狐コンコン(フィクション小説)

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11/1/2025, 8:09:37 AM

(※人によって不快な表現があります)12

ある時ふと気がついた

私の柔い体を撃ち抜くような瞳を向けるあなたは永遠に私のものにならないのだと

どんなに願おうと

どんなに涙を流そうと

どんなにあなたが私を見ようと

それは過去の良い想いをまた追体験したい他にないのだと

他人は自分のものにならない

そんな綺麗事が酷く憎たらしく眩しく思える

私で初めてを知って欲しかった

初めて喜びを知り

初めて怒りを知り

初めて哀しみを知り

初めて楽しいを知り

初めて恋を知り

初めて愛を知り

初めて幸せを知ってほしかった

でもそれは絶対にあなたでは叶えられない

なら他の人に叶えてもらうしかないでしょう






おんぎゃあ おんぎゃあ

ああ、可愛い声。

ねえ、見てよ。

可愛い顔、とっても愛おしい。

私があなたに全て教えてあげる。
楽しいことも、悲しいことも、ぜんぶぜんぶ分かち合いましょうね。

10/19/2025, 12:58:50 PM

※虐待描写あり  8
(君が紡ぐ歌を声に解釈しました)



「あぁ、アンタの泣き声って本当に癪に障る!!うるさい、うるさいのよアンタ!!くそっ、産まなきゃ良かった!!」

怒って私のほっぺを何回も叩くおかあさん。

痛くて涙が出てきそうになるけど、泣いたらおかあさんは怒るから。

おかあさんに叩かれる時間は嫌いじゃない。だって、おかあさんが触ってくれるから。痛いけど、じーんって痛いときだけは、おかあさんから暖かいのをもらえたって思えるから。

たまに帰ってくるパパ達は、おかあさんのことを「ははおやにすらなれないばいた」って笑いながら言うけど、私は意味が分からないからにっこり笑うだけ。
どういう意味?って聞こうとすると、おかあさんは怒るから。

おかあさんはいっつも泣いて、怒って、たまぁに顔を赤くして笑う。
顔を赤くして笑った後は寝ちゃうから、カンカンって音が鳴るやつを袋にいれて、おそとに出しておく。

そうすると、たまに褒めてくれるから。おかあさんが褒めてくれる時の笑顔を見れるなら、なんだって出来る。





小さい頃はそう思ってた。
だから、母さんの笑顔を見るためならなんだってした。
母さんの彼氏達のご機嫌必死でとって、何されたって黙ってた。痛い事も苦しい事も気持ち悪い事も我慢した。
酒を盗むのだって、子供だからって理由で許されるたびに繰り返した。
母さんにいくら殴られたって誰にも言わなかった。
児童相談所がいくら来ようと、愛想よくして追い返した。

全部、全部、全部我慢した。
母さんのために私の人生捨てたのに。
母さんのために言う通りに何でもやったのに。
母さんはあっけなく病気で死んで、私1人取り残されて。

自分の体が自分じゃないみたいに生きてたら、バイト先の人から告白されて、適当に頷いたら付き合うことになって、数年経って結婚して、気づけば子供を産むまでになった。

母さんが死んで旦那に告白された時から、私の人生は見違えるように"普通"になった。

我慢して、我慢して、我慢をし続けて捨てたはずの人生がやっと私の手に戻ってきて、これから普通の人間として生きられるんだってやっと思えたのに。

あんまりにも言うことを聞かない子供に腹が立って。
私はあんなに我慢したのにって気持ちになって、それで。









「あぁ、アンタの声って本当に癪に障る!聞いてるだけでイライラするのよ!!もうアンタなんか産まなきゃよかった!!」


あぁ、私は普通になれなかったんだなって。

7/28/2025, 1:49:45 PM

5

虹のはじまりを探して、歩いて、その先には何もなかった。

始まりもなかった。終わりもなかった。

遠くから眺めて、綺麗と思うその瞬間だけが虹の存在する理由だった。

空のように果てしなく広がるわけでもなく、雲のように揺らぎ動くものでもなく、太陽のように照らすわけでも、月のようにそこにあるわけでもない。

ただ気まぐれのように姿を見せて、美しさを散々見せびらかして満足して消えていくだけだった。

はじまりもおわりも無く、かといって始まりが見つからないからといって存在しないわけでもない。

虹は己の美しい姿を見せびらかしてサッサと消えていく、蝶のようなものなのかもしれない。

7/20/2025, 10:20:53 AM

12


「う、うう、ううう、うう、あ、あぁ………」

「きみって、相変わらず泣くのが下手っぴだねぇ」

くしゃくしゃになった顔に、ぼたぼた溢れ落ちていく涙に、ちょっとの鼻水とよだれ。
きみはよく大衆的な感動映画を見ては「私もこんなふうに泣くのよ」と大口を叩くくせに、蓋を開ければこれだもの。

「いや、いやよ。絶対にいやなの。ねぇ、一緒に行きましょうよ。私をひとりにしないで。」

泣きすぎて汗ばんだ体が、私の体にゆっくりとくっついていく。なめくじみたいで愛おしいけど、私達が一緒にいるわけにはいかないから、そっと体を離す。

「でも、ほら。しょうがないよ。きみ、親孝行するんだって言ってたじゃない。他の人と結婚して、笑顔を沢山見せてあげないと。」

綺麗に染められた金髪の髪に手を通すと、相変わらずの癖っ毛が少しだけくすぐったい。

「なら、一緒に説得しましょうよ。私、あなた以外を知らないの。あなた以外を知りたくもないわ。だから、あなたが似合うと言ってくれた色に髪も染めた。ほら、爪だってキラキラしてるでしょう。あなたが褒めていたデザインよ。」

きみが伸ばした手が私の腕を絡めて離さないのを、拒めない。

出会った時、きみは明らかな良いところのお嬢様で、ほんの少しからかってやろうと思っただけだったのに。
濡羽色の髪は痛みやすい金髪を勧めて、丁寧にケアされていた爪もゴテゴテした重いネイルになるようにワザときみの前で褒めちぎったのに。

気づいたら私はきみに夢中で、どうしようもなく愛おしくて、目が離せなくなった。


病院に行く時も優しく付き添ってくれて、症状が出てもきみは臆することなく私が落ち着くのを待ってくれた。

でも少しずつきみの体に怪我が増えていくのを私は許せなかったから。

こんな私といてはだめだから、わざときみの御実家に連絡して、迎えが来るように仕向けた。

「さぁ、ほら帰ろう。こんな奴といてはダメだ。」

「いや、いやよ父さん。離して、離して!!」

きみはバカだから、きみの手を引くお父さんが心苦しそうな顔をしているのも気づかない。

きみはバカだから、きみのお父さんが一度も私をこの女と言わないことに気づかない。私たちを性別だけで判断しない人なことに、気づかない。

きみはバカだから、アンビバレントは治る事は無いから、きみと一緒にはいられないと伝えても聞き分けない。





「傷つけてごめんね、紀美ちゃんだけは幸せに生きるんだよ。今を生きるんだよ。」





私もバカだから、涙を流しながら下手な言葉を伝えるしかできなかった。

6/14/2025, 9:36:15 AM

8

 「うるさいわ、静かにしてて。」

「静かにしたらわたし死んじゃうよ」

やわこい髪が、わたしの心臓を押さえつけている。

「なんで鼓動が早くならないのよ、私と一緒にいるのに。」

「早くなったらダメなんだよ」

むすくれた顔でわたしを睨むきみが好き

「私のこと好きじゃないのね。」

「大好きだよ、ずっと伝えてきたじゃない」

諦めたように目を伏せるきみが好き

「でも私諦めないわ。あなたは私の事が大好きだもの、どうせ私の元へ帰ってくるのよ。」

「全部お見通しか」

下がった眉でも気丈に笑おうとするきみが好き

「私あなたのことずっと待ってるのよ。あなたのこと、ずっと、ずっと……」

「泣かないで、きみに泣かれると困っちゃうよ」

でも、わたしを想って泣くきみは見たくない

もう少し寝ていようと思ったのに、きみが泣いたら寝れないよ




「泣かないで。」

暫く動いてなかったから、がさついた唇で声が掠れちゃったけれど、きみは驚きながらも幸せそうに笑って私に涙に濡れた悪戯っ子のような笑顔を見せてくれた。



「ああ、ほら、だから言ったでしょ、あなたは結局私の元へ帰ってくるのよ。あなたのお父様やお母様が諦めたって、周りがいくら私を諦めようとさせたって、私はあなたを諦めなかったんだから。あなたの音をちゃんと毎日聴いていたんだから!」

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