ネジが外れたウサギ

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8/16/2024, 6:20:58 AM

友達に裏切られ親とケンカした日の夜。

遺書みたいな手紙を入れたウイスキーの瓶を持って、

全てを投げ出したくなって家を飛び出した。


たどり着いた海の砂浜に、大きな亀が休んでいる。

「竜宮城に連れて行ってなんてことは言わない。

ただ、もし良ければ楽になれる場所を教えて欲しい」

と亀に言いたかった。


亀が動かないから、不安になって声をかけた。

「生きてる?」

亀は少し頭を動かして、こちらを見た。

ボーっとしてるだけだと思い、安心した。



持っていたボトルメールをどうしようかなと思いつつ

時間を忘れて私と亀は共に夜を過ごした。


水平線にオレンジの線が顔を出してきた明け方。

うたた寝をしている間に、気づいたら亀はいなかった。

あの亀はなんだったのだろうか。

でも、私に何も問いたださない無口な亀に感謝した。

気をもむことがない昨夜と亀は、私の疲れを癒した。


持っていたボトルメールを流さないまま

私は帰路についた。

8/14/2024, 5:13:48 AM

嫌なことの積み重ねで心を病んだ十年前。

そのときの心の薬となったのは、

一種のファッション雑誌だった。


non-noとかZipperとかCanCamとか、

さまざまな青文字系や赤文字系のファッション雑誌を

読んできた私にとって、

心の薬となったモード誌だけは

私に知らない世界を見せてくれた。


服の価格とか、似合う似合わないとか、

そんなのはどうでも良くて

ただ、その雑誌(ヴォーグとか装苑)に出てくる服は

その頃の私にとって、

見ているだけで幸せなアートだった。


その服を芸術らしく魅せている写真こそが

心の薬となった、とも言えるだろう。


心の健康を少しずつ取り戻し、

今では普通に働けるようになったのは、

私を一番に魅了した、『コムデギャルソン』という

ブランドの服のデザインがキッカケだと今も思う。

8/12/2024, 6:41:50 AM

あいみょんのマリーゴールドがヒットした年の夏。

私たちは出会い、交際を始めた。

きっかけは、淡白なありきたりのものだった。


君の職場のコンビニで、

私が祖母に頼まれた小さなあんぱんを探していたが、

見つからず品出し中の君に尋ねた。


君は嫌な顔ひとつせず、笑顔で

「もしかして、この商品ですか?」と聞いてきた。

そのあんぱんが私の探していたものだとわかると

「それです、ありがとうございます」

と御礼を言ってレジに向かった。


すると、店員が少ないせいか君が慌てて会計をしてくれた。

会計を済ませた後、君は丁寧にお辞儀をした。


その日から私は祖母に頼まれてなくてもパンを買いに

君のコンビニに時々、行った。

それを重ねていくうちに私は彼から

未発表の新商品を教えてもらったり、

アプリの新着のクーポンを教わり、使ってみた。


私はお金を落としていくことしかできないけど、

それで君と話せるから、嫌なことも忘れられた。


君の方から「LINEを交換しよう」と言われ、

ロケット花火のように私の心は跳ねた。

その夜、私は君の車で牧歌の里に行く約束をした。


デート当日。

牧歌の里に着き車から降りると、

私がかぶっていた麦わら帽子が風で舞った。

君が追いかけ、華麗な飛び蹴りのようにキャッチした。

「ありがとう」と君に見惚れながら言うと君は

無邪気な笑顔でその麦わら帽子を被って言った。


「俺、マリーゴールドに似てるかな?」

とふざけて言う君を見て私は、

「私があいみょんだったら、違う花にしたかも」

とふざけて言いながら笑った。


8/10/2024, 4:16:15 AM

「好きです」って誰かに告白した回数は数知れない。

だけど、それと比例してフラれた数も数知れない。


そんな屈辱と孤独感を背負って生きてきたことを

君と出会ったことで払拭された。


先が見えてるのに言うのがアホらしくなるほどの

君に言った、10回目の「好きです」。


結果は真逆の結果だった。

君は「俺も好き」と言ってくれた。

その日から私は桜色の人生を歩み始めた。


そして、彼から多くのことを恋愛と人生にまつわる

さまざまなことを教わった。


私は恋愛に正解なんてないということも、

彼が教えてくれた。



上手くいかなくたっていい。

その恋が実らなくても、

いつかは自分を探している愛してくれる人に出会える


上手くいかなくたっていい。

その挑戦が無駄になったとしても、努力し続ければ、

いつかは金メダル並みの報酬が何かの形で得られる。


それらを彼との恋愛で教わった。

8/9/2024, 6:22:21 AM

私は大きな木の一部の花である。

愛しき者に栄養を与える実をつける花だ。


その者が人でも、動物でも、他の生物でも関係ない。


ただ、花として私があげられるのは、限られてる。

場を盛り上げるとか、花占いに付き合うとか、

花冠として誰かを飾るとか。


だから、私は自分が最期に実をつけ、

誰かの役に立ちたい。


そのために、私は蝶に手伝ってもらう。

ミツバチでも構わないけど、

蝶のように華麗な羽を持つ彼女たちの助けを借りれば

最強の栄養のある実を成せるかもしれないから。


一生の短い私が愛しき者にとって、

少しでも心に宿る花でいたい。

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