YUYA

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『風鈴とてるてる坊主』


風鈴がちりんと鳴った
窓辺で揺れる小さなガラスの鈴
その隣で くすんだ白布のてるてる坊主が
じっと空を見上げている

「明日、晴れますように」
小さな手が願いを結んだのは
いつだったろう
あの日の声も 今は風の中に紛れている

風が吹くたび 風鈴は歌い
てるてる坊主は黙って祈る
音と沈黙――
それでも、ふたりはよく似ていた

誰かの心に寄り添いたくて
誰にも気づかれず ただそこにいて
叶わぬ願いさえ、笑って抱きしめていた

やがて夏が通り過ぎ
てるてる坊主は少し色褪せて
風鈴は 秋の風に冷たく揺れた

それでも、ふたりは離れずにいた
いつかまた 誰かが空を見上げるその日まで
風の中で、そっと待っていた

7/13/2025, 6:19:58 AM