シャイロック

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4/14/2025, 12:47:59 AM

ひとひら

病院に向かうバスに乗っていた
元々の病気の他に、
高い熱が有り、謎の発赤も有りで
満身創痍の気分だった
ふと、視界を白いものが過ぎった
桜のひとひらだった
なんかもうね、涙が出た
バスの上部、換気用の窓が
ほんの少し開いていた
そこから入ったひとひらが
私のところに舞い降りたんだよ!
具合が悪かったからなおさら、
この偶然が嬉しかった
私はこれを丁寧にティッシュに包んで
持ち帰った・・・宝物のように

No.167

4/13/2025, 8:29:19 AM

風景

 夢の中で、私は森のようなところを彷徨っていた。高熱に浮かされた明け方のことだ。悪夢と言えば悪夢だが、逃げているワケでもなく、急いでいるワケでもなく、ただひたすら歩き回っていた。
 私はたまに、夢を見ながら「これは夢なんだ」と意識している時がある。逃げている夢の時は「泳ぐみたいに飛べるよ」とか、自分にアドバイス?する時もある。
 この彷徨う夢の時も「その大きな樹のところ、隣が白樺の。さっきも通ったよ」
 第三者的に俯瞰してみていると、似たような風景でも分かるらしい。この夢、なんだか小さな沼のような湖のような場所に出て、唐突に終わった。目が覚めたのだ。
 不思議なことに、あの最後の風景が今も頭に残ってる。

No.166

4/12/2025, 8:52:30 AM

君と僕

 君と僕は、来年結婚することになっていた。5年付き合って、そのうち1年同棲して、やっとプロポーズして結婚までこぎつけたんだ。
 それなのに、君は突然事故で死んでしまった。そんなことって、有るんだな。
 ショックが大きかったのか、告別式が終わって、彼女の家から帰宅したら、僕は横になったまま起きられなくなった。意識はあるし動こうと思えば動けそうなんだが、脱力したまま起きられない。
 君と僕は、結婚するんだったろう?
なぁ、結婚するんだったろう?
 悲しくて涙も出ない。

No.165



夢へ!

 夢を見ることも出来無かった青春時代。何か言えば、ことごとく「お前には無理だ」「お前になんか出来っこない」と潰されてきた。
 それでも密かに目論んでいたことはあった。小説を書きたかった。ワープロも無い時代、原稿用紙に書き貯めた文章を、地元の小さな文学賞に応募した。
 奨励賞というトップでは無い結果だったが、親は「小説を書くなんて片輪(注意、差別用語です)のやることだ」と、世間様に恥ずかしいから、受賞を取り下げろ、と言い出した。
 結局、それは出来なかったのだが、以来、書くことも禁止された。
 禁止されたが、地元のタブロイド版の新聞にエッセイを頼まれたり、タウン誌に連載を頼まれたりして、そういう正式なオファーには、親は弱かった。
 夢へ!踏み出した瞬間だった。
 結局、その後自分で才能に見切りをつけたんだけどね。悪役を登場させられないという、決定的な弱点に気づいた。悪役が出ると、物語にメリハリがついて面白くなるのに「そんなイヤなこと言わせたくない」「そんな怖いことになったら主人公が可哀想」とか思ってしまって。

No.164

4/10/2025, 3:44:04 AM

元気かな

 私の生涯で、明確にプロポーズしてくれた人が3人居る。
 一人は夫で、今も一緒にいるが、もう二人は若い時に付き合っていた人。
 人生いろいろなご縁が絡み合って生きていくワケだが、そういうご縁があった人って、今でも時々鮮やかに思い出すね。
 一人は税務署員で、4つ年下だった。若い時、私は税務署でアルバイトしていたのだが、確定申告で、みな忙しくお客さんと署員でごった返している中、急に「マユミさん、オレの扶養家族になりませんか?」とびきりの大声で言った。周りに居たお客さんも署員も、もちろん私も、一瞬固まった。
 え、いや、その、と私がしどろもどろになったところで、署内の喧騒は戻ったが、ビックリしたのなんのって!
 もう一人は、初めて正社員になった会社の人で、同い年だった。「マユミさん、オレは酒を飲んでもすぐ寝ちまうから、決して身体壊さないよ」「あ、はぁ、そうですか」「だから、オレと結婚しね?」そーなる?そのプロポーズなに?
 優しくてものすごくいい人だったけど、 特殊な部所にいて、三人一組でよく私のところに報告書を出してとか、いろいろで来ていたので、彼らは社内で一番親しかった。それだけに、兄弟のような感じで、嫌いではないけど、結婚は考えられなかった。
 さて、彼らは今どうしているのだろうか?
元気かな?

No.163

4/8/2025, 11:57:13 PM

遠い約束

 約束は約束。守れないなら、最初からしなきゃいい。
 ある日突然「りんだよ!約束守ってね!」と、絵文字満載のメールを受け取った。「あの、僕はりんさんの知り合いではないです」と返事したら、それにまたかわいいメールが来て、何度かやりとりした。
 「一回会わない?」会ってみたら、意外に落ち着いた感じの美人だった。コーヒーショップでお茶をした。彼女居ない歴イコール年齢の俺は舞い上がった。
 2回目のデートで「私のお仕事なんだけど」と、英語の教材を見せられた。「なかなか買ってもらえなくて、困ってるんだぁ」
 英語には興味がなかったが、りんには興味があったし、買えない額では無かったので一式
20万で買った。
 「また連絡するね」と約束して別れたが、それっきり連絡は無かった。メアドもLINEも受け付けられなくなった。
 後で知ったのだが、デート商法と言うらしい。間違いメールを装ったメールに返事をしてはいけないんだそうだ。りんという名前だって、偽名だったんだろう。
 1つ勉強になったのか。あーなんだか虚しい。俺って馬鹿だなぁ。

No.162

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