YUYA

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砂漠の商人にて


真昼の砂漠で、私は一匹のラクダと、
その手綱を握る商人に出会った。
背には宝石の詰まった袋がいくつも揺れている。

「町に着いたら、もっと多くを手に入れるつもりだ」
商人は、砂に反射する光を眩しそうに見やった。

「しかし、そんなに抱えてどうするのです?」と問えば、
彼は少し黙ってから言った。
「重いのはわかっている…
だが、手放すのが怖いのだ」

私は帽子を脱ぎ、
熱を帯びた風にしばし身を任せてから、こう答えた。

「握りしめすぎれば、砂も宝石も同じように
指の隙間から零れ落ちます」

商人は黙り、足元の砂を見つめた。
遠くで蜃気楼が揺れ、
その中に私の次の旅路が霞んでいた。

8/13/2025, 11:44:19 AM