なめくじ

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5/28/2024, 9:40:25 AM

どうやら人間は、天国と地獄を履き違えているらしい。



医師と呼ばれる人間の真似事をしていたら、
何時しか患者からは、

「神様」「仏様」

なんて呼ばれるようになってしまった。

この世は生き地獄なんだ。
この世から解放される方法は、死のみ。
死は、平等に。そして、無慈悲に訪れるもの。
全ては、死神様の導きのまま。



延命治療を続けた患者を診る。
死神様はこちらをひと睨みし、
何をするでもなく消え去った。これで三回目。

人間が死ぬには、死神様の許可がいるらしい。
自殺にも、他殺にも、事故死にも、病死にも。
何時でも傍に死神様が居て、魂を天国へ導く。
この世は天国へ行くための、いわば贖罪の場。
赦されるまで死ぬ権利すら存在しない。
そして僕は、そんな死神様に背くもの。
人間の言う、悪魔とやらだ。

死神様の定めた寿命を無理やり延ばし、
安楽死や尊厳死と謳って魂を貪る。
予定通りに死ななかった魂や、
悪魔に喰われた魂は、天国には逝けない。

患者と縁のある人間は皆、

「貴方のお陰で安らかに逝けたことでしょう。」

なんて、泣き笑いして言うんだ。

神だ仏だなんて、お門違いにも程がある。
感謝だなんて、腹を抱えて笑ってしまうよ。
罪を必要以上に償い、無駄に苦しむなんて。
その結果が地獄行きの片道切符とは、
思わず同情してしまうよ。全く人間は面白い。
悪魔と神の見分けも付けられぬ愚かな生き物だ。
挙句には神の意思に背き、悪魔の手を取るなんて。



本当に、天国を知った人間の反応が見てみたいね。

5/25/2024, 12:32:11 PM

降り止まない雨は、唯一私を慰めてくれる。
降っている間は泣いていいのだと。
雨が止むまで、泣き止まなくていいのだと。
私の涙を否定しないでいてくれるから。
私の弱さを包み込んでいてくれるから。

雨が私の涙と混ざり落ちる。
雨音が私の嗚咽を掻き消す。
雨雫が熱を孕んだ瞼を冷やす。

もう少し、このままで居たいから。
まだ、傷付いたこの心が痛いから。

どうか雨よ、まだ止まないで。
私の心が晴れるまで、どうか降り続けていて。

そうすればきっと、虹をこの目で見れるはずだから。

5/25/2024, 4:15:23 AM

あの頃の私へ。
よくものうのうと生きてくれたな。
おかげでここまで生き長らえてしまったよ。
何処までも自分を憎み、他人を羨んでいた。
そんなお前の行き過ぎた自己嫌悪が、
結局自己愛の裏返しだと気付いた時は、
どれほどお前を殺したいと思ったか。

想像できるだろう?
だって、お前は私に過ぎないのだから。
私が愛してやまない、殺したいほどに愛おしい、
私自身なのだから。

こんな風に育ってしまうとは、
お前も予想していなかっただろうよ。
お前があの時、自殺を一瞬でも考えた時、
勇気を出していればこんな未来は歩まなかったのだ。

一生をかけて呪ってやろう。
一縷の感謝と遥かな愛憎をお前に送る。
一生をかけて償うといいさ。
二度と自殺なんて考えられないほどに。

最後に、最大の敬意を払ってやろう。
よくぞ、この馬鹿げた素晴らしい生から逃げなかった。

5/22/2024, 2:25:04 PM

特に理由は無いけど、否。
ありすぎて何が理由か分からないんだけど。
そんなんだから、毎日を生きるのが苦痛で。
眠りにつく度に、二度と目が覚めなければと願う。
朝日を睨み付けては、退屈な日々を繰り返す。
何度死んでやろうかと思ったことか。

何の変哲もない日、突然君が僕の日常に現れた。
転校生。漫画でしか聞いた事のない話だ。
クラスメイトなんて沢山いるのに、
わざわざ僕に話しかけてくるんだ。

やめて欲しかった。
僕は人と関わるのが苦手だし、
君みたいに押しが強い人は嫌いなんだ。
でも、いくら突っぱねたって懲りなかった。
怖かった。思わず体が震えてしまった。

心を開いてしまいそうで、怖かった。

いつ死んでもいいと、
今すぐ死んでしまいたいと思っていたのに。
君と親しくなってしまったら、
死を恐れてしまいそうで、すごく怖かった。



クラスメイトに物を取られ、
先生からはわかりやすい無視。
毎日飽きもせず良くやってくれるけれど、
一日が終わる前に必ず君が僕の前に現れる。

「また明日」

君が笑ってそう言うから、僕は明日を生きてしまう。
夜が更けるのを眺め、朝日が昇るのを待ってしまう。
これは呪いだ。暖かくて、残酷なほどに優しい呪い。

君の優しさに、今日の僕は救われる。
明日の僕は、また苦しむのだろうか。

5/14/2024, 10:29:15 AM

行きたくもない教室に収容され、
楽しくない勉学を強要される。
好きでない制服を身に纏い、
表面上の付き合いを要求される。

生まれてからずっと雁字搦めにされている。
自由だった事はあっただろうか。
今だって、生きる事を親に強制されている。
心から生きたいと、一度でも思っただろうか。

外に出ると、冷たい風が頬を撫でる。
誰もいないビルの屋上は、僕を孤独にしてくれた。
命令してくる者が居なくなったような錯覚。
今なら何でも出来るような、そんな気がする。

超えることを禁じられているフェンスを跨ぎ、
片足を宙に投げ出してみる。

初めての感覚。僕は今満たされている。
自分の意思が許されたような、
解放されたような感覚。
ただ、嬉しかった。涙が出てきた。

手をフェンスから離し、全身で風を感じる。
これが幸せ。知れてよかった。

風に身をまかせ、足を前に出した。
暖かな空気が僕を優しく包み込んだ。

僕は今、やっと自由になれた。

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