NoName

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3/21/2023, 2:25:00 PM

何時からだろう。隣に君がいることが当たり前になったのは。

独りが嫌いだった。
だから構ってもらいたくてわざとバカなこともしたし、人がいるところに押しかけもした。
それでも、どうしたって1人になる時はある。
それが、まさに今だったりするんだけどね。
大して広くもない部屋だけど、ポツンと独り取り残された感覚を覚えるには十分で。
それがどうしても嫌で、嫌で仕方なかった。

でも、それが我儘だってことも解ってた。

だって、ずっとずっと、人が怖かったから。

1人になるのは平気だった。でも、独りにされるのは怖かった。
1人でいることを望んだのは自分だから、独りになることはどうしても避けられないことなのに。
それでも、怖くて、寂しくて。部屋の隅っこで丸くなって、時間が過ぎるのを待ってることしかできなかった。

だけどーーー。

「ちょっ……灯りも着けないで何してんだ!!」

聞き慣れた君の声に、どれだけ救われたか。きっと君は知らないし、言うつもりもない。
理由を知ったら、きっと君は呆れた顔でため息を吐くだろうから。
ただ言えることは、その日以降独りぼっちになることはなくなった。

何時だって君が隣にいてくれる。
呆れたように、困ったように、戸惑ったように笑って、仕方ないなぁって言いたげに、隣にいてくれるんだ。
隣が温かいだけで、こんなにも安心できるなんて思わなかった。
きっと、君だからそう思えたのかも。君以外の人だったら、きっと安心なんてできなかった。

本当、1人を望んだ先に”二人ぼっち”の幸せが待っていたなんて、面白い皮肉があるもんだよね?



二人ぼっち

3/20/2023, 2:40:15 PM

「これは夢だよ? だから、何も気にしないで」

そう言って笑うアイツが、どうしても哀しくて。


いつからだったか。俺の世界に”昼”がなくなったのは。
不治の病と言えば、寿命が縮まるものを想像しがちだが、俺の場合はちょっと違った。
俺が患ったのは、”昼に起きていられない病”だった。

……いや、笑うのも解る。けどこれがかなーり厄介なんだよなぁ。
昼ってのは朝も含まれてるからな、日が昇ると同時に強制睡眠状態になるわけで。
日没と共に起きる虚しさは、何とも言えねぇしな。

そんな俺の心内を見透かしたかのように、アイツは起きる度に俺の側にいるようになった。
ニコニコと、何でもないように笑って、いつものごとくはしゃぎまくって。
俺に怒鳴られて、見た目にも解るくらいしょげて、仕方ねぇなって許すまでがセットで。

ーーーでもさ、解ってんだよ。

アイツが、俺に合わせてることも。
その為にろくに寝てないことも。

なのに、会う度に言うんだよな。

「”夢が醒める前に”話したかったから」ってさ。

本当、お人好しにも程があんだろーが。

ーーーま、そんなアイツを突き放せない俺が、一番情けねぇんだけどな。


夢が醒める前に

3/19/2023, 1:58:48 PM

例えて言うなら海の底。
光さえ届かない、深海のような淀みのなかに”オレ”は居た。

ふわふわと浮かぶ意識。
自由があるのかさえ解らない身体。
届くことのない声。

そんな、気が狂いそうになる世界が、”オレ”の全てだった。

だが、それは当然訪れた。

明瞭な意識。
思うがままに動く身体。
如何様にも変化する声。

……その時の高揚感は、今でも忘れられない。

「やっと、果たせる」

手始めに何をしよう? 思考があちこちに飛んで纏まらない。
それが逆に心地よくて仕方なかった。

ーーーだが、最初にすることは決まっている。

「まずは……肩慣らしだな」

これから起こる出来事に、思わず笑ったのも仕方ない。
こんなにも”胸が高鳴る”ことは、もう二度ないだろう。



胸が高鳴る

3/18/2023, 2:32:53 PM

きっと、どちらもそうだったのかもしれないな。

運命だとか、宿命だとか、本当はない方がいいのかもしれない。
そうは言っても、どうにも変えられないことが起きることはある。
それは俺でも回避することはできないし、あいつらは特にそうだろう。
誤解のないように言うが、あいつらが無能だとか、努力してないとかの話じゃない。
努力しようが何をしようが、どうにもならないことはどうしても起きる。

受け入れられるか、諦めるか、跑くのか。

どれを選んだところで、結果が必ずしも良いことで終わるとは限らない。

それが、”不条理”って奴なんだろう。

たまたま出先で怪我をして療養していたのも。
たまたま庇って奮起して、光を失ったのも。
たまたま豊潤で優れていたが為に目を付けられたのも。

本当にどうしようもないことだったんだろうとは、解ってる。

あいつらだって、解っちゃいるんだろう。

それでもを願う時点で、”不条理”に踊らされてるんだけどな。



不条理

3/17/2023, 2:55:23 PM

ずっと、守られてばかりだったから。
だから、守りたいって、思ったんだ。

ズキズキと痛む眼を、君に気づかれないようにそっと庇う。
もうずっと痛くて、煩わしくて仕方ないけど、こうなったことに後悔はしていないんだ。
だって、君がこうなってたら、もっと痛くて、辛かっただろうから。

でも、その辛さを君に味わわせることになるなんて思わなかった。
それだけが、唯一の後悔、かな。

そうでなくても、優しい君はきっと泣いているのかもしれない。
僕が、怪我をしてしまったことに。
僕から光を奪ってしまったことに。
弱虫な僕が、君を庇って奮起したことに。
ずっとずっと、後悔して、自分を責めているのかもしれないね。

ーーーだから、僕は”泣かないよ”。

痛くて、見えなくて、迷惑ばかりかけてるけど。
これは僕が選んだ結果だら、君のせいじゃないって伝えたくて。

痛む眼を君から隠して、今日も僕は笑うんだ。



泣かないよ

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