愛子

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恋における自分より好きという自傷と甘い躁

哀しい涙は目を覆うように包んだ。
もう同じ学校じゃないあの人を取り戻すように身体が小さな吐き気に覆われ、あの日々を呆然と眺め、そこに戻ろうとしていた。
好きが瞼を閉じて、気持ち悪いものに侵されていく。あの人を好きな自分が私で、それが証明できるならばこの病が偽物じゃなくて良かった。
一方的な会話の画面を、無資質な機械を持つ手の実感を、通してあの人が居ることを実感した。
瞼が曇っていって遠いあの人しか見えなくなった。
ぱ、と閉じた暗闇の画面を眺めた後またそれを見てみるとあいうえおの「う」の口になって、禍々しい感情が押し出されていくのを喉の奥で受け留め切れなくなる。
料理の時の、私は大根おろしが好きでも嫌いでもないのだが食欲を満たす準備としてシャキシャキと野菜を擦り下ろしていくあの時間が私にも何秒も続いた。
「あ」彼が返事を打っている。嬉しい、嬉しい、泣きそう。入力中の時間がずっと続いて欲しいずっとメッセージを見たくない。
好きだ。貴方の時間がすり減って、私に文字を打つ間も老いへと近づくならそんな現実もメッセージも要らない。
ずっと文字を打っていて、大好きだ。
辛かった。好きが辛かった。
気持ち悪いよお、と赤子が親を求めるかの様に喚く女が鏡に反射した。致死量の好きは、私のちっぽけな器の脳では分からず涙の川が愛の形だった。惑星を涙で溺れさせて、皆んな空に浮かんだら天の川さえ塩水になっているかもしれない。天の川になってもきっと彼には名前が付く。特別にしかなれないあの人にいやになって天井を眺めた。

4/21/2026, 2:03:18 PM