愛子

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3/24/2026, 8:19:59 AM

掃除の時間が終わったころ、バケツの水を外に流しているクラスメイトを背景に見た光景が忘れられない。
軽く射すように降る雨と、雨の隙間をもっと上から射している柔らかな陽射しが、学校特有の黄色っぽい土に水溜りを作っていた。
雨が少しづつ晴れていくたび空へと気持ちが昇っていくようで僅か5秒ほどの間ただ呆然とそれを見ていた。
ふと、私はなぜかこの光景をずうっと先でも覚えている気がしたのをそれもずうっと覚えている。
小学6年生の6月の話だ。今もなお、その記憶を未来に運んでいっている。

3/19/2026, 1:19:40 AM

塩水になっていく

垂れた水滴が紙を溶かしていくかのように、この大粒の涙で全てを書き換えたい。

3/17/2026, 4:17:24 PM

太陽の源

夏には不思議な静けさがあります。
それが彼女の瞳に映しませんようにと何度願ったことか。
その日は、燦々と太陽が輝き人々の熱気が天へと昇っていくような昼でした。
瞬いた彼女の焦げ茶色の瞳に私は思わず目を細めます。
「あなた、もう火照っているから部屋に戻りましょう。」
彼女の肌はヤンチャで美しい色でした。
頬は薄く色付き、素の肌の色ではじっと見つめないと分からないくらいでしたが、見つめるにはあまりに毒であります。
命の形をした彼女はいつも甘美な熱を放って居ました。

3/15/2026, 7:32:26 PM

蜜柑の日記

いつだったか集合体恐怖症の知人が自然のものには恐れを抱かないという話をしていた。
例えば蜜柑の斑点模様には恐怖を感じない、など。
水っぽいハズレの蜜柑をもしゃりと食んで飲み込んだ。
喉仏が鼓動のようにごくんと言って、軽い瑞々しさが流れる。川が喉に住み着いて居なくならない。
その知人の発言がわからないわけでも無かった。
蜜柑とそのグミでは全く得るエネルギーの種類が違うと思う。
同じように、自然とそこから離されたものでは精神に与えるピュアさが違うと思った。

3/14/2026, 10:11:42 AM

白い蜘蛛の糸


朝はひどく眩暈がした。腹の底から這うように湧き上がってくる倦怠感が白い室内に入り込む、眩しいくらいの日の光に刺される。少し前に祖母が死んだように、病院の人工的な直線と共に死ぬのは私の確固たる未来だと感じさせられた。
病室に持ち込めるのはスマートフォンなどの必需品のみだったので、途方もない繰り返しの日々を傍観することしかできない。少なくとも、あと二ヶ月ほどはそうだろう。繰り返していく中で少しずつ柔らかくなる二の腕と静かに濁りゆく身体の微々たる変化を私は焼き付けるように眺めていた。
遠い天井の白に向かって息を吐く。思うより細く吐いたそれにさえ微かな命の息吹きを感じた。

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