人さがし

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1/21/2024, 5:46:48 AM

─海の底─

部屋の掃除をしていた時、ふと目についた。

中学校の頃の卒業アルバム。

今は大学生だから、結構昔の物だった。

中学校の思い出といったら、彼氏ができたことかな。

平凡な学生だったのに、行動力は人一倍あって。

入学してずっと好きだった人に告白した。

相手は一つ上の先輩で、校舎で迷った時に助けてもらって惚れたんだっけ。

先輩は少し悩んだ後、優しい笑顔で「いいよ」って答えてくれて。

それからデートとかも行ったけど、ある日パタリと音信不通になった。

やっと登校してきた時には一年近く経っていて。

なんでって問い詰めても何も言わないし。本当にショックだった。

でも急に「会いたい」って言ってきて。

不思議に思いながらも会ったその時、

貴方が打ち明けてくれた。重度の鬱病になってたって。

友達に裏切られて、誰も信用できなくて、誰にも相談できなくて。

まるで海の底にただ一人、沈んでるみたいだったのだと。

心を落ち着かせるのに、一年も掛かったのだと。

でもそれを乗り越えて、今は私の隣で笑ってくれている。

その笑顔を見るだけで、私は幸せだ。

辛い過去を思い出す暇も無いくらい、笑わせてあげたい。

私はそう、心に誓った。

1/18/2024, 10:30:29 PM

─閉ざされた日記─

月が綺麗な夜だった。

貴方は言ったの、私が一番聞きたくない言葉を。

「ごめん、別れよう」って。

理由も言わずに、私の「待って!」の声も聞かずに。

あの夜は、ずっと泣いてたわ。

理由が分からないことが、どれだけ怖いか。

私が悪かったのか、最初から貴方のおもちゃだったのか。

だって私たち、同棲もして、恋人らしいことは大体したじゃない。

それだけ別れを否定したくて、理由をずっと考えてたの。

でもね、数日後にきた貴方の妹さんの連絡で、また泣いたわ。


貴方、癌だったなんて、一言も言わなかったじゃない。

貴方は私を傷つけないために別れたんだろうけど、それが一番辛かった。

貴方の葬式も行ったわ。貴方、とても幸せそうだった。

家に帰ってね、貴方がずっと見せてくれなかった日記を読んだの。

ずっと閉ざされた日記だったけどね、貴方が見せない理由が分かったわ。

だって、いつも好きって言ってくれないくせに、日記には書いてあるのだもの。

「大好き」って。「愛してる」ってさ。

本当、貴方って人は、ずるいわね。

1/15/2024, 10:26:19 PM

─この世界は─

神様は、この世界に居るのだろうか。

もし居るとしたら、とても酷い性格をしてる。

みんなを不平等に生かしているのだから。

生きたくない人を、無理に生かして。

健康でいたい人を、病にして。

笑っていたい人を、酷い方法で笑顔を奪って。

助けて欲しい時程、神様は無視する。

そんな神様、居なくていい。

僕から生きる意味を奪った神様なんて、いらないよ。

1/14/2024, 10:13:42 PM

─どうして─

朝起きて、リビングへ向かった。

タイミングが悪かったのかな。

否、でもいつか面と向かって言われてたんだろう。

リビングからは父と母の声。

喧嘩をしているようで、その内容は私。

喧嘩はよくあることだった。

私のせいで起きる喧嘩も、よくあった。

またか、と思って終わるのを待つ。

でも一向に終わる気配がない。

勇気を振り絞って、ドアノブに手を掛けたその時。

「どうしてあいつを産んだんだ!」

父の怒鳴り声。それに続いて、

「私だって産みたくて産んだんじゃないわよ!」と母の声。

まるで鈍器で頭を殴られたようだった。

その後の会話は上手く理解出来ず、私の頬には涙が伝っていた。

「…嗚呼、そっか。私って要らなかったんだ。」

私の嘆きは、両親の怒鳴り声に搔き消されて、

そこにはただ一人、何も出来ずに立っている私しか居なかった。

1/13/2024, 10:10:42 PM

─夢を見てたい─

…嗚呼、もう朝か。

ただ着替えて、朝ご飯を食べて、

電車に揺られ、デスクに向かい、

終電に乗って、鞄から鍵を取り、

玄関を開いて、風呂で体を洗い、

夜飯を食べず、ただ眠りに着く。

繰り返すだけの日々。失うことだけの日々。

何も変わらない日々。自分を見失った日々。

娯楽のない時間を、

普通になってしまった行動で潰す。

自分の首を締める行動。

分かっても、やめられなくなった。

だから変わらないと、

変えられないんだと分かっている。

僕にはすぐに忘れてしまう夢しか救いがない。

もう、ずっと夢を見てたいなぁ。

幸せだけじゃなくても。不幸でもいいから。

だから、もう朝を迎えさせないで。

僕から、自由を奪わないで。

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