《heart to heart》 ※ゾンビギャグ※
今日のお題はheart to heart、腹を割って話す、みたいな感じか。
腹割るというか、もう腹の肉なくて骨見えてんだよね、俺っちゾンビだから。
腹を割って話すために隣のゾンビの墓を叩いて隣人ゾンビを起こす。
「おい、なんか腹割って話そうぜ!」
隣人ゾンビが土の中から、のそのそと這い出てくる。
『特になんもないけど、強いて言うならお前の腐敗臭がきつい』
「はぁ!?それ俺じゃなくて、お前の左隣の墓のやつじゃないの!?」
「ていうか、すでに鼻腐って取れてんのになんで臭うんだよ!」
隣人ゾンビは自分の鼻を触りながら、『あ、ほんとだ』と宣う。
『ごめんよ、気のせいだったかも〜』
俺は隣人ゾンビに腹を割った話という名の愚痴を話す事にした。
「そもそもゾンビって娯楽がなさすぎるんだよなー、人間驚かすしかする事ないって、つまらなすぎる」
『あ、いい事思いついた!』
隣人ゾンビが指をパチっとならそうとしたが、腐った肉が崩れたようなズルッというようなグチャっというような音がしただけだった。
『おいら達の体にウジついてるじゃん、そいつらでオセロでもしよーよ』
「いや、そもそも動くし黒はどうすんだよ!」
『蟻とか、、』
「そっちも動く!あと小さすぎる!」
隣人ゾンビに呆れる俺。
『健康的に走ってみる?』
隣人ゾンビが落ちかけている目を眼窩にはめながら言う。
「いやいやいや、俺たち遅いじゃん、映画とかだと動きめちゃくちゃ早いゾンビとかいるけど、俺たち昔ながらのノロノロと動くゾンビじゃん、しかもゾンビが健康とか意味わからん」
俺は隣人ゾンビにツッコミをいれる。
「あー、もうそろそろ朝かぁ、、またな、おやすみー」
『うん、おやすみー』
ゾンビの世界は今日も平和だ。
《やさしくしないで》
俺はケイスケ、彼女もいなく暇を持て余している大学生だ。
休日にブラブラと街を歩いていたところ、パッケージの絵が好みの恋愛シュミレーションゲームを見つけた。
中古で安かったので購入し、帰宅後すぐにゲームを起動してみた。
ゲーム直後は操作や内容の説明が主だ。
「ふーん、なになに?彼女候補の女の子は3人か」
一人暮らしを始めた時に購入したミニ冷蔵庫から冷えたコーラを出し、飲みながらゲームを進める。
ふんふん、1人目は同じクラスのクラス委員長、名前はカナデ、黒髪にメガネをかけていて知的な感じだ。顔立ちは美人と可愛いの中間といった感じ。
「なかなか可愛い感じ!いいんじゃないの、メガネ女子好きだわ」
俺は誰もいない部屋で思うがまま独り言を言う、いいよね、どれだけ独り言言っても気持ち悪いって言われないって。
2人目は保健室の先生か。
名前はミホ、長めの髪で美人タイプだ。
儚げなのに、色気がある感じが気に入った。
ここで『誰でもいいのかよ!』とつっこんでほしいがあいにく1人だ。
コーラをグイッと飲みながらゲームを進める。
炭酸が抜ける前に飲み切らないと。
ええと3人目は、ふわっとした感じの可愛いクラスメイトの渚だ。目がパッチリしてて可愛い!
この3人とデートを繰り返したりしながら最終的に1人に絞りハッピーエンドを目指すんだな。
しかし、俺はこの3人目の渚に今後苦しめられるのだ・・・。
渚はどうやらかまっちゃんのメンヘラタイプらしく、俺がカナデやミホ先生と話していると必ずといっていいほど割って入ってくる、、
いや、これじゃカナデとミホ先生のラブゲージ上げられないじゃねーかっ!
渚は優しくすれば『やさしくしないで!』と声を荒げるし、冷たくすれば『やさしくしてよ!』と泣く。
他の女子と話せば、『渚以外の女子と話すな!』と怒る始末。
こういう女の子が好きな人もいるのかもしれないが、俺はとても面倒くさい、、
渚が泣いたり怒ったり激しいので、振り回されてこちらまで疲れてしまう。
スルーしてもことごとくまとわりついてくるし、帰り道も待ち伏せされている、、
そうして、渚とのラブゲージだけが上がっていく・・・。
焦った俺は、まだカナデやミホ先生とのラブゲージが上がってないのに告白をしてしまった。
カナデの返事は『ごめんなさい、今は勉強で手一杯で恋愛とかは考えられないから』
真面目なクラス委員長、カナデらしい返事だ。
ですよねー
次にミホ先生に告白するも返事は『ごめんなさい、生徒に手を出すわけにはいかないの』
もっともです、こちらこそすみませんでしたー
撃沈・・・
落ち込む間もなく現れたのが渚だ。
『ケイスケっち、渚が付き合ってあげてもいいよ!』
俺に向かってウインクする渚。
俺はNOと言おうとしたが、なぜか画面にはYESの選択肢しかない!
なんだこれ!2人に振られたら渚と自動的に付き合う仕様?それともバグ??
俺はゲーム機の電源を切り、クソゲーソフトを投げつけようとして、思いとどまった。
いや、売りにいこう。。
《隠された手紙》
隠された手紙を探せ!
私は明智小五郎ならぬ、菊池五郎、探偵をしている。自分で言うのもなんだが、その界隈ではわりと有名だ。
今回の依頼人は、財閥で有名な白鳥川雄一郎の息子の光一郎だ。
光一郎は弓子という女性と交際をしている、とても美しい女性らしい。
光一郎は弓子を紹介するため家に連れてきて家族に会わせた。
そこまではいいが、父の雄一郎が内緒で身辺調査したところ、金銭目的が高いと言われたと言うのだ。
「お前はあの女に騙されている、別れろ!」の一点張りで話にならない。
父を無視し、光一郎は数千万の婚約指輪を購入した、弓子にサプライズで渡すため手紙に婚約指輪を入れて渡す事を考えたのだ。
ところがなぜか、それが父にバレてしまい手紙ごと指輪を隠されてしまったというのだ。
指輪をまた購入する事も考えたが、またバレてしまったら同じことの繰り返しになってしまうと思った、それに出来るなら父から取り返したい、そんな気持ちで私に依頼してきたという。
私は依頼を受け、白鳥川家を家探しする事にした。もちろん父の雄一郎が留守の時を狙って。
トイレのタンク、クッションやら額縁、植木鉢、屋根裏。
もちろん雄一郎の部屋や、本棚の本なども調べた。
それ以外の場所も事細かく調べたが手紙は見つからなかった。。
『菊池さん、ありがとうございます、すでにこの家にはなく、父は貸金庫にでも隠したのかもしれません、、』
光一郎は肩を落としながらそう言った。
そうして終わった今回の依頼、なんともスッキリしない終わり方だ。
白鳥川家から探偵事務所に戻ってきた私は、事務所の金庫を開け、中から光一郎が書いた指輪入りの手紙を出した、無事かどうか念の為確認するためだ。
私は光一郎に依頼を受ける前に、父の雄一郎に依頼を受けていたのだ。
この手紙を見つからない場所に保管してくれと・・・。
光一郎に対して若干の罪悪感を覚えたが、頭を冷やす良い機会だ。本当に彼女のことを愛しているのなら彼自身で何とかするだろう。
私は今回の仕事を振り返りながら、タバコをふかした。
《バイバイ》
『エミリー、私と子供を残して死ぬんじゃない!』
私は涙を流しながら、病床の妻へと叫ぶ。
エミリーも涙を流しながら言う。
「ごめんなさい・・・、アーサー、あなたと子供を残して死にたく・・・ない・・・」
そう言いながら目を閉じた妻にしがみつき、嗚咽を漏らし、これ以上涙が出ないというほど泣いた。
妻が亡くなった後は、1人で子育てをし、再婚もせず老衰で死んだ。
◾️◾️◾️
以上が前世の話だ。
前世を覚えているなんてまるで物語りのようだ。
しかも、最愛の妻と今生でも会うなんて。
しかし、今生では2人とも虫に生まれ変わったのだ。
私以外の虫には感情はないと、たぶん思うのだが、私は前世の記憶のせいか感情がある。
私は彼女(前世の妻)にアタックすることにした。
アタックするといっても、昆虫だ。
アタック=交尾だ。
人間の時のように、付き合うだの結婚だのはない、おまけに名前もない。
だが彼女との子供ができるのは嬉しい。
私は彼女に近づき、交尾をした。
彼女の感情が分からないのが難点だが、前世の妻と出会い、また関係をもち、子供をもてるかもしれないなんて僥倖だ。
悦に浸っていると、突然彼女が私の頭部に食いついてきて食べ始めた、もしゃもしゃと食べているのが片目から見える、もう片方の目はすでに彼女の口の中だ。
さらに彼女は口を開け、残りの私の頭部に食らいついた。
・・・そういえば、カマキリのメスは交尾中や交尾後などにオスを食べる事があると前世の書物で読んだような気がすると、今際の際で思い出した。
途切れゆく意識の中で、自分の体が子供の栄養になるならまぁいいかと思った。役に立ったのだと思えた。
バイバイ、また来世で会おう。
《まだ知らない君》
俺が男だとまだ知らない君へ。
大声で言えることではないが、俺はとあるネトゲでネカマとして遊んでいる大学生だ。
キャラ名はルナ。
そこで出会ったメルという女性に恋してしまったのだ。
自分がネカマなので、相手もネカマかもと疑ったが、1度通話をした時に完全に女性の声だったのでネカマの線は消えた。
俺はそんなに話さず頑張って高い声を出して風邪気味だといって誤魔化した、、。
メルも同じ都内で年も近い事はわかっている。
会いたい・・・。
正直見た目はどうなんだろう、という不安もあるがチャットでも通話でも話がとても合うので、恋人にならなかったとしても女友達になれるのではと思っている。
けど会ったら男とバレる。
でも好きだし付き合いたいと思っているのだから、男だとバラした方がいいのでは?
そうやってモンモンと悩みながら、ネトゲの中では女としてメルと楽しく遊んでいたが、二度目の通話の時にメルから「うーん?ルナちゃんほんとに女の子?声の感じが・・・」と言われたのだ。
ここでカミングアウトするべきなのでは、そして1歩先に進むべきなのでは、と思った俺は男だという事を白状した。
『騙していてごめんなさい・・・』
「いいよ、ルナちゃんが男の子でも変わらずゲームで楽しくやろうね!」
メル優しいっ
メルに許され調子に乗った俺はついに言った。
『メル、リアルで会ってみない?』
「え・・・」
『2人でお茶かランチでもしながらゲームの話とかしようよ!昼で人が多いところなら安心でしょ?』
「無理・・・」
『・・・やっぱり俺が男だから?』
「違うよっ」
『じゃあどうして?』
「・・・ごめん、ルナちゃんが正直に言ったから私も正直に言わなきゃね・・・、私60歳で孫もいるの、頑張って若い子のフリしてたの」
『え・・・』
おれはフリーズしてしまった。
自分がネカマだから、ネカマかどうかばかり気にしていて、まさか年齢を誤魔化されてたなんて思いもよらなかったからだ。
しかし俺も騙していたのだ、人のことをどうこうは言えない、、。
その後、会う話は流れ、ゲーム内でも何となく疎遠になってしまった。
早く現実が分かって良かったと酒に弱いくせに缶ビールを飲む日々がしばらく続いた。
はぁ・・・彼女ほしい・・・。