この世界には守るべきルールと、守らなくていいルールがある。
人を傷つけないための約束と、ただ誰かを従わせるための決まりは違う。
秩序の名を借りた窮屈さに、心まで差し出す必要はない。
昔からあるというだけで、正しさまで受け継がれるわけでもない。
声を上げることが無礼とされる場所ほど、沈黙ばかりが育っていく。
従うことに慣れすぎると、自分の痛みにも鈍くなる。
守るべきなのは形ではなく、その奥にある思いやり、尊厳だ。
この世界には守るべきルールと、壊されるべきルールの両方があるのだ。
雫は、零れ落ちた瞬間にだけ確かな形を持つ。
指先で受け止めようとした途端、ただの冷たさに変わってしまう。
言葉にできなかった想いも、きっとそれによく似ている。
胸の奥で揺れているうちは綺麗なのに、外へ出せば輪郭を失う。
雨上がりの窓に残る一粒だけが、妙に孤独を知っているようだった。
誰にも気づかれず落ちて、静かに地面へ溶けていく。
それでも次の朝には、何事もなかったように光を映している。
雫とは、儚さなのかもしれない。
本物以外、何もいらない。
知り合いはもういらない。
名前ばかり増えていく関係なら、持たなくていい。
すぐに消える言葉にも、その場しのぎの温度にも心を預けたくはない。
一人でいる寂しさより、集団の中で得る空虚の方が方がずっと冷たい。
だから数ではなく、たったひとつでも本物を探す。
傷つくことになっても、嘘に囲まれて鈍るよりはいい。
この胸がまだ何かを求める限り、諦めたふりはしたくない。
知り合いはいらない、ただ偽物ではない何かだけあればいい。
もし未来を知れるなら、結末じゃなくてその途中を見てみたい。
結末を見るだけでは知れない感情が、きっとそこにはあるから。
僕に出会う前の君が、どんな退屈を抱えて歩いていたのか知りたい。
何気なく交わしていた言葉が、いつ特別なものへ変わったのかも知りたい。
ふたりが分かれる日が来るのなら、その時はどんな沈黙に紛れていたのだろう。
幸福はたいてい、幸福だと名乗らぬまま過ぎ去っていく。
だから見たいのは終わりではなく、確かに満たされていた無数の途中なんだ。
届かないと分かっているものほど、美しく見えてしまうのはなぜなのか。
三年目に出逢った君のことを、僕は何度も浮かべてはかき消していた。
会って話せるのは週に一度。
三限終わり、駅前コンビニ喫煙所。
笑い合う景色も、二人並んで歩いた景色も、どちらも鮮明に胸の中に刻み込まれていく。
卒業まで一年をきった。これ以上伸びることのないゴールライン。終わりは約束されている。
一体僕は、移り変わっていく君の世界にどれだけ残れるだろう。
君が吸って吐いた煙のようになって消えてしまうのだろうか。
そんなことばかり考えて、それでも君を諦めるには離れ難く、心は理屈を置き去りにして君のいる方へ向かっていく。
叶うかどうかではなく、君との未来を、叶わない未来を願う。
きっとこのままでは救いはない。
それでも僕の夢見る心は、なお懲りずに明日を描いてしまうのだ。