かぶが踊っている
何故かは知らん、しかし、踊っている
看板がこれ見よがしにと立ててある、ふむふむ
【ある意味大・大・大特価セール‼️人類史に類を見ない程のかぶの不作‼️よってお値段大幅アップ‼️なんと通常の…】
なるほど、なるほど
つまるところのとどのつまり、このかぶ達は、
自分達の価格が上がる=自分達の価値も上がる、と喜んでいたのか
そう考えると、なんでかこちらも嬉しく思えてきてしまった
供給が減り一般庶民のちゃぶ台からは引き剥がされていく一方だというのに
あ、かぶが舞い始めた
なんか凄い、どっかの民族に代々受け継がれていそうなタイプの舞だ
かぶにも民族とかってあるんだろうか
まぁいい、今はよそう
取り敢えず、踊ろう
思考も常識もthrow away
今宵はそう、踊り明かせよparty night
本日やっと、待ちに待ってたぜspecial day───
《後書き》
僕にとっての、special?
そうですね……やはり、なんと言っても
───『かぶ』、ですかね
背に二日月を携えて
防犯灯から闇へと跨ぐ
まるでトンネルのように窮屈で、草原のように広々してる
木の遮った光を泳ぐ
悪夢の如く、平衡感覚を殴打され続けている
ざわざわと覆い被さったそれらは、大地の全てを震撼させんとするようで
心がぐらつく
足が沈んでく、なのに歩いてる
地に足つけて飛んでるみたいに
終わりを告げる電柱は、もう数歩先にあるといっていたのに
丸切り、近づけた気がしない
揺れる木陰に押し潰される
焦燥と晏然から目を背く、必死に、ただ必死に
もう少し、もう少しと手を伸ばしている
しかし、その先は
気づけば、花弁を掴んでいた
ふと、目を逸らしていた
その八重桜の前で、自身の影がそこにいる
手には何も無かった
ずっとずっと、歩き続ける
何千里だか何万里だか知る由も無いが、それでも歩く
君を背負ってるから
止まってしまったら、君の全てをも終わりにさせてしまうから
ねぇ、君はさよく言ってたよね
大丈夫だって何度も何度も
笑えちゃうくらい空っぽな笑顔で、見てるこっちが居た堪れなくなっちゃって
ねぇ僕言ったよね
一緒に歩こうってさ、言ったよね
あの日日が沈む頃の堤防で、しかと指を切ったよねなのにさなんでねぇなんで
僕ずっと君の傍に居ているよ
だのに、君だけが傍に居ないのは
ねぇ苦しいよ、生き苦しいよ
ほんとはさぁ哭きたいよ、哭いていたいよけれどもだって、
そしたら君は、泣いちゃうでしょう
ははは最悪、最悪最悪最悪だ
度し難いにも程度があるでしょ本当君って
ずり落ちている君を背負い直す
夜も朝も、ここでは寝てる
今この世界には、僕らしかいない
僕らには、僕らしかいない
だから、もう、全部投げ出そう、二人で
地平の果てを探しに行こう
もう二度と、君の錆を直視せずとも済むように
ずっとずっとの逃避行
ただ退廃的な程に、二人だけの。
差し込む白昼の匂いがした
こういう日は何故だか、鬼灯を思い起こされる
何かを訴えるように、暗闇の中
それはずっと佇んでいる
幼い頃から、ずっと、ずっと
でも、手を伸ばすことはしないんだ
知っているから、無要だと
君は伽藍とした儘、
そこに居てくれるだけでそれでいいから
そのままずっと蝕んでてよ
この空洞を、心臓みたいに瞬きながら
仄暗い部屋に埃が煌めく
滝のような晴天が、素知らぬ顔で通り過ぎてく
そうだったな
一人ずっと、取り残されていたね
夏だなぁ
後ろの正面、玄関口で、誰かが憂う
ね。眠るにはまだ早いからさ、
少し話を聞いてくれはしないだろうか
とは言え、結局君には届かず終いだろうけれど
あのね、君と居れたこと会えたこと、
心の底の底から喜ばしく思っていたんだよ
ずっとずっと笑っていられた、
無理に押し込めないでいられたんだよいつだって
だからね、そんな君に
ありがとうってさよならしてみたかったんだ
ありがとう、中途半端にいてくれて
ありがとう、落とした鍵を見るだけに留めていてくれて
ありがとう、この悪意を信じてくれて
ありがとう、「隠された真実」を疑わないでいてくれて
君がそのままであってくれたから、こうして夜明けを迎えれたんだよ
小さな輪っかに紐通す
期待に添えなくてごめんね
知ってたんだ、縄の結び方
ね。頼みがあるんだ
聞き入れてはくれないだろうか、後生だから
願わくば、別れの言葉を告げないで欲しい
こっちもそうするからさ、金輪際何一つを落としたりはしないから
そうしたらばきっと君に、深く深く遺せる気がした
汗ばむようにこびり付くみたいな
淡くて苦い絶望を
ごめんね、こんな最低な幕引きで
でもこれが、望めた最高だったんだ
一緒に、なんて、高望みは出来ないから
代わりに
その瑕を、君の未来まで連れてってよ