「波音に耳を澄ませて 」
旅の途中、地図をたたんで
海辺のベンチに身を預けた
潮の香りが 肩にかかり
遠くで 波が言葉を紡いでいる
波音に耳を澄ませて
焦る気持ちを ひとつずつほどいていく
ここじゃないどこかを目指していたのに
今はただ ここにいることが心地よい
風が吹くたび 過ぎた日々がよぎる
別れた人 笑い合った仲間
言えなかった一言たちが
波にさらわれて 海へと消える
誰かに会いに行く旅だったはずが
気づけば、自分に会いに来ていたのかもしれない
靴には砂 ポケットにはレシートと小さな後悔
それでもこの風景の中では
どれも旅の記録として、許せる気がした
波音は 問いかけでも答えでもなく
ただ、そこにあり続ける存在
だからこそ、私は安心して
静かに、自分と向き合える
そろそろ行こうか
まだ道の途中だけれど
今なら 歩き出せる
波音に耳を澄ませて
心の旅は 続いていく
7/5/2025, 2:57:39 PM