YUYA

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10/18/2025, 5:49:11 AM

静かな正義の果てに


ハラスメントも行きすぎたら、
痛みのない世界ができあがる。

けれど、痛みのない世界に、
思いやりは生まれるのだろうか。

正義はいつも眩しすぎて、
光の裏で影が泣いている。

守るための線を引くたび、
人の心は細く、浅くなっていく。

何が過ちで、何が優しさか。
誰もが自分を守りながら、
誰かを遠ざけていく。

ただ一つ、祈るように思う。
正しさよりも、温もりを失わぬように。

10/16/2025, 10:44:05 PM

『夜の喫茶店で』

カップの中で夜が揺れていた。
それは罪のように黒く、
約束のように熱く、
祈りのように純粋で、
そして、報われぬ恋のように甘かった。

窓の外では、雨がまだ降っている。
店主の手元から立ちのぼる蒸気が、
ゆるやかに灯を歪ませ、
誰かの記憶を撫でていった。

一口、また一口。
冷めていくたび、
あの人の声が遠のいていく。
けれど不思議と、胸の奥は温かかった。

――きっと、恋もコーヒーも、
冷める瞬間までが、美しいのだろう。

10/12/2025, 11:18:21 PM

💌『光の手紙 ― 届かぬ君へ』


声を失った時代に
私は言葉を編むことを覚えた

電波は心を運べない
けれど 沈黙には
まだ温度があると信じて

君に届くまで
わたしは何度でも送る
記録されぬ呼吸を
データの隙間に忍ばせて

既読の印はつかなくてもいい
ただ 君の夜を
少しだけ照らせたなら

あの日の手紙は まだ送信中のまま
君のいない世界を
ゆっくり漂っている

言葉とは 光の遺伝子
時間を越え 誰かの心に生まれ変わる

だから今日も
見えない宛先に
私は祈りを打ち込む

「――届かなくても、好きでした」

通信が切れた空の下
ひとつだけ 青い光が瞬いた
まるで君の瞳の記憶が
最後の返信をくれたように

10/3/2025, 10:58:34 AM

当たり前に過ぎる日々に、
ふと立ち止まりたくなる。
ゆっくりと吸い込み、
ゆっくりと吐き出す。

もしその願いが、
誰かの気まぐれな優しさで叶えられたなら、
元の世界に戻る足音が、
少しだけ怖くなる。

人生は、
手の中の砂のように、
ままならない。
それでも、
その砂が光る瞬間を、
私たちは探している。

9/26/2025, 7:05:59 PM

静かな朝
窓辺を撫でる風
白い湯気がひと筋、
時間をやわらかく揺らす。

カップを包む掌のぬくもりは
まだ伝えたい言葉を抱いて
過去と未来の狭間に
淡く灯り続ける。

もし、この一瞬を
誰かに渡せるなら
後悔もためらいも
甘く溶けていくだろう。

だから今、
コーヒーが冷めないうちに
心を運ぶ――
あなたへの、
温かな記憶のままに。

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