どうやら人間は、天国と地獄を履き違えているらしい。
医師と呼ばれる人間の真似事をしていたら、
何時しか患者からは、
「神様」「仏様」
なんて呼ばれるようになってしまった。
この世は生き地獄なんだ。
この世から解放される方法は、死のみ。
死は、平等に。そして、無慈悲に訪れるもの。
全ては、死神様の導きのまま。
延命治療を続けた患者を診る。
死神様はこちらをひと睨みし、
何をするでもなく消え去った。これで三回目。
人間が死ぬには、死神様の許可がいるらしい。
自殺にも、他殺にも、事故死にも、病死にも。
何時でも傍に死神様が居て、魂を天国へ導く。
この世は天国へ行くための、いわば贖罪の場。
赦されるまで死ぬ権利すら存在しない。
そして僕は、そんな死神様に背くもの。
人間の言う、悪魔とやらだ。
死神様の定めた寿命を無理やり延ばし、
安楽死や尊厳死と謳って魂を貪る。
予定通りに死ななかった魂や、
悪魔に喰われた魂は、天国には逝けない。
患者と縁のある人間は皆、
「貴方のお陰で安らかに逝けたことでしょう。」
なんて、泣き笑いして言うんだ。
神だ仏だなんて、お門違いにも程がある。
感謝だなんて、腹を抱えて笑ってしまうよ。
罪を必要以上に償い、無駄に苦しむなんて。
その結果が地獄行きの片道切符とは、
思わず同情してしまうよ。全く人間は面白い。
悪魔と神の見分けも付けられぬ愚かな生き物だ。
挙句には神の意思に背き、悪魔の手を取るなんて。
本当に、天国を知った人間の反応が見てみたいね。
5/28/2024, 9:40:25 AM