狐コンコン(フィクション小説)

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 「うるさいわ、静かにしてて。」

「静かにしたらわたし死んじゃうよ」

やわこい髪が、わたしの心臓を押さえつけている。

「なんで鼓動が早くならないのよ、私と一緒にいるのに。」

「早くなったらダメなんだよ」

むすくれた顔でわたしを睨むきみが好き

「私のこと好きじゃないのね。」

「大好きだよ、ずっと伝えてきたじゃない」

諦めたように目を伏せるきみが好き

「でも私諦めないわ。あなたは私の事が大好きだもの、どうせ私の元へ帰ってくるのよ。」

「全部お見通しか」

下がった眉でも気丈に笑おうとするきみが好き

「私あなたのことずっと待ってるのよ。あなたのこと、ずっと、ずっと……」

「泣かないで、きみに泣かれると困っちゃうよ」

でも、わたしを想って泣くきみは見たくない

もう少し寝ていようと思ったのに、きみが泣いたら寝れないよ




「泣かないで。」

暫く動いてなかったから、がさついた唇で声が掠れちゃったけれど、きみは驚きながらも幸せそうに笑って私に涙に濡れた悪戯っ子のような笑顔を見せてくれた。



「ああ、ほら、だから言ったでしょ、あなたは結局私の元へ帰ってくるのよ。あなたのお父様やお母様が諦めたって、周りがいくら私を諦めようとさせたって、私はあなたを諦めなかったんだから。あなたの音をちゃんと毎日聴いていたんだから!」

6/14/2025, 9:36:15 AM