仕事で嫌なことがあった今日。
誰にも相談できないことが私に激しく涙雨を降らせる
離れてしまった彼氏にはなんでも話せた。
けど、彼以上に「無条件で」話せる友達はいない。
親にも話しづらいことだった。
膝を抱えて泣いてるとき、ふと誰かの声が聞こえた。
「俺と離れても、お前なら立ち向かえる」
すぐにわかった、別れた君だって。
すぐに自覚した、幻聴だって。
「幻聴が聞こえるのは
自分の心の奥の願いが誰かの声になって聞こえる。
だから、誰かと以心伝心しているわけではない」
そう言った昔の知り合いの言葉を思い出す。
だよね、もう話せないよね。
でもね、もう少し頑張るよ。
幻聴の言った一言が、君の声で作られた幻聴が、
いつかの君が励ましてくれた一言のこだまだと思って
「ありがとうを言えるのは最悪なあなたのおかげ」
四月にある会社の事務所に事務員として入社した。
入社して間もない頃は上司や先輩達に恵まれて
仕事にもやりがいを感じていた。
「この会社に入れてよかった」
心からそう思っていた。
それは長くは続かないのが世の常だろう。
数ヶ月後に育休明けで復職した先輩に
ただ気に入らないというだけの理由で
私はハラスメントを受けた。
雑用ばかりを押し付けられ、
入社してからコロナに感染したことのある私は
やがて事務所内の先輩達とは別の部屋で
仕事をこなすように隔離された。
育休明けであの人が来る前に一緒に仕事をしていた
優しいあの先輩はもういない。
育休明けとはいえ古株のあの人に対しては
上司も信頼していて私の意見には耳も傾けない。
私は隔離された事務所の部屋で
泣きながら仕事をこなす毎日が続いた。
うつになりかけたある日、
私は上司にKOを出して相談したが、のちに退職した。
それから一年かけて職を探し、
中途採用である会社に就職した。
事務員とは程遠いスーパーの品出しの仕事。
ここでもいじめは無数にあった。
でも、あの頃と比べれば小さなものだ。
いつの間にかそう思えるようになっていた。
やがて、仕事ぶりが評価され
昇級して発注などを手掛けるお菓子の担当者になった
私は前職のあの人に言いたい。
「あの会社から退職するとき、
私の心には名残雪が降っていました。
それくらい悔しいと思いました。
でも、あなたが心を傷つけてくれたおかげで
私は少し強くなれました。
私は今の会社で穏やかに働いています。
社会の厳しさをあなたから教わり、役立てています
いろんな意味を込めて、ありがとう」
いつも声が小さくて何かに怯えている同級生がいる。
彼女はひとりぼっちで、突然泣いてしまう時もある。
泣けばクラスの男子がからかうし、
それを守ってくれる生徒もいない。
クラスのみんなが
いじめる側と傍観者でいるのが当たり前になっている
私もその傍観者の一人だ。
誰かが助けてあげないと彼女は
どこかに行ってしまうかもしれない。
私は彼女にそっと伝えたい。
「声を上げられないのは弱いからじゃない。
見えない敵と心が戦っているんだ。
恐れることはない。
時間は流れるけど、つかんだ勇気は逃げない。
前へ進もうと踏ん張ってる君が諦めない限り」
あなたと付き合ってた頃、よく二人で未来を語ったね
「同棲とか始めたら、朝食はご飯と味噌汁がいい」
「帰りが遅くなっても二人の時間は大切にしよう」
「もし、ケンカして話さない日が続いたら
また君に仲直りのキッカケをもらうかもしれない。
そうならないようになるべく俺からも謝るよ」
そんな約束したことも忘れて、
大げんかを機に私たちはすんなりと別れた。
未来の記憶というものがあるのなら、
あの時、あなたが語ったあの未来予想図だろう。
実際にはその「記憶」は消されてしまったけど、
私は頭の中の隅に残しておくね。
あなたが忘れてもきっと私は永遠に忘れられないから
あの人が作ったメロディを聴いて、初めて涙が流れた
歌詞ではなく、あの人の奏でる鼻歌が心を震わせた。
あの人の声が、あの人が生む発想が、なぜか響く。
理由はわからないけど、
ただ、懐かしくて、桜が咲く春の気配を感じさせた。