ネジが外れたウサギ

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9/1/2024, 6:03:21 AM

(小説になってます)


体育祭には必ずリレーに選ばれる

速読が得意で読解力は人並み以上

計算問題なら朝飯前

誰とでもすぐに打ち解ける

初めて恋人ができたのは幼稚園の頃


そんな風に自分を誇れる僕は欠点がある


体育祭の練習で一番に揉め事を起こすのは自分

読解力はあるのに暗記は苦手

計算は得意だけど、人の心理の計算はミスする

自分を嫌ってる人に対しては対抗心を見せて拒する

恋人ができても期間は長くて二年ほど


そんな不完全な僕に

優しく接してくれる女性がいた

結局は僕のわがままで彼女を傷つけ喧嘩してしまった

でも、彼女は仲直りしてくれて許してくれた

その日から僕は彼女のことを一番に思いやって接した

僕の懸命なところに彼女は応えてくれた

このままなら、ずっと続くと思っていた


悪い機会は突然訪れた

ある日、彼女からストーカーの相談を受けた

それからボディーガードを必死に努めた

ある夜。いつも通り彼女を家に送る時

ナイフを持った男が無言で向こうから走ってきた

彼女を守るため男と揉み合っているうちに

僕が男を刺してしまった

それから僕は人殺しとして生きる道へ進んだ

そして彼女は心を病み障害者の道へ進んでしまった


あの夜から僕は不完全どころか

何もかも未完成なゴミクズになってしまった

8/31/2024, 12:02:24 AM

私の高校の先輩は
フルーティーな香りの香水が似合う人だった。

ベビーフェイスで
明るくて笑顔で接し、思いやりがあって
誰とでもすぐに打ち解ける、
そんな人の鑑みたいな人。

私も先輩のようになりたくて必死だった。
でも、どんなに頑張っても
彼女のようにはなれなかった。

誰にでも向き不向きがあるように
人の性格って変えられないと
なんとなく思った。

そんな時、私はその先輩に相談した。
「どうしたら、先輩みたいになれますか?」
答えは一つだった。

「あなたにしか似合わない香水があるの。
その香水さえ見つけられれば、
きっとあなたは『自分らしさ』を見つけられる。
あなたにはあなたの良さがある。
それを忘れないで」

その日からさまざまな香水をテスターで試して
金木犀のような甘い懐かしい香りの香水を選んだ。

8/30/2024, 5:41:58 AM

自分から別れを切り出したのは理由がある

あなたを嫌いになったからではない

私と一緒にいるとあなたは前に進めない

私があなたの本来の幸せの扉の鍵になってしまう

だから最後にもう一度だけ言葉の代わりにキスをして

8/29/2024, 6:06:56 AM

「お久しぶりです」
そう言って君は事業所の玄関のドアを開けた。
声を聞いた僕たちは、みんな手を止めて振り向いた。

ここは障害者が社会に出るための練習を兼ねた、
障害者が働くための作業所だ。

君はこの作業所の卒業生だ。
君がここを旅立ってからもう三年になる。
そんな君がなぜ今になって突然訪問してきたのか疑問だ。

「久しぶりだね。元気にしてたかな?」
そう言ったのはこの作業所の責任者である坂原さんだ。

「今日はお願いがあってきたんです」
「何かな?」

君の目は泳いでいる。
簡単に言える頼み事ではないらしい。

「私の働いている本屋さんで人が足りなくて、この作業所の利用者さんを誰か一人寄越してほしいんです」

坂原さんも他の職員も驚いていたが、利用者の僕たちが一番驚いていた。
なぜなら、障害者は特にパートでも
働き口を見つけるのは、かなり困難だから。

われ先に他の利用者が立候補して君に向かう。
しかし、君の求めている人材と立候補者は合わないらしい。
君は一人の女の子に近づいた。
ほとんど誰とも話さない、うつ病の子だ。

「あなたに来て欲しいの。あなたにポップを作ってもらって宣伝してくれないかな?」

「ま、まさかその子には無理だよ」
誰もがそう思った。
でも、坂原さんは止めずに賛同した。

「彼女には人を惹きつける文章が書ける。みんな知らないけど、一度だけキャッチコピーの公募で入賞したことがあるんだよ」

僕たちは驚きを隠せない。

彼女の可能性を僕たちは奪おうとしていた。
それが障害者に対する偏見だった。
「障害者だから、これは出来ない」と。

選ばれたその女の子は笑顔で承諾した。
もちろん、君のサポート付きでの契約だが、
その子のセンス溢れるポップで売り上げは上昇したと
坂原さん宛にメールで報告してきた。

君のあの訪問を機に僕は社会で働くことの恐怖を少しずつ払拭し、勇気を持てた。

8/28/2024, 4:31:31 AM

カフェの外は強い風と共に強く大粒の雨が降っている。

道ゆく人々は皆忙しく歩いている。


今、私はその嵐の天候のような境地にいる。

目の前の男は鋭い北風のような眼で私を睨んでいる。

彼は元夫だ。

結婚している当時、

私たちの間にできた一人娘の親権を奪おうとしている。


私と娘は酒豪の暴力男から逃れるために離婚した。

その理由も理解せず元夫は

娘だけでも手元に置こうとしている。


元夫は口を開く。

「俺になぎさを返せ」と。

私も口を開く。

「もうあの子を危ない目に合わせない」と。


娘の連絡先をしつこく求めてくる元夫の顔に

コップの水をかけた。


「らちが開かない」

そう吐き捨て、私は千円札を一枚置いて店を出た。


外は相変わらずゲリラ豪雨だ。

あんな男に惚れたあの頃の自分を悔やみながら

私は傘をさして雨の中でぼーっと突っ立っていた。

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