冬至。

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2/6/2026, 10:05:07 AM

                  びーえる…?

もうなんかダメだ。
好きだなんて認めたら止められなくなった。
あれなんつーの?びーえる?とか言う女子がやたらと好きなやつ。
何回目かの出演オファーで仕方なく引き受けたやつ。
その相手のやつが思ってた以上に可愛くて。
コイツが相手役なら恋も表現しやすいかなーとかそんな始まりだったと思う。
でもやたらと人懐っこくて、でも案外重たい過去持っててそして何より仕事に一生懸命で。
今まで女としか付き合ったこと無かったけどアリかもしれないとか思ってしまったのが運の尽き。
そう思ってしまったら感情なんてたぶんダダ漏れでコイツには何でもしてやりたいって思う。
幸運な事にこのドラマと言うやつは結構絡みがあるやつで堂々とコイツと絡むことが出来る。
コイツも真摯にこのドラマに向き合ってるからどんな絡みでも笑顔で嫌がらずに演じてみせるのが救い。
それに乗じて台本にないスキンシップを取ったり情熱的に演技を超えて絡み合ったりする。
その頬に触れて首筋を辿り男にしてはしなやかなその肌に何度も何度も触れては口付けをした。
嫌がられたりしないかなんて考えなかったわけでもない。
まるで本当の恋人かのようにそれが普通かのようにすべて笑って受け入れる。
「俺が本当に男の人好きになったらどうしよう」
「この役はいいよね。こんなに君に愛されて」
そんな熱に浮かされた目でまっすぐ見つめられた時は理性が飛ぶのを必死に抑えた。
これはきっと演技上のことなんだからそんなはずはない。
咄嗟に聞き返すと慌てたように「冗談だよ」と笑って返された。
その答えに落胆したり、それでも毎日繰り返される虚構の睦言。
縮まる距離感にドラマ外での戯れのなかに甘い駆け引きがある気がしてならない。
「本当に君は男の人が好きではないの?」
堪らず聞いてしまったことがある。
「当たり前だろ」
目を逸らして素っ気なく言われてそれ以上踏み込めなくなった。
それでもいつでも隣りにいて気付けばどこか触れ合ってて姿が見えなくては探して探されて。
触れ合ってると心が満たされて誰か他の人と仲良くしてると気に食わなくて思わず嫉妬丸出しで間に入ったりした。
こんなにも周りにもきっと分かるぐらいアイツに惚れているのにその線を越えることが出来ない。
ただただ演技の上でしか触れ合えないその口付けを何度も何度も重ねて思いを乗せてこの熱を伝える。
お前が好きだよ。好きだよ。
目が合うアイツは目を見て伏せてそれをそのまま受け入れる。
それでも俺らは…。


                (溢れる気持ち)
         あれ…打ってる途中で7時なった。
         これはどーなるの?今日の分??

2/5/2026, 9:43:42 AM

            びーえる要素ありありで。


「よーい、はいスタート!」
そんな合図で始まるキス。
なんて事はない今流行りのボーイズラブという男同士で恋しちゃう系ドラマの撮影。
それで俺はそんな合図と共に目の前の運命の相手とキスをする。
熱い視線で見つめ合って甘く激しく求め合う。
アイツに優しく頬を撫でられ激しくくちびるを吸われそれから首筋に降りてきたてのひらに軽く首を掴まれ上を向かされる。
コイツ人の首を触るの好きだよなーとか思いながらそのまま降りてきたくちびるに喉元を軽く噛まれる。
跡が残ったらどうすんだよ、とか思うけど撮影が止まらない限り抗議もできない。
うっすらと目を開けて覗き見ると熱い視線とぶつかった。
欲情してるような熱視線。
直視出来なくてのけ反る素振りを見せる。
その瞬間、腰を掴まれ捕えられた。
重なった部分が熱い。
少しでも逃げる素振りを見せれば追いかけて離さない。
本気で愛されてるようだ。
そう、錯覚に陥りそう。
甘く甘く惚けるその感情にかぶりを振って堕ちていきそうな思いを振り切る。
こんなに求められるのは演技なのだから。
それ以上でもそれ以下でもない。
心では否定しながらも身体は熱く応える。
腕を伸ばしてアイツの首に絡めて引き寄せる。
さらに一層息も出来ないぐらいの長い長い口付けをされながら。
本当にこれが恋ならいいのに。
コイツが本当に俺の事を好きになってくれたらいいのにと願った。
そんな事1ミリもあるはずが無いのに。
絡まる視線は演技でしかあり得ないのに。
なのに何でこんなに全身で求められてる気がするんだ。
遠くでカットの声が聞こえる。
名残惜しく離れていく身体。
まだ触れていたい。
お互いにそんな気がした。
そんな気がしただけだ。



                    (Kiss)

2/4/2026, 9:43:14 AM

隣りにある優しげなその顔をふと見上げる。
あぁ彼は今日も隣りに居るんだなぁ。
「なに?そんなにまじまじと人の顔を見て」
あまりに見つめ過ぎたのか視線に気付かれてふんわり笑われる。
「いや別に」
「ただ…」
「ただ…?」
言葉を区切ったおれの言葉を反復するように呟かれて顔を覗かれる。
「お前は隣りに居るんだなぁって」
「何だよそれ」
軽く笑ってそれから。
「いつでもお前のそばにいるよ。当たり前じゃん」
当然のように深く笑う。
普通に考えたら掴んではいけなかったその手を掴んでしまったあの時。
永遠なんて全然信じてないしある訳ないと今も普通に思うけど。
「お前とならずっとずっとその先もどこにだって行ける気がするわ」
離そうとする手をしっかり握り返されてしまったから。
おれは幸せだよって胸を張って言えるから。
どんなに迷ってもお前の隣りを歩み続けたい。
まっすぐと目を逸らさず見つめてると。
目の前の彼の顔がこれでもかって崩れるように笑って強く抱き締められた。
これからもずっとずっとお前と一緒に居たい。そう願うよ。


                 (1000年先も)

2/2/2026, 9:02:01 AM



ゆらゆら揺れるブランコに。
乗ってるアイツがすごく羨ましくて。
近づけないまま見つめ続けた遠いあの日。
それは今も続いている。


                  (ブランコ)

2/1/2026, 8:21:15 AM

ここまで仲間と共に歩んできた最終局面。
ついにこの砦に巣食うという魔物を倒すだけとなった。
その祠の前にいま俺たちはいる。
みんなここまでの戦いで身も心もボロボロだ。
一緒に苦難を乗り越えて来た仲間たちの顔をゆっくりと見回してそして深く息を吐いてその先の魔物がいるだろう暗い穴へと目を向ける。
一歩踏み出すその足を、ぴたりと止めた。
「やっぱり世界救うの辞めた」
俺の突然の発言に仲間たちからざわめきが起こる。
「どうしたの?あと少しじゃない」
「怖くなったのか?」
そのどの質問にも頭を振って否定する。
そんなんじゃない、そんなんじゃないよ。
厄災が襲い掛かり、戦う意志を見せたその場で目立つ数名が突然祀り上げられ名ばかりのみんなの盾となり矛となる勇者となった。
ここまで本当に生きるか死ぬかの道のりだった。
容易にここまで来たわけではない。
道中縋ってきたいくつもの人たち。
でも誰1人共に立ち向かってはくれなかった。
縋り祈る助けてくれと。
それは俺らだって同じだ。
「ここまでやっと来たんだぞ」
「あとはここにいる魔物を倒すだけじゃないか」
必死に仲間たちに説得されるけど。
だってお前ら、
みんな傷だらけじゃないか!!
「そんなボロボロになってまで助けてもきっと俺らはそのうち忘れられる。最初は感謝されるだろう。でもそれもすぐに記憶から薄れていく。そんな戦いに意味があるのか」
俺の問いに悲しそうに見つめ合う彼ら。
「俺らのこれまでに負った傷は?誰が癒してくれる?俺らの救いは…誰が助けてくれるんだよ」
旅の途中で出会った人は優しい人も居た。
この人たちを救いたいと本気で思った。
生きていて欲しいと本気で思った。
それでもみんながみんないい人ばかりで無くて欺いたり利用しようとした奴等も少なくなかった。
それを見ないように勇者であるために目を瞑り前へ前へ進んで来た。
重くなった足を引きずり仲間と励まし合って何とかここまで辿り着いた。
やっとここまで来た!やっとここまで来たんだ!!
そして、我に返ってしまった。
ここまでして救う価値があるのか…。
見逃してきた悪意たち。見ないようにと目を伏せた。
悪い事ばかりでは無かったよ。
でもいい事ばかりでも無かったよ。
「もう俺は、勇者を辞めたいんだ」
もう疲れてしまった。
俺も、
誰かに救って欲しいんだ。


                (旅路の果てに)

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