ここまで仲間と共に歩んできた最終局面。
ついにこの砦に巣食うという魔物を倒すだけとなった。
その祠の前にいま俺たちはいる。
みんなここまでの戦いで身も心もボロボロだ。
一緒に苦難を乗り越えて来た仲間たちの顔をゆっくりと見回してそして深く息を吐いてその先の魔物がいるだろう暗い穴へと目を向ける。
一歩踏み出すその足を、ぴたりと止めた。
「やっぱり世界救うの辞めた」
俺の突然の発言に仲間たちからざわめきが起こる。
「どうしたの?あと少しじゃない」
「怖くなったのか?」
そのどの質問にも頭を振って否定する。
そんなんじゃない、そんなんじゃないよ。
厄災が襲い掛かり、戦う意志を見せたその場で目立つ数名が突然祀り上げられ名ばかりのみんなの盾となり矛となる勇者となった。
ここまで本当に生きるか死ぬかの道のりだった。
容易にここまで来たわけではない。
道中縋ってきたいくつもの人たち。
でも誰1人共に立ち向かってはくれなかった。
縋り祈る助けてくれと。
それは俺らだって同じだ。
「ここまでやっと来たんだぞ」
「あとはここにいる魔物を倒すだけじゃないか」
必死に仲間たちに説得されるけど。
だってお前ら、
みんな傷だらけじゃないか!!
「そんなボロボロになってまで助けてもきっと俺らはそのうち忘れられる。最初は感謝されるだろう。でもそれもすぐに記憶から薄れていく。そんな戦いに意味があるのか」
俺の問いに悲しそうに見つめ合う彼ら。
「俺らのこれまでに負った傷は?誰が癒してくれる?俺らの救いは…誰が助けてくれるんだよ」
旅の途中で出会った人は優しい人も居た。
この人たちを救いたいと本気で思った。
生きていて欲しいと本気で思った。
それでもみんながみんないい人ばかりで無くて欺いたり利用しようとした奴等も少なくなかった。
それを見ないように勇者であるために目を瞑り前へ前へ進んで来た。
重くなった足を引きずり仲間と励まし合って何とかここまで辿り着いた。
やっとここまで来た!やっとここまで来たんだ!!
そして、我に返ってしまった。
ここまでして救う価値があるのか…。
見逃してきた悪意たち。見ないようにと目を伏せた。
悪い事ばかりでは無かったよ。
でもいい事ばかりでも無かったよ。
「もう俺は、勇者を辞めたいんだ」
もう疲れてしまった。
俺も、
誰かに救って欲しいんだ。
(旅路の果てに)
2/1/2026, 8:21:15 AM