YUYA

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8/20/2025, 1:30:24 PM

夢は方法を呼び寄せる
月を見上げたとき
人はまだ翼さえ持っていなかった
それでも「行きたい」と願った心が
重力を超える知恵を生んだ

不可能とは
方法がまだ見つかっていない状態にすぎない
我らがすべきことは
「できる範囲」を探すことではなく
「どうすればできるか」を問うことだ

月へ至ったように
未来もまた
私たちの問いの形に従うだろう

8/14/2025, 1:20:04 PM

灯台守にて


嵐の夜、私は海沿いの灯台に辿り着いた。
灯りの傍らには、長年ここを守る老いた灯台守。

「嵐でも、毎晩灯を絶やさぬのですね」
そう問えば、彼は海を見据えたまま答えた。

「船が来るかどうかはわからん。
だが、誰かが来るかもしれぬ夜に
灯を消すわけにはいかんのだ」

私はグラスに注がれた琥珀色のラムを口に含み、
しばし波の轟きを聞いた。

「あなたの灯は、海を渡る者だけでなく、
陸に立つ者の心も照らしているようです」

老いた男は、少しだけ口元を緩めた。
外では、風が少しずつ穏やかになっていた。

翌朝、私は港を離れ、
水平線の向こうに次の物語を探した。

8/13/2025, 11:44:19 AM

砂漠の商人にて


真昼の砂漠で、私は一匹のラクダと、
その手綱を握る商人に出会った。
背には宝石の詰まった袋がいくつも揺れている。

「町に着いたら、もっと多くを手に入れるつもりだ」
商人は、砂に反射する光を眩しそうに見やった。

「しかし、そんなに抱えてどうするのです?」と問えば、
彼は少し黙ってから言った。
「重いのはわかっている…
だが、手放すのが怖いのだ」

私は帽子を脱ぎ、
熱を帯びた風にしばし身を任せてから、こう答えた。

「握りしめすぎれば、砂も宝石も同じように
指の隙間から零れ落ちます」

商人は黙り、足元の砂を見つめた。
遠くで蜃気楼が揺れ、
その中に私の次の旅路が霞んでいた。

8/12/2025, 10:15:33 AM

雪国の宿屋にて


吹雪の夜、私は小さな宿屋の炉端に腰を下ろした。
向かいには、旅を諦めたという若い女性。

「雪が止むのを待っていたら、もう何年も経ってしまいました」
湯気越しに、彼女はため息を落とす。

私は手袋を外し、
銀のティースプーンで紅茶をかき混ぜながら答えた。

「雪は止むこともあれば、止まぬこともある。
待つ間にできるのは、
火を絶やさぬことと、
一杯の紅茶を美味しくいただくことです」

窓の外は、相変わらず白く閉ざされていたが、
炉の炎は少し高く揺れた。

翌朝、私は雪の街を発ち、
足跡を振り返らぬまま、次の駅へ向かった。

8/11/2025, 7:09:14 AM

「紳士猫、世界をゆく」

港町の時計屋にて


港町の小さな時計屋で
私は、動かない懐中時計を抱えた青年に出会った

「時が止まったようで、前に進めないんです」
青年は言った

私は銀のステッキを軽く鳴らし
彼の手元を覗き込む

「時を進めるのは、時計ではありませんよ」
「では何が?」
「あなたが一歩、足を運ぶことです」

港の汽笛が響き、青年は顔を上げた
その目には、潮風が映っていた

私は帽子を持ち上げ、別れの礼をした
――次の汽車が、私をまた新しい物語へ運ぶ

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