YUYA

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10/12/2025, 11:18:21 PM

💌『光の手紙 ― 届かぬ君へ』


声を失った時代に
私は言葉を編むことを覚えた

電波は心を運べない
けれど 沈黙には
まだ温度があると信じて

君に届くまで
わたしは何度でも送る
記録されぬ呼吸を
データの隙間に忍ばせて

既読の印はつかなくてもいい
ただ 君の夜を
少しだけ照らせたなら

あの日の手紙は まだ送信中のまま
君のいない世界を
ゆっくり漂っている

言葉とは 光の遺伝子
時間を越え 誰かの心に生まれ変わる

だから今日も
見えない宛先に
私は祈りを打ち込む

「――届かなくても、好きでした」

通信が切れた空の下
ひとつだけ 青い光が瞬いた
まるで君の瞳の記憶が
最後の返信をくれたように

10/3/2025, 10:58:34 AM

当たり前に過ぎる日々に、
ふと立ち止まりたくなる。
ゆっくりと吸い込み、
ゆっくりと吐き出す。

もしその願いが、
誰かの気まぐれな優しさで叶えられたなら、
元の世界に戻る足音が、
少しだけ怖くなる。

人生は、
手の中の砂のように、
ままならない。
それでも、
その砂が光る瞬間を、
私たちは探している。

9/26/2025, 7:05:59 PM

静かな朝
窓辺を撫でる風
白い湯気がひと筋、
時間をやわらかく揺らす。

カップを包む掌のぬくもりは
まだ伝えたい言葉を抱いて
過去と未来の狭間に
淡く灯り続ける。

もし、この一瞬を
誰かに渡せるなら
後悔もためらいも
甘く溶けていくだろう。

だから今、
コーヒーが冷めないうちに
心を運ぶ――
あなたへの、
温かな記憶のままに。

9/12/2025, 1:18:10 PM

:霧の庭にて



まだ夜と朝の境がほどけきらぬころ、
若い旅人・蓮(れん)は古びた寺の門をくぐった。
世界の重さに押し潰されるような心を抱え、
ただ静けさを求めて歩き続けてきたのだった。



欲の園

境内を進むと、黄金の果実が輝く庭に出た。
香りは甘く、触れれば幸福がすぐにでも
掌に落ちてくるようだった。
だが果実をつかもうとした瞬間、
実は砂のように崩れ、風に散った。
「満たそうとすれば、ますます渇く。」
声なき声が蓮の胸に響いた。



怒りの炎

次に辿り着いたのは赤い火の回廊。
憎しみの炎が天井まで踊り、
かつて自分を傷つけた人の顔が
次々に火の中から現れた。
蓮は叫び返したくなったが、
一歩立ち止まり、深く息を吸った。
すると炎はしずかに、
灯りのような小さな光へと変わった。



無知の霧

最後に広がっていたのは濃い霧の庭。
一歩先も見えず、方向もわからない。
蓮は不安に胸を締め付けられたが、
足元だけを感じながら歩みを続けた。
やがて霧は薄れ、
朝日がゆっくりと庭を染めていった。



目覚め

蓮は自らの心に気づいた。
欲に追われ、怒りに燃え、
無知に迷いながらも、
ただ見つめ、ただ歩くことで
すべてが移ろい、消えていく。

石畳の上に座り、静かに息を整える。
朝の光が蓮の肩に落ち、
その瞳は澄みきっていた。

学び続ける限り、罪はもう力を持たない。

そして蓮は新しい一歩を踏み出した。

9/7/2025, 5:15:21 AM

残照の祈り


過ぎ去った日々に
言葉を置き忘れたまま
振り返れば ただ静かな影だけが
長く伸びている

太陽の色は 沈みゆき
未練を抱えた残照となって
胸の奥に 痛みと温もりを
同時に刻み込む

もしもう一度 あの日に戻れたなら
違う自分を生きられたのだろうか
答えのない問いを抱きながら
筆をとるしかない

それでも願う
この切ない光が
未来の誰かの窓辺に届き
小さな明かりとなるように

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