No.12:誰も知らない秘密
「はぁい、ストップ」
突然、画面上の彼が自分に話し掛けてきた
話し掛けられたこと、自分が認識されていた事に驚いていると、彼が口を開いた
「今、僕達の事話そうとしたでしょ?」
!
「んふふ、驚いたね。ぜーんぶ、僕にはお見通しだよ?」
悪戯っぽく彼が微笑む
「今までは見て見ぬふりしてたけど...今日の題材はだーめ。」
すると、近くに置いていた物語をビリビリに破かれてしまった。
嗚呼、勿体ない...
「このお話の内容は、僕達だけの秘密だからさ」
「あんまり見せたくないし、書かせたくないなぁって思ったんだよ」
そう言うと、彼は出入口の前に立った
「あ、でも...僕達の恋模様を書くのは、これからも許してあげる」
「見せ付けたいからね♪」
今日はそれだけ言いたかったんだ
これからもよろしくね
...とだけ残して、彼は部屋を去ってしまった
部屋に残ったのは、ビリビリに破かれた物語と、自分
......
自分は破かれた物語を拾い上げ、ゴミ箱に捨てた
__...さぁ、次はどんな物語を覗きみようか?
No.11:静かな夜明け
ふと目を開くと、彼が規則正しい寝息を立てていた。
何時も眩し過ぎる笑顔で僕を起こす彼とは違う、穏やかな寝顔
それが珍しくて、思わず頬を優しくつついてみれば、擽ったそうに唸ってから、また寝息を立ててしまった
そんな様子が可愛くて、愛おしくて
こんな彼を起こしてしまうのが、なんだか惜しくて
もうすぐ重なってしまう時計の針を、少しだけズラした
可愛い可愛い、僕だけの彼
少し遅く時計の針が重なった時、彼は一体どんな反応をするのだろう
思い浮かんだ様子に頬を緩めながら、僕は再び目を閉じた
No.10:heart to heart
隠そうとしない、彼の真っ直ぐな言葉
頬を赤く染めながら
けれど、目を見て言ってくれた言葉
...だから、僕も言葉を届けられると思ったんだ
「僕も好きだよ、__」
No.9:永遠の花束
「これ...ドライフラワーか?」
「そうそう」
僕はある時、贈り物を彼にした
それも”白色の彼岸花“のドライフラワーである
渡した時、彼がとても訝しげな顔をしていたのをよく覚えている
「...何で俺に花なんて...」
「おや、ドライフラワーの方に突っ込むのかと思っていたよ」
「花もドライフラワーも変わんねぇだろ」
そう言って、彼はマジマジと彼岸花を見詰める
「ふふっ、でもドライフラワーなら、君が忙しなくお世話する必要も無いし」
楽だろう?
っと小首を傾げれば、「まぁ確かに...」っと腑に落ちてる様な無いような反応が返ってきた
「それは日当たりのいい所に飾るといいよ」
「ふん、飾るか飾らないかは俺の勝手だろ」
「またまた〜」
そうは言うものの、僕があげたキーホルダーを、今もカバンに付けていてくれている事を知っている
...だから、渡せたのかもしれない
「...んまぁ、せっかくだし貰っといてやるよ」
「ふふ、ありがとうね」
彼岸花を持っていた袋に居れるのを見ながら、僕は微笑んだ
__伝わらなくていい
ただ、受け取ってくれるだけで良かった
「__、__」
「あ?なんか言ったか?」
「いいや?何も言ってないよ」
そう言って、僕は歩き出す
彼が贈り物の意味を、知る事がありませんようにと
理性的な僕が祈る中で
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花言葉(一部抜粋)
ドライフラワー:永遠の愛
白い彼岸花:あきらめ、思うはあなた一人、
No.8:やさしくしないで
犬の様で、猫の様な
そんな彼が、好きだった
隣である一点を追い掛ける彼の目は、僕の事を見ていないのに
でもその癖、彼は不器用なりに言葉を掛けて、何時も僕の隣に居てくれているのだからタチが悪い
...一度、どうしてかと聞いた事があった
『そりゃ、...お前にはお世話になってるし...長い腐れ縁だ』
そう言った彼の顔は、今でもハッキリ覚えてる
それがどうしようもなく嬉しくて、苦しかった事も
「あ?どうしたんだよお前」
ほら、また
俺と同じ気持ちを持っていない癖に
ねぇ、もう辞めてよ
「え?嗚呼__」
「なんでもないよ」
そう言って、僕は笑顔を作った
”これ以上優しくしないで“と、口から出掛けた言葉を飲み込みながら