コヤ

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3/25/2025, 11:12:08 AM

No.55:記憶


忘れる事が出来ない
どれだけ、忘れたくても

一緒に過ごしてきた彼女達

置いていかれる経験も、失う経験もした

...そんな嫌な記憶ばかりが、霞まず頭を木霊する
いっそ頭の中を開いて、記憶をバッサリ切り捨てられたならと、一時期思っていたくらいだ。

...でも、彼女達と過ごした時間は、忘れたくなかった

今思えばバカみたいにはしゃいでいた
大人達によく怒られもした

時たま大喧嘩して
収集もつかず3人して暴れ散らした事も、何日も口を聞かなかった時もあった。

けど、それが僕の幸せだったのだと、今になって痛感している

__嗚呼、いっそ記憶があるのなら


「その時に戻らせて、やり直させて」


もう届かない日々を想いながら、記憶に浮かぶ二人の輪郭をなぞった

3/24/2025, 12:55:33 PM

No.54:もう二度と


大切な人を作らないと決めた。
広く浅くをモットーに、これまで生きてきた

...失ってしまうのは、辛いから、苦しいから


でも、君は違った
そんな僕の気持ちを知ってか...いや、多分知らずに
僕のテリトリーに踏み込んで、爪痕を残していく
こっちの事なんて気にせず、構いに来ていた


それを断るのは渋られて、でも何となく、理由を聞いてみた。

「は?んなの...お前がそうして欲しそうな顔してたからに決まってんだろ」

驚いてしまった
僕は、そんな顔をしていたのだろうか
失いたくないと決めた日から、そんな事思うことはやめたはずなのに。

「...それとも、俺に構われるのは嫌か?」

そう言われてしまって、僕は何も言えなかった。
いや...言えなかったのだ

「...ふはっ、なんつー顔してんだよ」

そう言って、君は僕の事を抱き締めた
それが暖かくて、心地好くて
震えていた何かが、じんわりと落ち着いていくような、そんな感じで。


嗚呼、彼はなんて狡いんだろう


これじゃあ、もう


「離れられないじゃないか...」

3/22/2025, 11:35:05 AM

No.53:bye bye...


惜しくなってしまったのだ、と。

過去の自分が聞いたら、一体どんな反応をするだろう。


明日の分からぬ人生
居なくなる同業者


別れを惜しむ間もなく、巡りゆく日々。
...だから、期待するのは辞めた

「じゃ、バイバイ」

極力笑って、別れを告げるようになった
互いに、明日会うことが叶わなくても良いように



---



「ん?お前また来たのかよ」
「え〜、そんな邪険にしないでよ〜」

なのに、彼と出会って変わってしまった
...いや、”変えられてしまった“

「今日は顔見に来ただけだよ〜、この後も仕事あるし」
「ふーん、物好きなやつ」

つっけんどうに言うものの、何処か可笑しそうに笑う彼
そこから、面倒臭そうに少しだけ僕と戯れてくれる彼
...その顔を見る度に、らしくない不安が顔を出す

「......んじゃ、僕もう行くから」

流石に時間があるので、その場を離れようとドアに手を掛ける。

「あ!おい待て!」

その声に弾かれる様に振り返ると、

「またな!」
「!」

純粋に、次がある前提の言葉。
僕が恐るようになってしまった、たった三文字。
...彼はそれを、平然と口にする。
最初こそ歓迎していなくても、必ず満面の笑みで言ってくれる言葉。

「...うん、」

...だから、なのだろうか。
期待など、惜しむ心など、とうの昔に捨てたはずなのに

「またね」

君にだけは、そう返すようになってしまった
次もまた、彼の笑顔を見れますように。
そんな小さな願いを、抱きながら

3/21/2025, 11:00:27 AM

No.52:君と見た景色
#人外Rさんと、人外Dさん


手の届かない、雲の上の存在
彼奴に対する第一印象を、今でもハッキリ覚えていた

焔を宿した赤い眼に
燃える様な、キラキラとした朱色の翼

綺麗だと思った

自分には縁遠い、キラキラとしたものだったから尚更

そしてどうしようもなく、手を伸ばしたくなった

...でも、届かなかった。
物理的に近くなれても、精神的には、何処までも離れている様な気がした。

「ほら何してんのさ!早く行くよ〇〇殿!」
「!あ、あぁ...」

こうして、手を引かれてる今だって

(...嗚呼、遠いい...)

どうしようもないくらい、埋まらない溝に阻まれている様な気がした。




----




「ねーぇ〜!!許してよ〜!!」
「煩いですね、その口塞ますよ?」
「なんかトキメクセリフなはずなのに今すっごい寒気したよ!?」

でも、今はどうだろう

「良い勘ですね、本当にその通りにしてやろうか?」
「ひぃっ!〇〇ちゃん怖いよ〜!!許してよ〜!!」

今はこいつから、私に擦り寄って来ている。

「...仕方ないですね、貴方が私の事どう思ってるか言ってくれたら、特別に許してやります」
「え...なにその遠回しなデレ可愛すぎでしょ!?」
「いやなら口を...」
「嫌なわけないじゃん!!!」

食い気味に私から少し離れると、昔と変わらない赤い瞳が、私を射抜いた

「好き、大好きだよ、〇〇ちゃん」
「ッ...」

こうして、真剣に言葉を伝えてくれる様にまでなった。
それが喜ばしくて、恥ずかしくて、ごちゃまぜで。

でも確かに、心の溝はない。
何時も隣で、同じ景色を見ていられる様な気がした

「...ふん、良いですよ、許してあげます」
「これで本当に良いの?もっと言えるよ?」
「結構です!!」


たったそれだけの事が、たまらなく嬉しかった


「照れてるの可愛い〜♡」
「本当にその口縫いますよ?」
「ごめんて!!!」

3/20/2025, 11:40:55 AM

No.51:手を繋いで
#人外Tさんと


「ふふ、これで暖かいね?」

手を繋いだ彼が、優しい笑顔で聞いてくる。
春だと言うのに寒い道すがら。
彼が繋いでくれた手は、陽だまりのように暖かい

「...うん、暖かい」

物理的な話だけじゃなくて、君から手を繋いでくれた事が嬉しくて、心までポカポカと暖かくなる様だった。

「!」

彼の暖かさを逃がしたくなくて、繋いでくれた手を優しく、されど強く握り返した

「ありがとうね、お兄さん」

繋いだ手の熱が移った様に、頬が赤くて
頬から熱が移った様に、手が熱くなっている。

なんでもない時間
なんでもない行動、仕草

なのに、繋がった手から、どちらとも言えない体温が、例えがたい幸せが、伝わってくる様な気がして

そんな彼が愛おしくて、僕は笑いかけた

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