さてと

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1/10/2026, 1:38:22 AM

平凡な日々になんとなく物足りなくて、隙間を感じる。風でもいいから隙間に吹いてほしい。心の余白を満たすようなハプニングが欲しい。こんな夜を寂しさと呼ぶのだろうか。この寂しさは何で埋まるのか。

ロマンチックのスイッチを探す。華やかな街、人で賑わう表通り、どうやらここにスイッチはない。映画のなか、本のなか、活字や画像でも心の穴は埋まらない。日常のどこを探しても、ロマンチックのスイッチが見つからないときがある。無駄のないデザイナーズマンションの室内灯のスイッチを見失なうように、気がつけば、血まなこでロマンチックを探してた。ムードのかけらもなく。

ベランダに気づかれした身体を預け、落ちるフリをしてみる。タバコをふかし夜空を見上げる。視界のなかには月がある。いつもの月だ。ロマンチックの安易なスイッチとして月が有効なことは知っていたけど、吉本新喜劇のようにお決まりのものでは満足できそうもないほど、穴は広がってる。

今夜は三日月だ。月が薄目を開けてる。ロマンチックを逃したセンチメンタルの行先はフテ寝だ。強い酒で睡眠をうながし、布団に転がり深夜テレビと添い寝する。
吉本新喜劇の再放送が流れた途端に、スイッチを探してることさえもう忘れていた。

#短編のようなもの

1/8/2026, 11:47:09 AM

色とりどりの何かを見ると目が喜ぶ。
目はいつも新しいものや美しいものを見たがってる。
ただし、色とりどりの何かを見ることはできても、自分の選べるものが、よりどりみどりなわけではない。
華やかで美しいものに憧れても手に取るものはたいがい色味の少ない単調なもの。価値観が追いついていないのか、欲が落ち着いてるのか、選ぶ前から自分のほしいものはだいたい決まっている気がする。
初めから美しいものをちゃんと愛でる自信がない。いちから育てないと、育みかたを知らず腐らせてしまう気がする。それよりは手に余るものだけで工夫して、自分で自分なりの美しさを生み出すことが好きなんだと思う。
少ない色味を組み合わせて作った自分の創作物は一見して、見映えはしないが、目を凝らしてみると、こまかいグラデーションとレイヤーが折り重なっている。その編み込んだ時間には、なんとも奥深くて感慨深いものがある。そうやって自分なりの方法で、自分なりの色々とりどりの何かを表現しながら、誰かの目に止まれば嬉しいことだし、何より豊かなことだと思う。

1/7/2026, 3:40:15 PM



都会で雪が降ると
「あ、雪、、。」と
あちらこちらから、小さな驚きの声が聞こえる。その声の成分には少しだけ嬉しさが含まれている。小さな喜びは人波に伝染し、都会に流れる忙しい時間を少しだけ止めてくれる。

空を見上げることが少ない都会の大人たちにとって、雪はタイムマシーンだ。
ちらつく雪に、しかめっ面はほぐされ、真顔は無邪気さを思い出し、大人たちは童心にかえることができる。雪が止むまでの束の間の時間だけ、タイムマシーンは自分が大人であることを忘れさせてくれる。
雪道で滑って転んだり、小さな雪だるまを作ったり、雪合戦をしたり、冷たい手を温めあったりする。

明日になって雪が溶けたら、なにもかもなかったかのような顔をしてるけど、夕べ転んだ傷がちゃんと痛いからタイムマシーンは夢じゃなかった。

1/7/2026, 9:27:42 AM

君と一緒にされたくなくて
君とは違う音楽を聞いて
君とは違う服装をして
君とは違う話し方をして
君とは違う人を好きになって
君とは違うサヨナラをして
君とは違う生き方をしてきた

君と一緒にされたくなくて
君とは違う街で暮らし
君とは違う仕事につき
君とは違う価値観を得て
君とは違う人生を歩んできた

それなのに君は僕と遠くならない
遠くならないどころか近づいている
いつのまにか君と僕は入れ替わって
一緒にされたくないのが僕の方になる



#詩のようなもの

1/6/2026, 5:40:15 AM

冬晴れ

冬の寒さが嫌いじゃないのは、冬の空が美しいことを知ってるから。空気だって澄んでて格別に美味い。鼻から息を吸い込んで口から吐いたときの湯気が楽しい。
こんな風に冬の寒さを楽しめるようになったのは、子どもの頃に父と2人で行った北海道旅行がきっかけだったように思う。

男2匹の旅行は会話が少ない分、景色に目が行く。視界すべてが雪化粧で、しかも厚塗り。白銀に支配された景色はどこか死の匂いがして、切なくて綺麗だった。もちろん、地元とは比べものにならないくらい寒かった。でも寒さより景色の美しさが優ってた。「寒い」って愚痴より「綺麗」って吐息をもらす回数のほうが多かったと思う。
北海道は寒さが名物だ。寒さがもたらす壮大な景色と、その景色と共に生きる動物や自然との触れ合いは、このうえない五感へのご馳走。そして、そのご馳走はここでしか味わえないもの。
夜明け前の摩周湖にいったり、雪の高原で乗馬したり、流氷ツアーのフェリーに乗せてもらった。旅行でたくさんの名物を堪能させてもらい、僕の心は満腹だったに違いない。

父と2人で行った静かな旅が、なぜか大人になった今も記憶のわりと手前の方に残ってる。あの綺麗な景色がすぐに取り出せるくらいの距離にある。
あの旅から、寒さは僕にとって嬉しい現象のひとつとなった。

冬晴れの日に、肺いっぱい空気を吸い込んだら、父との思い出が喜んでる気がする。

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