「ありがとうを言えるのは最悪なあなたのおかげ」
四月にある会社の事務所に事務員として入社した。
入社して間もない頃は上司や先輩達に恵まれて
仕事にもやりがいを感じていた。
「この会社に入れてよかった」
心からそう思っていた。
それは長くは続かないのが世の常だろう。
数ヶ月後に育休明けで復職した先輩に
ただ気に入らないというだけの理由で
私はハラスメントを受けた。
雑用ばかりを押し付けられ、
入社してからコロナに感染したことのある私は
やがて事務所内の先輩達とは別の部屋で
仕事をこなすように隔離された。
育休明けであの人が来る前に一緒に仕事をしていた
優しいあの先輩はもういない。
育休明けとはいえ古株のあの人に対しては
上司も信頼していて私の意見には耳も傾けない。
私は隔離された事務所の部屋で
泣きながら仕事をこなす毎日が続いた。
うつになりかけたある日、
私は上司にKOを出して相談したが、のちに退職した。
それから一年かけて職を探し、
中途採用である会社に就職した。
事務員とは程遠いスーパーの品出しの仕事。
ここでもいじめは無数にあった。
でも、あの頃と比べれば小さなものだ。
いつの間にかそう思えるようになっていた。
やがて、仕事ぶりが評価され
昇級して発注などを手掛けるお菓子の担当者になった
私は前職のあの人に言いたい。
「あの会社から退職するとき、
私の心には名残雪が降っていました。
それくらい悔しいと思いました。
でも、あなたが心を傷つけてくれたおかげで
私は少し強くなれました。
私は今の会社で穏やかに働いています。
社会の厳しさをあなたから教わり、役立てています
いろんな意味を込めて、ありがとう」
2/15/2025, 4:26:59 AM