六月の帰路

Open App
11/15/2022, 3:51:23 PM

指先が異世界を感じた そこはどこかの小さな隧道
子猫が先を知らないまま
ただ眠っている 真っ暗の中にいる
黒猫だけが僕の幸せを願って

涙が何色か分からないまま 子猫の温もりに
夜の色の温もりに トンネルの冷たさに
全てに触れていたけれど 全て透明になる息だった
心みたいな 葉じゃ表せないほどに

あそびたい、ブランコに乗っていた月明かりが
雲から顔を出しても 出さなくても めをつぶって
流れ星が 冷たくてアスファルトが少し濡れた
心拍とよく似る 水道管に水が流れる音
冬であればよかったかな

どうしてまた黒猫は 僕のことを抱きしめて
どうしてなのか 黄色い月が僕を見つめる
夜が囁いて 僕に初めて色をくれた

案山子の腕が鳴る
猫の目のように 僕はまた堕ちゆくだけの
冬になったのだろうか

11/12/2022, 4:14:15 PM


時計の針を動かしていたのは君で、骨が浮き出た長い手で時計の口角を上げていた。
結局君は口がおかしくなるまで目を覚まさず、ずうと僕の2段ベッドの上にいた。暑くなってうるさい扇風機を強に設定しても、君は起きることなく横たわっている。
今日はこんなに蝉が鳴いてるのに、君はずうと髪が斑のままだ。
今朝、僕は彼女の目覚ましを10時止め、うるさく喚いた。カーテンからの日差しはない。ただ真っ暗闇の、夜か昼かも分からない四角形の個室にいる。
僕はカーテンを開ける気にもなれなかったが、蝉の声が聞こえてきた時、鳥のさえずり聞こえてきた時、
誰かに呼ばれているような気がしてカーテンを開けた。ただ眩しい血が通うような日差しは僕を憂鬱にさせるばかりだった。
カーテンを閉め、また僕は上を見る。
そういえば昨日の目覚ましは10時にセットしていたんだったな。彼女は毎日起きもしないのに目覚ましを適当に決める。朝食も昼食も食べない、ただの屍のようだとはこの事なんだろうか。

11/11/2022, 3:02:59 PM

昔行った公園 どこかに置いてきた自転車の鍵
遊具のてっぺんから堕ちる夢を見た
夏の唯一の冬が、また私の目の前に現れた。
いつも君が、夕暮れのチャイムで思い出させる
あの頃のひぐらしが 一つの全て
君が死んだ時、一緒に死んでいればいい

また夏の逃避行を夢見ていた
季節が移り変わるなんて嘘だった。
離れていった冬 私を繋げていたはず
結局どこも同じ場所 冷たい涙が梅雨みたいだった。
花が戦争に 青い鳥がアンパンを咥えてたんだ
主語がない本を読んで完結してしまうんだ
命は僕に嘘をついて、そのまま死んじゃって
正直にはならないままで散っていく
夏休みになった頃の思い出は お墓参りの草木が繁る時
命は残らない もう居ない 誰も彼もまた居なくなる
背中に咲いた曼珠沙華が慌ただしくて
命が消えて芽吹くのは 全部、
夏のせいだった

手を包むと暖かいのに
風は透明に消えていく 木漏れ日が差し込むカーテンに
白い花が写っているのを見るのが好きだった。
いつかの朝焼けを 誰も覚えてない事をただ
手に包んで消してしまった最後に
暖かい布団に包まれて、ブランコに揺られている気分でいる また戻って、進んで、 戻って、進んで また、戻って 。
あの時みたいに上手くいかないこと なんで冬は
何も教えてくれないのか 目を瞑って
分からないフリしてた 分からないのに
分からなかったままで 心拍はスっと完結するだけ。



11/10/2022, 2:32:10 PM

視界から消える前に食べてしまえ 小さな愛を食べ尽くして 満足しただけだったよ
口が解けたあなた 道が溶けて
小さな赤い涙のうちに 酔生夢死が見えてた

体温をうまく、感じられていた事が思い出してた
小さな喇叭 嘘をついてたけど 君さアネモネだから
あなたの身体 赤い花を咲かせて 咲って お願いだから
君が二人いた 出会ってもなかった 咲いてもなかった
ただ伝わらないあなた 静かに泣いて どうしたの?

映画を最初から あなた笑ってたそんな時
全て崩れてた事
胸が騒いで 明くる日の事意味わからなくて
熱が頭に 私が熱に 水たまりに それが全て映し出されたみたいに もう終わりだって 教えてくれたのに
あれは虚言だ。 あれは妄言で、あなたは虚像かな
浅い川に流れたままで 拾われる事を願わなかっただけ

11/5/2022, 4:34:41 PM

窓に差し込む何かは多分誰かの幸せになって
私はゆらゆらと二段ベッドの一段目
飛べないままでそのままで月まで見よう
目をつぶっても何色かは多分夢の中で分かるね
それまでブランコに乗って 考えるのをやめるまで

去年の冬は多分 ストーブの影で眠ってた
その時だけ 雪になって溶けていた 何にも染まらないで
ただの人生の果て 降り落ちたのは間違いだったかなあ

夢の中は最悪だ 現実では無いから
少ない夢で それだけの世界で 幸せを分け与えよう
たくさんの雲をみんなで食べたい それは夢だった

夢が夢であり 私は烏になって そんな夢
甘い砂糖菓子の箱に お茶を添えた
正反対の答えを 知らないフリをした
うさぎが鳴いた これは夢だと気づいてた

でもそれは夢ではなくて 眼を開けていた
初めて知ったことだった 鮮明に覚えてた
それもまた夢であった


Next