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「これは夢だよ? だから、何も気にしないで」

そう言って笑うアイツが、どうしても哀しくて。


いつからだったか。俺の世界に”昼”がなくなったのは。
不治の病と言えば、寿命が縮まるものを想像しがちだが、俺の場合はちょっと違った。
俺が患ったのは、”昼に起きていられない病”だった。

……いや、笑うのも解る。けどこれがかなーり厄介なんだよなぁ。
昼ってのは朝も含まれてるからな、日が昇ると同時に強制睡眠状態になるわけで。
日没と共に起きる虚しさは、何とも言えねぇしな。

そんな俺の心内を見透かしたかのように、アイツは起きる度に俺の側にいるようになった。
ニコニコと、何でもないように笑って、いつものごとくはしゃぎまくって。
俺に怒鳴られて、見た目にも解るくらいしょげて、仕方ねぇなって許すまでがセットで。

ーーーでもさ、解ってんだよ。

アイツが、俺に合わせてることも。
その為にろくに寝てないことも。

なのに、会う度に言うんだよな。

「”夢が醒める前に”話したかったから」ってさ。

本当、お人好しにも程があんだろーが。

ーーーま、そんなアイツを突き放せない俺が、一番情けねぇんだけどな。


夢が醒める前に

3/20/2023, 2:40:15 PM