スランプななめくじ

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1/20/2024, 5:28:12 PM

消えてくれ

貴方が私に言った、最初で最後の言葉。
何度も貴方に会いに行ったのに、
毎日貴方だけを見ていたのに、
私の愛は、届いていなかった。

貴方の家で毎日晩御飯を作っていたのは私なのに。
貴方に視線を送る邪魔な女は私が追い払ったのに。
貴方はその女の手を取って、私の手を振り払った。

認めて貰えない愛は、持っていたって意味が無い。
愛されない私は、生きていたって邪魔なだけよね。

だけど確かに私は貴方を愛していて、愛されたかった。
どうかそれだけは、覚えていて欲しいの。



雪の降る暗い夜の中、独り海を目指す。
貴方に初めて出会った場所。貴方を好きになった場所。
この海に二人で身を流すのが夢だったのだけど、
貴方の願いはこれでは無いのでしょう。
貴方の幸せを望んでいるの、壊す事など出来やしない。
私の事を嫌いになってもいいわ。恨んだっていい。
だから、絶対に忘れないで。最期のお願いよ。

海の底へと沈んでいく。貴方への愛を握りしめて。

1/19/2024, 2:30:04 PM

君に会いたくて、唇に紅を引いてみる。
明るくなった自分の顔、少しは君に釣り合うかな。
小さく聞こえた褒め言葉が、私の耳を赤く染めた。

君に会いたくて、赤い腕輪を付けて行く。
君から貰った初めての贈り物。
自分で言うのもなんだけど、私にとっても似合ってる。

君に会いたくて、赤い靴を履いてみる。
ヒールが高くて何度も転びそうになっちゃったけど、
君はその度に微笑んで、私を支えてくれた。

君に会いたくて、首に赤い線を引いた。
何も言わずに逝ってしまったから、
お洒落をする余裕が無かったの。これで許してね。

1/18/2024, 11:24:45 AM

病弱な彼女の趣味は、日記をつけるというものだった。
ごく在り来りなその趣味だったが、
彼女はその趣味に没頭していた。

何処へ行くにも、何をするにも日記と一緒。
食べたものの味から行ったところの景色まで、
全て文字だけで表す。写真や絵はひとつもなかった。
その日見た夢から考えていた事まで、
ひとつも零さずに書き記す。
記録と呼ぶには細すぎるものだった。

彼女はこの趣味を誰にも話さなかった。
常に持ち歩いているというのに、
絶対に人前では開かない。書く時も然り。

鍵をかけられ、誰にも見られなかった彼女の記憶は、
彼女がこの世から旅立った後に見つかった。
症状が少しづつ確実に悪化していく生々しい表現。
何度も死を想像し、その度に固めたであろう覚悟。
彼女を知らない人でも容易に理解出来てしまうそれは、
まさに彼女の記憶であり、彼女の一日一日だった。



彼女の日記に死に様は書かれていない。

再び閉ざされた日記の中で、彼女は生き続けている。

1/17/2024, 1:00:55 PM

「もう、終わりにしようか。」

目を合わせずに告げられた言葉が腹の底を冷やす。
分かっていた。いつか振られるのだろうと。
段々と合わなくなっていく視線。
理由をつけては断られたデート。
繋がらなくなった電話とメール。
彼からの言葉は、何時からか温もりを失っていた。

この言葉に答えたら、私達は二度と会えない。
そう考えると、このまま時を止めてしまいたくなった。
木枯らしが私たちの間を走り抜ける。
いつの間に離れていたのだろう。
かつて力強く握られていた左手は、
今も貴方の温度を求めているのに。

1/16/2024, 4:34:32 PM

君の心は美しい。
誰であろうと手を差し伸べ、親身に寄り添う。
僕も君に救われた内の一人だった。
でも僕は君の横には立てない。
あまりに綺麗な心だから、
僕がより穢れているように思えてしまうんだ。

君の瞳は美しい。
何があろうと眩く輝き、道を照らしてくれる。
僕も君に照らされた内の一人だった。
でも僕はその瞳を避けてしまう。
あまりに輝くものだから、
それに映る僕がひどく醜く見えてしまうんだ。

君の美しさに救われた僕は、
君の美しさで傷付いている。

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