君に会いたい
太陽の下で、子供のように笑う君と。
晴れの時も、雨の時も、風が強い時も、雷が鳴り響いている時も、いつも笑顔を絶やさなかった君。
僕があげた、菊柄の袴を着て、嬉しそうにこちらを振り向く君。
物珍しそうに屋台を眺め、希望を詰め込んだ目を輝かせていた君。
そんな君と生きたかった
何故、僕だけ長生きしてしまうんだ。
君と共に生きたい ただそれだけだ
なぜ、この願いを神は許してくれないのだろうか。
とある研究所から見つかった、ボロボロの手記から抜粋。
お題『子供のように』
ピンポーン
梨花の家のチャイムを鳴らす
暫く待つが、返事は無い。
「うーん 居るはずなんだけどなぁ あ、病院とかかな。」
体調不良で休んだ梨花の分のプリントと、今日の授業ノートを持って、もう一度チャイムを鳴らす。
やはり、返事は無い。
適当にポストにでも入れようとしたその時
家の中から、何かが割れる音が聞こえる。
「あうぇ? え 誰か居ますかー!」
隣の家にも聞こえるぐらいの大声で聞く
しかし、帰ってくるのはカラスの鳴き声のみ。
「もしかして、倒れてたり?」
不安と興味が混じり、玄関の方に近づく。
こういう展開ではありきたりな事に期待し、扉を開けようと、手をかける。
扉を引くと、ガチャリと開いてしまった
「あ、あの〜雪ですけど、誰か居ますか〜?」
扉を開け、中に入りながら呼びかける。
返事が無く、さっきの音の正体を探る為、家の中を探索する。
暫く探索した後にリビングに近づく
リビングの扉を開けたその時、雪は思わず手に持っていたノートを落としてしまった。
なぜなら
カーペットのように血が広がっていたからだ
奥には、梨花の母親が倒れており、手前には父親と梨花が倒れていた。
「え…え?」
何も言えず、動けずにいると、梨花の体がぴくりと動く。
「り、梨花?」
梨花は体をゆっくりと起こし、こちらに振り向く。
その顔は、悲しみという悲しみを全部背負ったような顔だった。
なにより、不可解な点は。
彼女の顔半分が、漆黒に染まっていたのだ。
9月30日
通り雨の次の日
青空と橙色の放課後
彼女の、雪の物語が始まった。
お題『放課後』
追記 書いてる途中に、データが吹っ飛んだので、いつもと違う雰囲気になってるかもしれないです。
(一発書きでは無いです)
つらい
「ただいまー」
がちゃりと、玄関の扉を開け、家の中に入る。
靴を脱いでいると、奥からお姉ちゃんの声が聞こえた。
「おかえり 雨、大丈夫だった?」
「ん、雨?降ってなかったけど」
「そうなの?さっき通り雨が来たんだけど、そっちには行かなかったみたいね。」
「ひゃーここら辺通る人、かわいそー。」
あんまり、心に思ってない言葉を言いながら、自身の部屋に入る。
鞄を置き、私服に着替える。
その後、外の光を取り込もうと、カーテンを開ける。
空はオレンジ色に染まり、夜が来ようとしていた。
「もう夕方か〜あ、やべ宿題やらないと。」
急いで、鞄から筆記用具などを取り出す。
机にノートなどは開いたが、いざやろうとなるとやる気が湧かない。
隣に置いてある、スマホに目がいく。
「そういえば、梨花大丈夫かな〜」
今日の行き帰りで、言っていた事を思い出す。
「毎日変わらない。か〜」
ふと、お姉ちゃんの部屋の方角を見やる。
「変わらないのも、良い事だよね。」
「よし、宿題終わらせちゃおう!」
意気揚々と宿題に、取り掛かる。
これはまだ、平和だった時のお話し。
お題『カーテン』
1人の少年が、とある墓地の前で手を合わせていた。
彼は俯いて、涙を溢していた。
言葉を発さずそのままの体勢で、暫くの時間が経った。
ふと、彼が言葉をこぼす。
「皆んなが幸せな世界って…どうすれば良いんだよ…」
自分の中では、納得がいっていないような表情をし、立ち上がる。
「叶えるから、絶対。」
切り替えるように、自分自身に聞かせたように、喋る。
突如、スマホの着信音が鞄の中から、聞こえてくる。
画面を見ると、友達の沢海からだった。
泣き声を聞かせないように、深呼吸をし、電話に出る。
「もしもし」
「もしもしぃ?風真?今どこ?」
「何処でも良いだろ。なんのようだ」
「丁度補習終わってさ、近くに居るならゲーセンでも一緒に行きたいなって。優人もいるぞ」
「そうか 近いから行く」
「お、OK〜じゃ待ってるわ」
電話を切り、学校に向かう。
涙を悟らせないように、いつもの表情を保つ。
お題『涙の理由』
「ENJOY♪音楽は鳴り続ける
IT‘S JOIN届けたい胸の鼓動〜」
梨花は、イヤホンでココロオドルを聞き、口ずさみながら夜の道を歩いていた。
雪と別れた後、ふとお菓子が食べたくなり、コンビニまで向かったのだ。
レジ袋をがさがさと持ちながら、るんるんに歩いていく。
日が落ち、暗闇に侵食していった道の怖さを和らげるために、この曲を聞いている。
題名の通り、心が躍る曲だ。
ふと、自身の手に違和感を感じた。
袋を持っていない方の手、左手を見ると、手が黒に染まっていた。
「ひっ!?」
墨汁でも溢したようなその手に驚き、顔を遠ざける。
自分でも何が起きているかわからない
手を閉じたり開いたりする ちゃんと連動し、自身の手だと理解ができる。
しかし、このような色になっている理由に心当たりは無い。
「と、とりあえずお母さん達に相談しよう…うん」
少し距離のある道を、駆け足で走る。
これが、物語の始まりとは知らずに。
お題『ココロオドル』