なめくじ

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1/12/2025, 7:48:29 PM

目を合わせて笑い合うような、
手を繋いで恥ずかしがるような、
柔らかいところに触れて愛おしくなるような、
夢見心地を今でも忘れられなくて。

純粋に恋を愛していたあの頃に戻りたくて。
それ以上の快感を知り、戻るに戻れなくて。

いつものやけ酒に付き合ってくれた名前も知らぬ男。
潤む視界が、男の顔を鮮明に映してくれない。
ただ優しく宥める声に、包み込むような手の温もりに、
忘れかけていた恋の味を思い出せた気がした。

あの夢のつづきを、貴方なら見せてくれるかしら。
熱を孕んだ頬は酒のせいにして、男の手を引いた。

11/29/2024, 6:46:48 PM

冷たい風が開いた首元を撫でる。
思わず身震いをして、肩を竦めた。

感覚のない指先が、貴方の体温を求めている。
寒空の下に晒された頬は、貴方を想うと熱を孕む。
悴んだ足は、今にも貴方の元へ走り出しそうで。
白い息を吐き、貴方の名前を呼んだ。

寒さを理由に、貴方の熱で温めてもらうの。
冬のはじまりは、貴方の胸の中で迎えたい。

11/28/2024, 4:06:06 PM

気付かなかったの。
この気持ちが恋なんだって。
だって、こんなこと教わらなかった。

胸がドキドキするとか、
貴方が輝いて見えるとか、
貴方の事をずっと考えてしまうとか、
そんなものじゃなかったから、気付けなかった。

貴方の好きなところなんて答えられないし、
悪い所なんていくらでも言えてしまうけど。

夢に貴方が出てきた時に、
隣に貴方を求めてしまった時に、
わかってしまったの。貴方を好いていると。

貴方じゃなきゃ駄目な理由は出てこないけど、
それでも貴方がいいと思えたから。

これを恋と呼ばないのなら、私はきっと人を愛せない。



さりげなく貴方の手に触れる。
夢では感じなかった温もりが、ただ嬉しくて。

お願い。この時間を終わらせないで。
まだ、この恋心を冷ましたくないの。

11/6/2024, 6:11:05 PM

ついてない、そう思った。

大したことも無い、ごく普通の日常。
それでも少し、疲れていた。
今日の朝は少し余裕がなくて、
天気予報を見落としていたんだ。



何時も、折り畳み傘持ってたのにな。
今日に限って、忘れてしまったよ。
嫌な予感はしていたんだ。
黒く分厚い雲が近づいて来たから。

ぽつぽつと、肩に雨粒が落ちる。
静かに染み込んで、体を冷やした。

周りが傘を差していく。
言い知れぬ疎外感に、身を震わせた。

柔らかい雨が頭を、輪郭を撫でる。
それは母の手つきを彷彿とさせるもので。

最後に頭を撫でてもらったのは、いつだっただろうか。

嫌いなものを残さずに食べられた時。
母の手伝いをした時。
テストで良い点を取った時。

温かくて大きな手に、頭をこねくり回されたものだ。

そして今、日頃の苦労を労わって貰えたようで。
尚も体は寒さで震えているが、
胸の奥がじんわりと熱を孕んだ。

たまには、傘を忘れるのも悪くないかもな。
眩しく、暖かく、そして当たり前だった過去に耽った。

11/4/2024, 5:39:42 PM

哀愁を誘う君の横顔は、知らない人のようで。
思わず手を伸ばした。
肘を伸ばさずとも手が届く距離だというのに、
酷い焦燥感を覚えた。

冷えきった君の頬は、人間じゃないみたいで。
反射的に両手で挟んでしまった。
僕の手も冷たいから、温められやしないのに。
触れられることに安堵したんだ。

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