カフェの外は強い風と共に強く大粒の雨が降っている。
道ゆく人々は皆忙しく歩いている。
今、私はその嵐の天候のような境地にいる。
目の前の男は鋭い北風のような眼で私を睨んでいる。
彼は元夫だ。
結婚している当時、
私たちの間にできた一人娘の親権を奪おうとしている。
私と娘は酒豪の暴力男から逃れるために離婚した。
その理由も理解せず元夫は
娘だけでも手元に置こうとしている。
元夫は口を開く。
「俺になぎさを返せ」と。
私も口を開く。
「もうあの子を危ない目に合わせない」と。
娘の連絡先をしつこく求めてくる元夫の顔に
コップの水をかけた。
「らちが開かない」
そう吐き捨て、私は千円札を一枚置いて店を出た。
外は相変わらずゲリラ豪雨だ。
あんな男に惚れたあの頃の自分を悔やみながら
私は傘をさして雨の中でぼーっと突っ立っていた。
8/28/2024, 4:31:31 AM