YUYA

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9/7/2025, 5:15:21 AM

残照の祈り


過ぎ去った日々に
言葉を置き忘れたまま
振り返れば ただ静かな影だけが
長く伸びている

太陽の色は 沈みゆき
未練を抱えた残照となって
胸の奥に 痛みと温もりを
同時に刻み込む

もしもう一度 あの日に戻れたなら
違う自分を生きられたのだろうか
答えのない問いを抱きながら
筆をとるしかない

それでも願う
この切ない光が
未来の誰かの窓辺に届き
小さな明かりとなるように

9/6/2025, 4:26:17 AM

静かな机の上に
白い紙と黒い影
筆をとる音だけが
一日の呼吸を刻む

窓の外 太陽の色が
やわらかく差し込み
心の奥に沈んだ過去も
光に溶けていく

間違いも 悔いも
すべてはこの穏やかな日常に
ゆるやかに溶け込み
新しい物語の種となる

今日もまた
筆先に宿る太陽の色で
自分を照らし
誰かの明日をあたためる

9/3/2025, 11:12:40 AM

初めはただ、
流れを目に映し、
師の背を追うのみ。
それが見習い。

やがて、
言われしことを形にし、
拙きながらも務めを果たす。
それは半人前。

さらに進めば、
己の知恵を働かせ、
自ら考え、道を選ぶ。
それこそ一人前。

そして最後に至れば、
人を育て、仕事を残し、
己を越える者を生み出す。
それを名人と呼ぶのだ。

8/31/2025, 2:05:28 PM

工場という場所は、なぜか「変な人の見本市」みたいになっている。
最初は「ここには変人が多いな」と思っていた。自分も昔から「変わり者」と言われてきたから、まあ同族に囲まれた感じで悪くないじゃないか、と。だが数ヶ月もすれば分かってくる。彼らは変人ではない。ただのおかしな人たちなのだ、と。

「変人」という言葉は、ある意味で褒め言葉だ。突拍子もないけれど独創性がある人、世間の常識にとらわれず自分の道を行く人。ちょっと変わっているけど、憎めないし、むしろ刺激をくれる存在。だが工場にいる人たちの多くは、その範疇には収まらない。

例えば、ネジを締める手を止めては延々と上司の悪口を垂れ流す人。昼休みになると必ず謎の健康法を語り出す人。人が困っているのを見ると妙にテンションが上がる人。これらは「個性」ではない。ただの「おかしな習性」だ。変人というより「工場奇人」とでも呼んだ方がしっくりくる。

そのことに気づいてから、逆に私は安心した。自分は彼らのように「ただおかしい」のではなく、少なくとも「変人」の領域に片足を突っ込んでいる。奇妙さの中にも筋がある、と信じられるだけマシだ。

結論を言えば、工場は変人の集まりではない。もっと単純に、世間の常識からちょっと外れた「おかしな人たち」の動物園だ。そしてその中で、「変人」として霞んでしまうどころか、むしろ相対的にまともに見えてしまう自分がいる。なんとも皮肉な話である。

8/31/2025, 5:45:57 AM

あるカフェでのこと。

彼女はコーヒーを頼んだ。
彼はカフェラテを頼んだ。

店員がカップを置いた瞬間、彼女がひとこと。
「えっ、それ私のじゃない?」

彼は慌ててカップを見て、真顔で答えた。
「いや、ラテアートがハートだから、きっと君のだよ」

彼女は笑って返した。
「違うよ、私ブラックコーヒー派だもん」

ふたりは顔を見合わせて、同時にクスッ。
結局、入れ替えて飲むことになった。

そして最後に彼がぽつり。
「でも、結婚したらこうやって料理も間違えて取り合うんだろうね」

彼女はまたクスッと笑った。
「じゃあ、最初から“ふたり分け合うメニュー”にしたらいいんじゃない?」

カフェの隅で、コーヒーとラテよりも甘い空気が漂っていた。

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