─閉ざされた日記─
月が綺麗な夜だった。
貴方は言ったの、私が一番聞きたくない言葉を。
「ごめん、別れよう」って。
理由も言わずに、私の「待って!」の声も聞かずに。
あの夜は、ずっと泣いてたわ。
理由が分からないことが、どれだけ怖いか。
私が悪かったのか、最初から貴方のおもちゃだったのか。
だって私たち、同棲もして、恋人らしいことは大体したじゃない。
それだけ別れを否定したくて、理由をずっと考えてたの。
でもね、数日後にきた貴方の妹さんの連絡で、また泣いたわ。
貴方、癌だったなんて、一言も言わなかったじゃない。
貴方は私を傷つけないために別れたんだろうけど、それが一番辛かった。
貴方の葬式も行ったわ。貴方、とても幸せそうだった。
家に帰ってね、貴方がずっと見せてくれなかった日記を読んだの。
ずっと閉ざされた日記だったけどね、貴方が見せない理由が分かったわ。
だって、いつも好きって言ってくれないくせに、日記には書いてあるのだもの。
「大好き」って。「愛してる」ってさ。
本当、貴方って人は、ずるいわね。
1/18/2024, 10:30:29 PM