沈溺 つろ (シズレ)

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僕は自分の気持ちを隠していた。
ずっと、ずっと。
でも、相手は僕のことをきっと受け入れてくれない。
————————————————————————-「遥斗(はると)の弁当美味そうだな…」
「えっ、あげないよ…?」
「欲しいって言ってねえよ(笑)」

温かい太陽が2人の影を作っている。
学校近くの海の音が聞こえる。

「ねぇ、樹(いつき)はさ、恋人とか作らないの?」
「えぇ〜、まぁ俺も男だし?彼女とか流石に欲しいよ」
「そっか、」
「遥斗は?彼女作らんの?」
「僕は好きな人がいるからいいかな〜…」

樹の卵焼きを食べようとしていた手が止まった。

「えっ!?遥斗好きな人いんの!?」
「あれ、言ってなかったっけ」
「言ってねぇよ!(笑)俺らの仲だろ?教えろよ!」
「うーん、樹には秘密にしておく」
「はー?なにそれ、ずるくね?」

樹は再び箸を持ち直し、卵焼きを食べる。

その拗ねたような顔が僕の中の感情をかき乱す。
本当にずるい男だ。

「僕の好きな人はね〜…きっと一生振り向いてくれないと思う」
「いやいや、遥斗ならどんな相手でもいけるって!
結構顔もいいし?頭もいいし!」
「そうかなぁ、どうやったら振り向いてくれるかな…」

樹は少し考え込んだあと、口を開いた。
「相手の好きそうな仕草とかは?どう?結構良くね?」
「確かに…樹はどんな仕草が好き?」
「ん〜、そうだな〜…仕草かどうかわからんけど、笑顔とか好きだな、やってくれねぇかな〜…」
「ふーん…笑顔ね〜…他は?」

「えぇ、でも普通に俺がキュンとくるのは…髪型がいつもと違ったらとか?」
「なるほどね〜…」
「遥斗は?やっぱり頑張ってる姿とか?」
「僕は好きな人だったら何してても好きだな」
「遥斗がそんなに惚れるって…そんなに俺より良い奴なの?遥斗の好きな人とか俺で良くね?(笑)」

僕は適当に笑い、なんとかその場は終えた。
————————————————————————
半年が経った寒い冬の頃。
遥斗が行方不明になったらしい。
けれど、あのメールを見たときは正直、嬉しかった。

遥斗が行方不明になった日。
夜の19時58分に来たメールだった。

「突然すぎてごめん、僕さ、ずっと樹のことが好きだったんだよね。本当は直接言いたかったんだけど、
樹の顔を見るのが怖くて言えなかった。
朝も夜も、夢の中でも樹のことばっかり考えてて。
でも、男が男を好きになるなんて気持ち悪いよね、
本当にごめん。どんだけ笑っても、髪型を変えてみても、樹に振り向いてもらえないのはわかってた。
だから余計に苦しかった。
だけど、僕と僕のこの感情が一緒に消えれば、
全部なかったことになるかなって。
意味がわからないことばっかり言っちゃってごめん。
生まれ変わったらまた出逢おうね。」
このメールと共に、霧に包まれた海の写真が送られてきた。

きっと、学校近くの海に飛び込んだのだろう。
「生まれ変わったらまた出逢おうね。」ってことはさ、遥斗が死ぬとき、最期に思い出したのは俺ってことだよな。どうしよう、にやけが止まらない。

ずっと俺に振り向いてもらいたくて頑張ってたことも全部知ってる。いつもよりずっと笑顔でみんなに
接してたのも知ってる。髪型も、センター分けの日もあれば、ストレートの日もあった。

遥斗が笑う理由は全部、俺に振り向いてもらうためなんだもんね。

遥斗、俺の願いを叶えてくれてありがとう。
大丈夫、遥斗の願いも今叶えてあげるからね。

俺は海へ向かい、身体を海という名の棺に入れた。
これでまた、生まれ変わった遥斗に出逢える。





テーマ「海の底」
題名「来世で答え合わせ」

1/20/2026, 11:12:30 AM