『眠気』
ウトウトとする中、ベットの中でゴロゴロとくつろぐこの瞬間はなんとも言い難い幸福感がある。
スマホを片手に何をしてもいい。
横になったまま読書をしても、
お菓子やジュースを飲んでは動画やテレビを見て
ケラケラ笑い、泣いてもいい。
でも、実行に移す前にふわふわとした眠気が
私をおいでおいでーと誘いにくる。
まだまだ日が登り始めるというに
私はまだまだ寝足りないと毛布の中に潜り込む。
季節によっては蹴飛ばすのに、
いざ寒くなると夜中に半起きして手探りで探す
私の相棒《もうふ》
ふわふわとした手触りでもいい。
シーツのような素材でもいいし、
冬に最適な羽毛布団でもなおいい。
なんだったらタオルケット1枚で、
天気の良い日に窓を開けて心地の良い風を招き入れながらお昼寝するのもまた一興。
大好きな抱き枕を片手にモゾモゾとした後は
眠気き任せてウトウトと船を漕ぐ。
時間も仕事も人間関係も何もかも現実に置いてきて、
夢の中でうたた寝に身を任すことに何の罪があろうか
あぁ、まだまだ寝足りない。
私は明日、お仕事ですね(´;ω;`)
『うつ病』
“日常生活に支障が出るほどの強い気分の落ち込み、
意欲の低下が続く病気”
ネットで表記されたうつ病という名の精神疾患
何時からかうつ病、適応障害、パニック症...と調べるようになって、自分はそうなのか違うのかはたまた、
甘えなのか、単なる妄想ではないのかと疑っている。
私は生まれた時からADHDを持ち、
中学になってからは合唱コンクールで指揮者に選ばれてからはパニック症を持つようになった。
いじめをきっかけにコミュニケーション能力が乏しく、自分に自信を無くしていた。
高校に入ってからは友達を疑い、妬み、自分が以下に弱いか思い知ってしまい、進学してからは友達がそばにいない事に寂しさを、勉強面では理解力の乏しさを、生活では何が原因だったのか体調も悪くなっては休みが多くなっては先生に出席日数が足りないと注意されるようになってしまった。
頑張らないとって自分を責める。
甘えてはいけないと自分を奮い立たせようとする。
時はすぎて、私は無事卒業した。
就職した今はホワイトな職場に優しい先輩や上司に恵まれて、安心と不安の狭間でスタートした。
最初はパニックを起こさないと中学から処方され、大きな行事やもしもの時にと飲んでいた精神安定剤を仕事のある日だけと限定して半分だけのんでいた。
何も問題なんてなかった。
優しいのんびりとした場所だった。
優しく教えてくれる先輩と笑顔の似合う上司。
勿体ないと思うほどでした。
就職して母が入院しました。
脳梗塞でした。
それからは兄弟と暮らし始め、家事を分担しながら母の入院費を稼いでは払い、生活費を見ては悩んだり、
兄弟と喧嘩しては困り、いつの間にか疲れているようになりました。
休みが足りないと
職場に行く度に足が重くなりました。
生活費や入院費を見る度に
暴飲暴食が増えた気がしました。
兄弟と喧嘩する度
何もかも押し付けて逃げたいと思いました。
書類を書くのも支払いを気にするのも私だけです。
職場の同僚に遊びに行こうと誘われる度に
彼女を恨むように鬱陶しいと思うようになりました。
忙しいと断る事に執拗いことに腹が立つようになってしまいました。
余裕がなくなって休んでも休みきれない気がして、
自分が段々と甘えてきているようになって、
だらしなくて汚くてキモチワルイものに思えてきました。
そんな時、とうとうやってしまいました。
朝になって、時間ギリギリの時計を見て急がなきゃって思いながらシフトの人数をみては休めないと思いながら準備をする。
けど、次第に動作が遅くなって中がいっぱいになって次第に目に、涙が溜まってくる。
行きたくない、行きたくないッ・・・
気がついたら、兄弟に泣きついていました。
兄弟が職場に電話を掛け、
休みを貰ってその日は殆ど寝て過ごしました。
余裕のない日々に次第に悲しくなって、
弱い自分に情けなくて、泣けない自分に絶望するようになってしまった。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
この言葉が頭を埋めています。
ずっとずっと
疲れました、
泣けないこともよわいことも
なにがしたいの?
あまえたいの?
たすけてくれるひとはいるの?
うつ病とはんだんされたいの?
これに名前がほしいの?
言葉が詰まって助けての一言も言えない約立たずのくせにネットではスラスラと言える
本当になにがしたいの
休みたい
なきたい
めいわくかけたくない
はなしたい
頭を撫でてあんしんさせてよ
この不安を消してさ
ぎゅっとだきしめてよ
死にたいとおもわせないで
へんにおもわないで
ああああああああああ
きょうもじぶんを抱きしめてねむる
朝が来て絶望する
あしたなんてこなければいいのにね
あぁ、つかれました
Original №3 『翠縹《すいひょう》の君』
⚠️注意⚠️必ず読んで下さい。
※この物語には死ネタ、夢の表現がある為、
読む際にはご注意下さい‼️
もし、読むとしても作者は一切責任はとりませんので、読者様の自己責任でお願い申し上げます。
大丈夫!問題ない☺️という方のみお読みください
ふわふわと男にしては長い黒髪を纏め、
大して目が悪くないのに周りと違う瞳の色を気にして黒縁メガネを掛け、黒のチョカーと瞳と同じ色のピアスを付けた不良のようでそうでも無い優しい彼。
薄い硝子の向こうにある翠縹の瞳に俺は何時からか目を離せなくなっていた。
それと同時にその奥に映る情の欠片に気づいてしまったが、同性...しかも年の差もある年下の青年だと抱いてしまったこの心に言い聞かせていた。
言葉にすれば変わってしまうこの関係を恐れて、俺は今日も彼の気持ちに気づかないフリをする。
彼のバイク〖ハーレイ〗の点検作業を請け負い、弟たちと語らう彼を横目に見ながら作業をしているとふと彼と目が合う。
緑と青の織り交ざった夏の翠縹の色がキラキラと宝石のように輝いて俺を写す。それと同時ににこやかに笑っていた表情がふにゃりと柔らかくなり頬に赤みが増して、俺の名前を呼んだ。
(あぁ、そんな表情《かお》をされてしまうと折角隠していたこの気持ちが揺れてしまうじゃないか。)
何処も赤くなっていないことを祈りながら、どうしたと作業をしていた手を止める。
どうやら、買い物に行く妹の付き添いとして出かけるようで何か必要な物はないかと確認で呼んだそうだ。
ココ最近、弟の1人が作った不良グループと他のグループの抗争が近い為、何かと身内だからと目をつけられやすい妹の護衛として付き添いを彼が申し出たのだ。何かと腕っぷしのある彼は負け無しの弟と互角に空手を打ち込み合うほどの実力なので、こちらとしては頼もしい限りだ。妹を頼むとつげ、友人たちと喧嘩する弟たちと共に彼を見送り、お礼として代金を割引かと作業を再開する。
何かと強い彼なら大丈夫だろうと安心して・・・・。
この時、少しでも彼を心配していれば...
1人ではと信頼する友人たちを共に行かせてやれば...
後悔なんてしなかったのにッ・・・・。
『花垣アソタさん。
2月22日 19時39分...ご臨終です。』
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《花垣 アソタ》女性
▶2月22日、当時抗争前の不良グループのメンバーが東京卍會の総長の戦意を削ぐ為、総長の妹を殺害しようと計画。計画当日、2人がかりでバイクの勢いにて鉄バットで妹を撲殺しようとし、それに気付いた花垣氏が妹を庇い、後頭部を殴打され意識昏倒。
無傷であった妹が近くにいた兄弟に助けを呼び、救急車を要請。5分後、現場に救急車が到着し、応急処置をするも意識は回復せず、近くの病院にて緊急搬送。
●●病院に搬送されるも19時39分、○○医師の下死亡が確認される。
死因は後頭部による鉄バットの殴打だと考えられる。
現場を目撃した人の証言の下、花垣氏を撲殺した容疑者2名を緊急指名手配し、警察は捜査を進めるが、
☆☆年♢月※※日、○○建物内にて指名手配されていた未成年者2名が無惨に殺害されているのをその建物の管理者が発見。ご遺体には手足を拘束した状態で何度も殴打された跡が見つかっている事からご遺族またはその関係者による怨恨での犯行でもはないかと亡くなった花垣氏の関係者を調査するも手掛かりは掴めず、未だに2人を殺害した犯人は見つかっていない。
容疑者2名の死因は撲殺ではなく、頭部に残った銃痕から銃殺と断定。
﹦﹦﹦﹦﹦﹦﹦﹦﹦
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12年後...
その日はお盆を零したように連日の雨で、
義姉の墓参りには向かない天気だった。
だが、行かないという選択肢はなくおれは草臥れた黒いスーツに身を包んで手向けの花と傘を抱えて石段を1人歩く。
あの日、総長の妹の未来は姉が置き換わるように亡くなり、おれはその知らせを聞いたと同時に未来へと帰った。何度も変えられない義姉の未来はおれの知らない所で死んでいく。
だが、今回だけ義姉の死を身近に見てしまったッ。
総長の妹さんの叫びに急いで駆けつければ、そこには地面に横たわり動かなくなってしまった義姉。
義姉の頭と横たわった地面は血まみれでおれはその場を動けずにいた。
気づけば目の前には白い布を被った義姉がいた。
そこからはどうやって未来に戻ったのかハッキリと覚えておらず、未来に戻ったと同時に別居している両親から義姉の命日だと電話越しに告げられて今に至る。
トラベル以前たった1度の喧嘩で疎遠となってしまった義姉についておれは何も知らなかったと未来を渡る度に気付かされた。
今回だって姉が好きだったという花も知らず、結局は花屋のオススメに任せて持ってきた。
義姉の墓は花垣家ではなく、義姉の本当の母の実家である『紫陽家』の墓に埋葬されているらしい。
どうやら母方の祖母が葬式時に態々頭を下げてまでお願いしたそうだ。娘と同じ墓に入れてあげたいという願いに両親は賛成し、義姉は紫陽家の墓に眠りについている。
少々遠い場所を駅を乗り継いでやってきた。
『紫陽家』という墓石を探しながら歩いていくと、目の前を傘も刺さないでいる全身真っ黒な男性が通り過ぎる。ふと男の耳に飾られる緑色のピアスが目に入り足を止めた。
義姉も同じものを付けていたなぁと思い出しながら、再び足を進め、視界と悪い中やっと『紫陽家』の墓を見つける。
すると、墓の前に1本の黒い薔薇が置かれているのに気づいた。
黒色の薔薇に少し気味悪さを感じたが、
これは一体誰が置いたのだろうか?
Original №2 『優しくしないで』
⚠️注意⚠️長文あり
〖.......modottekoi........〗
ある日、俺に届いたのは、
たった1行だけ書かれた一通の手紙
封筒にはここの宛先だけが書かれており、送り主の名前も住所も無いが、手紙の端に押された故郷の紋章が何処からこんなふざけた手紙が来たのかが分かった。
(とうとう、来てしまったなッ....)
故郷のシンボルとも言える大樹を中心に囲うリーフ
一見、国の紋章に見えないシンプルなデザインだが、これは大木の海〖樹海〗に守られた新国〖ミュルクヴィズ国〗の紋章だ。
帝国 アルスマグナの隣国にあり、
過去に帝国と長い間争ってきた森の民が村から街へ、
街から国へと発展して出来た新国なのだ。
街と発展した当時にミュルクヴィズの領主、いや、今は国王と称した方がいいだろう。
国王の祖先と帝国の王が長年の戦争に終止符を打つ為、互いに和平協定を申し出た。
とある約束を交わした王たちのお陰で今まで平和で居られていた。
そう、いられたのだ。
「....終わってしまったのですね。兄上」
帝国の第一皇子である〖アルフレッド〗殿下の暴走により今、ミュルクヴィズ国は帝国との協定を反古にされていた。
本当に頭のアホーな皇子だ。
初対面の時も思ったが思慮の足りない男であり、難のある性格を持っている上、自身の婚約者を蔑ろにする程貞操もない人が何故、皇太子という座に座ることが出来たのか不思議でしかない。
まぁ、文武両道であるにはあるが未来の皇帝としての才は弟の皇子にあると俺は思っている。
第二皇子 ルイス皇子はアルフレッド殿下と腹違いの兄弟であり、現在は問題を起こしたアルフレッド殿下に変わり、ミュルクヴィズ国への大使として時々、
お越しになっている。
皇太子と違い、心優しく婚約者様とも仲睦まじい姿がよく見られている。そして、ミュルクヴィズ国の王やその民たちにも敬意を払う姿勢にミュルクヴィズの王も民も感心を得ている。....次の皇帝に願うほどに。
話は変わって、、、
ミュルクヴィズ国とアルスマグナ帝国の現王たちは
年に1回に行われる親善会議にてとある約束を交わしていた。
互いの友好を深め、再び愚かに戦争を起こさない為、
両国の王族の婚姻を提案し、第二皇子ルイス皇子にミュルクヴィズ国王の姪 ピースを第2皇妃として迎え入れる事で話が進められた。
幸い、大使として幾度も来ていたルイス皇子とその婚約者様はミュルクヴィズ国の巫と呼ばれるピースと仲が良く、婚約自体も特に反対も本人たちの拒否もなく受け入れられたのだが、その婚姻に反対する皇太子と一部の者の声が上がった。
馬鹿皇太子はミュルクヴィズ国の巫であるピースの容姿を一目みて気に入ったようで、自分の即位後に側室として迎え入れようと思っていたらしい。
前々からことある事に側室に入れという手紙がきたが互いの友好と巫という立場を考えて見れば、側室では問題がある為、わざわざ〖皇妃〗という婚約者と同じ身分で嫁ぐ事に意味があるというのに、皇太子は〖側室〗に迎え入れようとしていたのだ。
勿論、両国の王はこれを却下しご丁寧にこの婚姻について説明したそうだが、皇太子の意見は変わらず、参った両国の王は皇太子にピースに近づくことを禁じ、ミュルクヴィズ国への入国を無期限で拒否された。皇太子は猛抗議したが廃嫡を盾にされ渋々引き下がったようだが、あの皇太子が黙って簡単に引き下がるはずも無く、この騒動に続く出来事が起こった。
ひと月前、お元気だったアルスマグナの皇帝が急病に倒れてしまったのだ。
王がいない今、一時的に政権が次期皇帝となるアルフレッド皇太子に移ると案の定、好き勝手のわがまま放題をして皇子やミュルクヴィズ国を困らしている。
そして、彼はこの機会を待っていたかのようにミュルクヴィズ国にピースを側室に寄越せと王命を使って手紙を出してしまった。
勿論、ミュルクヴィズ国はこれを拒否。
例え、次期皇帝だろうが、代理だろうが身内をゲスに送るような事はしなかった。
そんな頑なの態度をとられた皇太子は先人たちの長年の努力を無駄にするように宣戦布告をだしてきた。
これには流石のルイス皇子が止めに入ったが王に逆らったとして婚約者共々牢の中に監禁され、異議を唱えていた貴族たちも口をつぐんでしまった。
そんな中、選択を迫られた王たちにピースがこの婚姻を受け入れると申し出た。先人たちの長い努力を無駄にしない為、ピースは自分1人で解決するのならと皇太子の要求を呑むと王に告げた。
これには王や家族の反対があったが、ピースの意思は固く王は泣きながら膝をついてまで謝った。
『叔父さま、どうか泣かないでください。
私はこの国の為になれる事を誇りに思うのです。
限りある命を持つ私に巫の座を与えて下さった事、
私の意見を大切にして下さった事、
そして、彼等と共にいる事を許してくださった事。
私はとても幸せでしたッ....。』
『どうか、最後の願いとして、
彼等と最後のときを過ごすことをお許しください。』
『....ッ分かった。
婚礼迄の間、ピースに暇を出す事を許すッ。』
『ありがとうございます、叔父さま』
『すまないッ....ピースッ』
それが先日の話....
遂にその時がやってきた........。
《ピース・ミュルク》
新国の1つであるアドラルーマ国の十二幹部の一人としてVirgo(ウィルゴ)の座にすわる青年の名前。
その実力はとても高く、戦力や知力などオールラウンダー型の能力を持っている。
常にフードを被っている事が特徴な彼は旅をしている最中にこの国の新王に勧誘という名の誘拐に合い、色々と巻き込まれつつも最終的に王のカリスマに引かれて幹部の座に座ることとなる。
騒がしくも楽しく、仲間思いで優しい彼らとの日々に笑い合う彼は限られた時間を全て王に捧げ、いつの日か故郷との同盟を結べられたらと願うほど、《彼等》に入れ込んでいた。
いつかはこの場所を離れなければならないと知っていたはずなのに、そう願ってしまったのだ。
もう、お気づきだろう。。。
彼こそ、ミュルクヴィズ国の巫ピースである。
彼の元に届いた手紙は婚礼の準備が整ったという知らせであり、また、彼らの元を去るという現実でもあった。
「....終わってしまったのですね。兄上」
ピースは手紙に握り締め、苦しげに言った。
そして、全てを諦めたような表情をすると机の鍵付きの引き出しを開けると〖退職届〗と書かれた紙を取りだし、最後の欄に署名をする。
(もう、後戻りは出来ないッ....)
紙を机のすぐ目につくように中央に置くと、
予め用意していた荷物を手に持ち、部屋を後にする。
ここで得たものも贈られたものも全て置いていく。
持っていくのは少しの服と故郷へ向かう為の路銀だけ
キビキビと少し早足で進んでいく王と仲間の影が見え始める。いつもと変わらない光景につい足を止めてしまうが、溢れ出る何かを押し殺しそのまま彼らへと進んでいく。
『お!ピースか!
里帰り、気をつけていけよ!!』
『少し寂しいですが、楽しんでくださいね。』
『早く帰ってこいよ〜、ピース泣』
『道中、気を付けてな』
『お土産、ヨロヨロ〜〜』
『お土産は甘いものを所望するアル』
『俺、ご飯系で宜しゅうな!』
『ピースセンパーイ、行ってらっしゃい👋』
『怪我とか、病気とか、色々、気を付けてね💦』
『・・・・・(気をつけて)』
『少しは静かにせんか!!?』
各自の言葉にピースは微笑んで頷きながら、
心の中でもう戻らない事を謝り続けた。
最後に彼の前に立つ王と向き合い、王はピースの頭をフード越しに撫でながら、いつもとは違う優しい顔つきで言った。
『気を付けて帰ってこいよ。ピース・ミュルク。』
『ッ........。
はいッ、善処しますよ。』
『そこは分かったと言って欲しいんだがなw』
『............』
あぁッ、我が王よ。
どうかあなたの元を勝手に離れる事をお許し下さい。
あなた様に忠誠を誓えないことを、貴方たちを裏切るようなことをしてしまい、ごめんなさいッ....。
『『行ってらっしゃい、ピース』』
あぁッ、、、、
『....行ってきますッ、皆さん 。
どうか、お元気で』
わたしに優しくしないでッ....。
『........サヨウナラ(ボソッ』
ピースは荷物を後ろに彼等とお別れを済ませた後、
そこから逃げるように馬を走らせた。
目元から暑い涙が頬を伝うも彼、いや、彼女の目には真っ直ぐと前を見据えていた。
彼女は一度も振り替えることなく故郷へと向かった。
彼女の覚悟は決まった。
彼らが置き手紙ならぬ退職届を見つけたのは、
その後のはなしだった。
どうか、我らの王よ。
貴方の栄光と無事を願います。
・━━━ ℯ𝓃𝒹 ━━━・
Original №1 『幸せに』
〖拝啓 かつての友へ....〗
暖かな陽だまりと未だ残る涼やかなそよ風に舞うさくらの雨を他所に、1人静かと自室で文をしたためる子供は真っさらとした紙にペンを走らせる。
宛先はかつての親友と友人たちへ。
桜の花びらと共に流れる風に真っ白な短髪を揺らし、
文字を見る赤色の瞳は慈愛と懐かしさを浮かべている。紺色の作務衣に身を包み、その姿は子供の様だが、実際は何十、何百と生きているのでお酒を呑むことや煙管を吸うことだって出来る。
彼、いや彼女?
永く生きることで曖昧となった身体は性を失いつつあり、どう表記したら貴方たちに伝わるだろうか。
....では、ここでは彼と呼ぼうか。
彼が今、手紙を書いているのは、
毎年、桜の舞うこの時期。
届くことの無い手紙を何百通と書き連ねては
固く蝋で封をして、鍵のついた木箱に丁寧に並べる。
宛先は変わる事のない、かつての友人たちへ。
書くことは毎回同じで、去年起こった事、かぞくの事、相棒の事、こどもたちの事....など。
会うことのない友人たちに手紙を書く彼の心は
俺には分からない。
ただ、ふと思い出してはその思い出を語る彼の目に涙が溢れる姿を見るのはあまり良い想いはしない。
彼とその友人たちは、
遠い遠い昔にとある事情で決別して以来、会うことも無く二度と姿を見せる事はなかった。
俺としては彼に酷いことをしたアイツらが不安定になってしまった彼に近付くことなくて良かったと安堵していたが、彼はそうでもないよう。
苦楽を共にし、守り守られと長い絆と思い出は彼に残り続けている。変えることも忘れることも出来ない記憶は今尚、彼の心の一部を占めている。
『もし、違う道があったならッ....』
今とは違う【幸せ】があったのだろうか。。。
「....エネ、ボーッとしてどうした?」
「...ッ、すまない。お前に、見とれてたなw」
「wなんだそれは(苦笑)
変なことを言っていないで、夕飯の支度をするぞ」
「もう良いのか?」
手紙を書き終えたのか、
筆記用具を端に寄せ、封に蝋を押し、ある程度固まった手紙を木箱の中に仕舞う。
カタッ
「あぁ、書き終えたよ。
長らく待たせてしまったな。すまない」
「いや、どうって事ないさ。」
横になった体を起こし、彼に続いて自室を出る。
向かうは台所。
少し橙色に染まった空の下、庭先に植えられた桜の樹近くで騒ぐ青年たちと竹箒を片手に呆れる男性、その横には爆笑するもう1人の青年とオロオロとした中性的な少年が見え、俺は足を止める。
それにピタッと振り返り、同じように庭先を見る彼。
今となっては変わらない俺たちの日常。
守られた平穏と安寧。
異なる理由・境遇・種族であれ、
心に傷を負ったモノ同士が集まった《箱庭》。
(あの時の俺の選択は、
間違っていなかっただろうか。
この日常は彼を幸せに・・・)
「エネ」
ふと、愛称を呼ばれ思考が止まる。
前を向けばいつの間に近づいたのか、目の前に見慣れた赤色が広がったかと思うと両頬に手を添えて、短く俺の鼻に唇が落とされる。
突然の彼からのスキンシップに驚く俺に彼はそっと柔らかく微笑むと変な顔と笑った。
何処かでわぁわぁと騒がしい声が聞こえるが、
敢えて無視し、間抜けた声で彼の名前を呼ぶ。
彼は微笑みを浮かべたまま言った。
「僕は幸せだよ。」
あぁ、
そんなことを言われると手放せなくなるだろッ....。
「エネが居て、主が居て、皆がいる。
この今が僕はとっても幸せだ。
だから、、、後悔しなくていいんだ。」
本当に俺の選択は、間違っていなかったのか。
「間違いなんてある筈ないじゃないか。
あの時、僕が助けてと願ったんだ。
エネが後悔する必要なんて無い。」
「あのね、
僕が彼らに手紙を書くのは、
たんに寂しいとか、後悔だけじゃないよ。
いつか彼らがこの屋敷に招かれた時、
あの頃のように戻れると思って書いているんだ。」
戻れると思うのか。
お前に酷いことをしたのに。
「うん、許さないよ。許せることなんてない。
あの時の痛みも苦しみもずっと消えることなんて無
かったし、エネが居なかったら僕は消えていた。
でも、いつかその時はやってくる。
その時にあの手紙を見せて僕は幸せだよって見せつ
けてやるんだ。
僕も怒っているんだ。これくらいはしないとね。」
小せぇ、復讐だな
「フフ、そうだね。
僕はまだまだ彼らに甘いみたい。」
「....本当に今は幸せか?」
「幸せだよ。
君に会えたことも、彼らと会えたことも。」
幸せだとひと目で分かるように微笑み、
頬を赤く染める彼の彼らの言い方には友人に向けてでは無い慈愛が含まれている。
あの時から長い月日を共にし、
彼の言う友人たち以上に苦楽を共にした俺たちは
家族でも友人でも、恋人でもない。
それ以下でも以上でもない【相棒】という関係に
身を委ねてもいいだろう。
彼の後ろにしか立つことができなかった
“かつての”友人共へ
俺は今、こいつの傍に立っている。
あぁ、俺も幸せだ。
「 」
チュッ
「っ!?」
「お返しだw」
あいつのふわふわとした頭髪に素早く唇を落とすと
彼は目を見開いて、微かに耳と首元が朱く染まる。
髪も肌も白いとより朱がより際立つ。
その反応に沈んだ心情が暖かく、うきよだったものになるといい気持ちになる。
「エネ!」
今後ろを振り返ればより真っ赤になった彼が見れるだろうが、今は夕飯の支度をしなければならないのでそのまま台所へと向かう。
今日は、彼の好物で機嫌を直してもらおうかw
・━━━ fin ━━━・