「夜の華」
大丈夫だよ。死ぬわけじゃあないさ。
ただ貴方に逢いたいと想うと声がピタリとでなくなる。それだけなんだぁ。
辛く幸せな夢をみた。
夜の空に浮かぶ華が私を見てと叫んでいる夢。
彼とみたどんな華よりも綺麗な花火。
今さらあの頃の夢を見せるのは私にとって酷な話だ。
生きて欲しい。私は確かにそう言った。
彼にただ生きていて欲しかったから。
私が命とは花火のように美しく散っていくものだと知ったのはきっと貴方のせい。
「死なないで欲しい。泣かないで欲しい。
生きていて欲しい。」
これは彼が私に言った言葉。
彼が私に残した最後の言葉。
私が愛した貴方の言葉。
私が愛した貴方のたった数秒でも、命よりも重たい
言葉。
おかしいでしょう。
私は守っているのに貴方は私の言葉を受け入れなかった。生きていて欲しかった。
愛してるよって照れ臭そうに言う貴方が大好きだったから。
好きだと想えたから。
でもね。私は今も生き続けているよ。
貴方がいないこの世界で生きていこうと必死に人生にしがみついている。
そして祈り続けるの。彼との約束を守れるように。
死にたいって思わないように。
まだ彼には会えないって逢いに逝っては行けないと
自分に言い聞かせるように。
大好きだぁ。堪らないほど愛しているの。
この気持ちだけは花火のようにすぐに消えていったりはしない。そう、願っているから。
「ふたり」
僕の親友にとって僕はきっとただのお友達。
僕の親友は女の子。
気が強くて僕をいつもいじめっ子から守ってくれていたな。
異性との友情はうまく行かない。とはよく言うけど
それはきっと人による。
親友から見た僕はきっと友達。
でもね、僕からみたあの娘はきっと特別だった。
友達とかそういうのではなくて目をあわせると胸が痛くなる。そんな気持ち。
小さい頃からずっと一緒でいわゆる幼馴染みだった。
何をするにもいつも一緒。昔はいろんな人に将来は
良い夫婦になる。とか色々言われてたっけ。
でもそれも昔の話。
今は君はたくさんの友達ができて、机に手紙が入っていることもあって。
ふたりで遊ぶこともなくなった。
会いたいと言ってすぐにあえるほど暇じゃなくなった
「一緒に帰ろう」
って僕が勇気を出して言っても君はふざけるように
「はいはい。また今度ね」
と言うようになった。
友達と教室を出る君の姿を眺める度に心に少しずつ
穴が広がっていく。そんな気がする。
行かないで。って呼び止めることも出来ない僕には
きっと勇気がない。
そんな僕を君はきっと見てくれない。
「好き」
そんな一言なのに君に言えない僕がいる。
「付き合って」
それだけなのにその一言は僕の心を締め付ける。
もし断られてもきっと「ごめん」だけ。
なのに僕はきっと怖がっている。
あぁ。今日も貴方は僕をおいていく。
僕はきっと貴方の唯一にはなれない。
「見知らぬ街」
この曲がり角で貴方に会えたなら。
見知らぬ街で目を覚ました。
ここはどこなのだろうか。
空は青く広い。
自分を縛るものはひとつもなく。
ただ自由な街が広がっている。
(この街に貴方がいたなら)
頭のなかで広がった思考。
私はなにも分からない。
「貴方」が誰なのか分からない。
でも会いたく思う。
(この世界ならまだ。)
こんな考えが広がる。
この世界ならまだ。何がだろうか。
(貴方はまだ。)
だから何なのだろうか。
貴方はだれ?
誰か分からない「貴方」をなぜか無意識に探してしまう
チラッと何かが横目に写ったような気がする。
そう思った頃にはもう走り出していた。
きっとこの曲がり角に彼はいる。
そう思った。
ようやく曲がり角を曲がった。
だれもいなかった。
なんで?確かにいた。そんな気がするのに。
なんだろう。
目が痛い。鼻もツーンとする。
目があつい。
なんで涙が零れてきたんだろう。
なんで?
彼はもしかしていないのかもしれない。
どんな人かもしらないがそれだけはなんとなく分かってしまう。
ここにいないなら何処にいるというの。
早く彼に会いたい。
走って走って探した。
私は足がもつれて転んでしまった。
痛い。そう思うはずなのに痛いと思わなかった。
なんでだろう。もしかして私はいま夢を見ているのかもしれない。
突然頭がいたくなった。
キーンとして何かが思い出せそうな気がした。
でも私はそこで意識を失った。
次私が目を覚ましたのは懐かしい香りのする布団のなか。
全て思い出した。
彼は、「貴方」はもうこの世界にはいないんだった。
先に逝ってしまったのだった。
私の目から涙が零れてもこの世界が終わることはきっとない。歩き続けるしか無いのだろう。
「遠雷」
何年目かの一人暮らし。
雷が近くで聞こえる。
きっと家の真上でなっているんだろう。
家の電気をなるべく消して。
スマホの明かりをつける。
ここまでしなくてもいいのかもしれない。
けれど節約にはなるだろう。
スマホと水道水を入れたコップをもって寝室に行く。
布団にくるまりスマホをいじりだす。
天気予報をみてあとどのくらいで雨がやむのか調べる
まだまだやみそうにない。
今日は雨の音がうるさくて眠れないだろうか。
それとも雨の音が心地よくてよく眠れるだろうか。
こうしていると昔のことを思い出す。
昔は姉と弟と布団に入って怖がる弟をなだめながら
光ってから音がなるまでの時間を数えていたっけ。
消えつつも私の大切な思い出。
こうして生きていくと雷が鳴る夜だってたくさん経験していくんだろう。
いつかは電気をつけたままにできるほど強くなれるのだろうか。
誰かと乗り越える雷があるのだろうか。
雷が遠退くようにいつかは思い出もなくなるかもしれない。
けれどまた雷のように何度も蘇ってくるんだろうな。
だから今日もただ雷が過ぎていくのを待つ。
「舞う」
高く。高く。高く舞え。
美しく。一瞬でも一瞬で誰かを虜にしろ。
誰かに一瞬でも愛されていたい。
まだ難しい言葉を話せなかった幼い頃。
親に売られた。簡単に言うと奴隷。
難しく言うと「炎の踊り子」になった。
この世界では日常であるほど普通の行事。
「炎の踊り子」とは奴隷である踊り子が一夜だけ踊り狂う。炎のなか痛みに耐え夜を舞う。
一夜過ぎると血だらけ火傷だらけで息を引き取る。
そんな可笑しな行事。
今までの人生はこの行事のためにずっと
「美しい」をつくっていた。
衣装から顔体言葉まで。
人に美しいを与えるために生きてきた。
おかしいだろう。
でもこれがこの世界の普通だから。
私は他に比べると特別だった。
美しいと言われる黒髪に極端に美しい容姿。
このおかげで踊り子になるための学びの時間が少しでも少なくなった。他の子は私と比べられてよく怒鳴られていたな。そのせいで私は他の子に殴られたんだっけ。私を殴った子は「美しい」行動を失ったこと。美しいを貶したことを罰せられて引きずり回されて息を引き取ったんだった。
でも幸せだったかもね。炎の踊り子になる前に死ねたんだから。
もしもこの黒髪や美しい容姿がなかったら。
売られていなかったら。
私は今頃友達と遊んでいるかもしれない。
誰かに愛されていたかもしれない。
今月の満月の夜が来た。
今夜が過ぎ、朝になると私はもうこの世界にいないだろう。仕方がないことだけど悔しく思う。
さぁ身支度をしましょう。
髪は束ねず自由にしてあげましょう。
美しい衣装に身を包み。
軽く口紅を塗りましょう。
笑え。笑え。ずっと笑い続けなさい。
最後に刺のある美しい腕輪と首輪をつけて。
美しい血を流しましょ。
愛を語れないならば最後に私を美しいと思わせてやりましょ。
踊る。舞う。痛みに耐え夜を舞う。
涙が零れても隠せ。下唇を噛み締めて、笑ってやれ。
誰かが私に言った。
「貴方は月のように美しい」
当たり前でしょう。
でも少し嬉しい。本当に私を美しいと思うのならば
私を救い出して欲しい。
そんなくだらない考えをなくすように私はさっきよりも強く、強く下唇を噛み締めた。
「そうでしょう」
私はそういうことしか出来ない。
あぁ今夜の間だけでも私に死んで欲しくないと想ってくれる方がいますように。
私を愛してくれる人が1人でもいますように。
あぁきっと私は他の子と同じただの少女なんだろうな
これは愛して欲しい少女が見たひとつの夜のお話。
「舞う」