(のあ)ったら驚かせないでよ!(笑)」

「ごめんって〜!…なんか夢奈顔色悪いよ?大丈夫?
なんかあった?」
「いや、なんでもない!」
「まあいいや、今朝のニュース見た?木枯らし警報ってやつ!」

「あぁ〜…見たよ。なんか過去の出来事を捨てるんでしょ?」
「そうそう!私は過去の失敗でも捨てようかな〜…
なんてね!(笑)」

「''過去の失敗''…か…」
「ん?なんか言った?」
「いや、なんでもない。てかさ、スタバの新作これだって!今度の放課後一緒に…」
————————————————————————
学校が終わり、帰りのバスを待っていた。

クラスメイトや先生、他クラスの人達もみんな
「木枯らし警報」について話していた。

(過去の失敗…過去なんて思い出したくないことばかりだ。でももし、もし過去の出来事を捨てるなら、

捨てるなら、
————————————————————————
3年前の秋。確かこの日も今日と同じくらい寒かった。私は当時中学2年生だった。
休み時間の教室にこんな声が響き渡る。

「あははっ!(笑)きっしょ!(笑)早く死ねよ!w」
周り女子達も笑っている。

''見て見ぬふりをする私''に助けを求めるような視線を向ける未月(みつき)ちゃん。

(うわ〜…可哀想…もうあと少しで12月なるのに
水かけられて、絶対寒いよね…)

私は昔から人に嫌われるのが怖かった。
もしここで未月ちゃんを庇ったら次は自分が標的に
されるんじゃないか。
色々考えすぎた結果、人のことを助けることさえ
できなくなっていた。

自称一軍女子達の中の1人、麗奈(れいな)ちゃんが
ぬいぐるみの筆箱から黒いカッターを取り出した。

「はーい!今からこいつのきったねえ顔面にメス入れてあげまーす!w整形の準備運動させてあげるね〜!w」

絶望に溢れた顔で麗奈ちゃんに向かって土下座をし、謝罪をし始めた。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

「なにこいつ、気持ち悪っ…みんな行こ…」

しばらくすると顔をあげた。
このとき偶然未月ちゃんと目が合ってしまった。

(気まづ…)

太陽に照らされ、綺麗な黒い瞳が輝いている。
さらさらな髪の毛。右側の三つ編みはほどけ、
左頬にはいくつか痣ができている。

未月ちゃんはふらふらしながら立ち上がり、
蹴られて少し形が歪になっている落書きだらけの
自分の席へ戻った。
————————————————————————
1週間後のことだ。
朝のホームルームで、担任の先生が未月ちゃんに
ついての話をしていた。

「えー、逢妻(あいづま)未月さんですが、3日前に自宅で亡くなったそうです。」

体が固まって動けなかった。
自称一軍女子達は目を合わせ、知らないふりをしていた。

(何知らないふりしてんの…?マジでやばすぎ、絶対
お前らのせいだろ…)

その日、私は未月ちゃんの夢を見た。

狭く暗い部屋。

(……ん?ここは…どこ…?)
体を起こすと、そこには黒い瞳をしている女の子がいた。

「未月…ちゃん?」
「私さ、夢奈ちゃんに助けて欲しかったんだよね」
「ごめっ、」
「でも、最初に知らないふりしてたのは夢奈ちゃんだよね?」

「ぁ………ぁ……………」
「いじめを見てる傍観者も加害者なんだよ。
でももういい、手遅れだし。
夢奈ちゃんの視線が私を殺したんだよ。」
————————————————————————
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、………ゆっ、夢か…」
謎の安堵感と罪悪感が私を襲う。
時計を見ると3時27分。

けれど、未月ちゃんのあの姿が忘れられない。

バラバラな長さに切られた髪の毛。
鋭い何かで切られた青白い肌。

手首には線がたくさんはいっていて、爪はボロボロ
すぎて血が出ていた。

足首は外側を向いていて、首には太いロープで締め付けられた痕がくっきりと残っていた。
————————————————————————
(私からの視線で…未月ちゃんは…
やばい、思い出すとくらくらしてきた…)

そうか、これが私の思い出したくない、目を背けていたかった出来事はこれなのか。

遠くから「八幡前行き」のバスが見えてきた。
足の感覚が奪われ、勝手に動く。

(……はっ、!?なんでっ、勝手に進んでっ、)

「ちょっと待っ」
————————————————————————
目の前が急に暗くなり始める。
頭を打ちつけたせいか眠たくなってきた。

「きゃあっ!!」
「おいっ!大丈夫か!?」
「えっ、何今の…」

嗚呼、そうか。悪い行いは自分に返ってくるのか。

※この物語はフィクションです。
※登場する人物名・地名・団体名などは実在のものとは関係ありません。
※あくまでも夢奈ちゃんと未月ちゃんが話しているのは夢奈ちゃんの夢の中です。





テーマ「木枯らし」
題名「傍観罪」(ぼうかんざい)

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