YUYA

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7/20/2025, 4:06:01 AM

『飛べ、心よ』


胸の奥で
雷鳴のように 鳴り響く衝動
名もなき願いが
翼を欲しがっている

躓いた日々が
風となり 背中を押す
誰かの「無理だよ」が
今では発射台さ

鼓動が跳ねる
まだ見ぬ明日を描いて
羽ばたける――そう信じた瞬間
地面が遠のいていく

高く、高く、
心という名のエンジンで
世界の色が変わるまで
何度でも叫ぶよ

飛べ、僕よ。
飛べ、今こそ。

7/13/2025, 6:19:58 AM

『風鈴とてるてる坊主』


風鈴がちりんと鳴った
窓辺で揺れる小さなガラスの鈴
その隣で くすんだ白布のてるてる坊主が
じっと空を見上げている

「明日、晴れますように」
小さな手が願いを結んだのは
いつだったろう
あの日の声も 今は風の中に紛れている

風が吹くたび 風鈴は歌い
てるてる坊主は黙って祈る
音と沈黙――
それでも、ふたりはよく似ていた

誰かの心に寄り添いたくて
誰にも気づかれず ただそこにいて
叶わぬ願いさえ、笑って抱きしめていた

やがて夏が通り過ぎ
てるてる坊主は少し色褪せて
風鈴は 秋の風に冷たく揺れた

それでも、ふたりは離れずにいた
いつかまた 誰かが空を見上げるその日まで
風の中で、そっと待っていた

7/12/2025, 5:22:09 AM

『心だけ、逃避行のち晴れでしょう』


雨の音にまぎれて そっと歩き出した
誰にも気づかれないように
心だけ 傘もささずに
知らない空へ 逃げ出した

言い訳も 目的地もないまま
ただ、少しだけ 呼吸がしたかった
笑顔の仮面が重すぎて
「大丈夫」の言葉が嘘に見えてきたから

置き去りにした日々は
窓辺に濡れたままの洗濯物みたいに
未練をまとって揺れていたけど
それでも、背を向けて歩いた

そして、気づいた
逃げた先に 雨ばかりじゃないことに
雲の切れ間に 差し込む光が
名前もなく微笑んでいたことに

心だけ、逃避行のち晴れでしょう
予報士なんていなくても
自分の空は 自分で晴らせる

涙が乾く頃には
少しだけ前を向いてる
そんな自分を 誰より信じてみたいから

7/8/2025, 4:12:27 PM

『あの日の毛色』


あの日の毛色は
やわらかな灰色
雨の前にだけ香る 湿った空気のような色だった

陽のあたる窓辺では
銀に透けて
影の中では 墨のように沈んだ

鳴きもせず
ただ、こちらを見つめていた
問いも答えも いらないと
その目が言っていた

手を伸ばせば届く距離で
でも、心だけが少し遠くて
それが ちょうどよかった

今でもふと、思い出す
もう会えないのに
その毛並みだけが、胸の奥で揺れている

あの日の毛色は
記憶にしか残らない
でも、たしかにそこにいた
静かな ひとつの命

7/5/2025, 2:57:39 PM

「波音に耳を澄ませて 」


旅の途中、地図をたたんで
海辺のベンチに身を預けた

潮の香りが 肩にかかり
遠くで 波が言葉を紡いでいる

波音に耳を澄ませて
焦る気持ちを ひとつずつほどいていく

ここじゃないどこかを目指していたのに
今はただ ここにいることが心地よい

風が吹くたび 過ぎた日々がよぎる
別れた人 笑い合った仲間
言えなかった一言たちが
波にさらわれて 海へと消える

誰かに会いに行く旅だったはずが
気づけば、自分に会いに来ていたのかもしれない

靴には砂 ポケットにはレシートと小さな後悔
それでもこの風景の中では
どれも旅の記録として、許せる気がした

波音は 問いかけでも答えでもなく
ただ、そこにあり続ける存在
だからこそ、私は安心して
静かに、自分と向き合える

そろそろ行こうか
まだ道の途中だけれど
今なら 歩き出せる

波音に耳を澄ませて
心の旅は 続いていく

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