愛子

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4/24/2026, 2:57:36 PM

あまい

大森靖子さんの、「あまい」という曲で心の優しい部分と辛い部分がすり減っていくのを感じた。23時にじわじわと涙を溜める女が一人。
超不安だから超食べちゃう。女の子もそう歌っていてひとり、お腹を空かせたまま呟くような甘い歌声を聴いた。
目の前にはお母さんがヘタを剥いた苺が真っ赤に横たわっていて、実って死んだ果実だった。本当に見るともっと暗い陰をしている。
「あとで食べるね」が嘘になって、結局私はこの苺を食べない。お母さん。3ミリと1ミリが二個の薬を毎日用意して、眼鏡越しに見える目を擦っていま眠った。

「太っていいよとか言わせちゃう
ちゃらんぽらんだった君の方がちゃんとしちゃうくらい甘えちゃう」
呟くように歌われる。相手を想うばかり重く苦しくてまた自分を責めて大好きな人からすり減った優しさを渡される苦しさ。

0時を過ぎて、夜から始まった今日も昨日と同じ薬が転がった。
3ミリのピンク色の錠剤と青い1ミリの錠剤が出されて、それを私はつっぱねて薬用の水だけがすり減る。生温い水の甘さになんだか私が悪いみたいで、温められた水だけを一口、大きく飲み込んだ。
この歌みたいな、食べ過ぎる苦しさとはまた別の優しさで用意されたものを拒絶する辛さだった。

4/21/2026, 2:03:18 PM

恋における自分より好きという自傷と甘い躁

哀しい涙は目を覆うように包んだ。
もう同じ学校じゃないあの人を取り戻すように身体が小さな吐き気に覆われ、あの日々を呆然と眺め、そこに戻ろうとしていた。
好きが瞼を閉じて、気持ち悪いものに侵されていく。あの人を好きな自分が私で、それが証明できるならばこの病が偽物じゃなくて良かった。
一方的な会話の画面を、無資質な機械を持つ手の実感を、通してあの人が居ることを実感した。
瞼が曇っていって遠いあの人しか見えなくなった。
ぱ、と閉じた暗闇の画面を眺めた後またそれを見てみるとあいうえおの「う」の口になって、禍々しい感情が押し出されていくのを喉の奥で受け留め切れなくなる。
料理の時の、私は大根おろしが好きでも嫌いでもないのだが食欲を満たす準備としてシャキシャキと野菜を擦り下ろしていくあの時間が私にも何秒も続いた。
「あ」彼が返事を打っている。嬉しい、嬉しい、泣きそう。入力中の時間がずっと続いて欲しいずっとメッセージを見たくない。
好きだ。貴方の時間がすり減って、私に文字を打つ間も老いへと近づくならそんな現実もメッセージも要らない。
ずっと文字を打っていて、大好きだ。
辛かった。好きが辛かった。
気持ち悪いよお、と赤子が親を求めるかの様に喚く女が鏡に反射した。致死量の好きは、私のちっぽけな器の脳では分からず涙の川が愛の形だった。惑星を涙で溺れさせて、皆んな空に浮かんだら天の川さえ塩水になっているかもしれない。天の川になってもきっと彼には名前が付く。特別にしかなれないあの人にいやになって天井を眺めた。

4/16/2026, 5:46:08 PM

ノンフィクション

大好きだと思った子が付き合ったことを煌びやかなコミュニティツールで知ってから、16分経つ。
13分前に私がその子が一人で羽が生えて空に浮いていったかのような気持ちになったのを覚えている。
一つずつ私の手の温度から離れていった気がして喪失感を抱えて、文字を書いても白い画面の文字の隙間に涙をするような、いやな日。
感情の形で埋まらないメモアプリの画面が開いた心の空洞とそっくりで地に足がついた私は、その子を追いかけて生身の身体で飛ぼうとも思えなかった。
おめでとう!と幸せの心の形を縁取ったような応援の言葉は送ったもののその輪郭は確かだったし、私のように不幸を眺めて欲しくなかった。
真っ直ぐで笑い方が可愛く思えてくる面白い子が笑っていてほしかった。

もう31分前になってしまったが、私はその子の返信で謝罪を受けた。
その子はある出来事に怒り私の平凡なコミュニティツールの連絡先を消した、らしかった。
冷えた。ドライヤーで乾かさない髪はもう雫は垂れていなかったが、偶然できた足の膿に食い込んだ爪の鋭利な刃もほんとうは私を刺してもいなかったかもしれないが、「もういや」という言葉を言おうとして口の渇きが止まらずそのまま食堂を通り身体を奪ってしまった。



「ーーーーー。」

ところで今の身体は無くなってしまったので、脳味噌には別の私の声が聞こえるようになった。波動が、チャクラが、5Gが。そんなものを無視して脳味噌の声は響いている。
しかし心はそのまま動き、でもそこに右心室などという生物的な気持ち悪い細かさは無く、ただ暖色と寒色を概念としたような生温さと固さの二つが交互に浮かび上がっては薄まっていくようだった。
丸三日のような30分を過ごした。その内、脳味噌の方が心の私の言葉を話せるようになって、いつもよりほんの少しあいうえおを重く使った。
脳味噌を「自分B」だとすると、自分Bは、
「自分を心底最低で他人からの安心を求めると一緒に気持ち悪い自分を認められないことが嫌で、でも気持ち悪い自分の姿すら見せたくもないし受け入れてもらって思考停止したいのに他人に人生を委ねることは最悪だと思っている。
最低な自分でいるべきで、ただ明るい未来を歩みたい意思だけはありこのように分析することで自分が言葉の中だけの人間になることを嫌っている。」と語り始めた。
彼女が寒色で話したことを私は陽の光で劣化した本の色みたいな暖色で聞いた。Aは私の身体を半分奪ったが、不思議と嫌いとまでは思わなかった。

次第に、私は深く固い冷たさとなった。冷たさという形は寂しいより少し固い。
心の雲から冬の風が来ていた。でもそれは嫌なことじゃ無くて春に向けて思い出す準備をしている。自分Bはそれを知らずに寒くなった私を見て悲しくなって、萎んでいた。それを見て苦い咳が止まらなくなって、幸せでいて欲しくて話した。
「私たちが冬で終わりということは、脳味噌の私も気づいていたけれど、なんで冬で終わりだと思う?」
Bは
「明るいイメージの春で終わりを迎えたいとかじゃないの。」
と口を尖らせて答えを言った。私はそんな理由ではBが満足しないことは知っていた。

「…そうじゃないよ。脳味噌の私も最後の気持ちを思い出して、なにがあったと思う?」

脳味噌は咄嗟に言葉を私に合わせられずに困惑しているような電波を発信した。Bは賢く、この場所では脳は気持ちを感じられないことを知っていたからだ。何も答えられなかったBに、私は続ける。

「私たち、さっきまで友達がいやになってたんだよ。
自分を好きか問われると頷けないのに、人を無意識に信じて信じた人から厳かにされる惨めさには見てられなくなって、それで、嫌になっていたの。だから最後は悲しい気持ちで終わるんだよ。」

分からない。

「でも、大丈夫。私たち、元々は一つだったから元に戻るだけだよ。」

私にもそれが本当か分からなかった。ただ、嘘を知るのは私だけでよかったし、笑えなくても私はよかった。暫く、なんだか分からないような電波に身体が包まれる。目をぱちぱち、と動かすとなぜだか呆然と怒りが湧いてきた。火照った頬の暗さの下に血があるように怒っている。
思い出した。あの子がどんだけ変わっても私は変わらないから貴方のこと許すとか、許すとか言って上に立ったような物言いをすることとか、好きでいられないと思うし、暫くは話したく無いと思う。私は、文章を書いてちょっとあの子を嫌いになった。
早く付き合った男と幸せになって、私のこと忘れてよね。

3/24/2026, 8:19:59 AM

掃除の時間が終わったころ、バケツの水を外に流しているクラスメイトを背景に見た光景が忘れられない。
軽く射すように降る雨と、雨の隙間をもっと上から射している柔らかな陽射しが、学校特有の黄色っぽい土に水溜りを作っていた。
雨が少しづつ晴れていくたび空へと気持ちが昇っていくようで僅か5秒ほどの間ただ呆然とそれを見ていた。
ふと、私はなぜかこの光景をずうっと先でも覚えている気がしたのをそれもずうっと覚えている。
小学6年生の6月の話だ。今もなお、その記憶を未来に運んでいっている。

3/19/2026, 1:19:40 AM

塩水になっていく

垂れた水滴が紙を溶かしていくかのように、この大粒の涙で全てを書き換えたい。

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