灯台守にて
嵐の夜、私は海沿いの灯台に辿り着いた。
灯りの傍らには、長年ここを守る老いた灯台守。
「嵐でも、毎晩灯を絶やさぬのですね」
そう問えば、彼は海を見据えたまま答えた。
「船が来るかどうかはわからん。
だが、誰かが来るかもしれぬ夜に
灯を消すわけにはいかんのだ」
私はグラスに注がれた琥珀色のラムを口に含み、
しばし波の轟きを聞いた。
「あなたの灯は、海を渡る者だけでなく、
陸に立つ者の心も照らしているようです」
老いた男は、少しだけ口元を緩めた。
外では、風が少しずつ穏やかになっていた。
翌朝、私は港を離れ、
水平線の向こうに次の物語を探した。
8/14/2025, 1:20:04 PM