松依 私。

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6/30/2023, 2:27:24 PM

私の小指には赤く、
弱々しい糸が何処かへと続いていました。

これはあの、
運命の赤い糸と言うやつでしょうか。

すると興味心が湧き、
糸の続く先へと進んでいきました。



それを見た時、私は何も動かず、
ただ呆然と立っていることしか出来なくなりました。

その糸先には、続きすらなく、
胸の前で1本の先のちぎれた糸が浮遊していました。


すると、そこへどこか楽しそうな男女の声が耳に届きました。
2人は、私と同じような赤い糸に繋がれていました。

その瞬間私は、
失恋したという現実に耐えきれなくなり、
後ろに重心が倒れてしまって尻もちをついてしまいました。

ははっ笑,,と、
枯れた笑いが零れて重たく落ちてきた髪を、さっとかきあげて視線を足元に移しました。


恋は、惚れてしまった者が負け,,,なんてよく耳にしますが、本当にそうだと実感せざるを得なくなった私でした。

6/29/2023, 1:21:23 PM


目の前に広がる、入道雲。
それはまた、
夏の主役を勝ち取ったかのような、
大きさでした。

そして、
それを背景に1人の少女が何か、
手元の手帳に書き込んでいました。

「筆走る ひとつの空に 爽やかな
風がうつした 夏の情景」

短歌でした。
それは、穏やかな彼女の心中が映し出されているかのような、短歌でした。
ちょうどその時、ひとつの風が吹きました。
まさにその、短歌に出てきたような爽やかな風でした。

その時の、
光景・時間は、
何かの物語の中ではないかと思わせる程、
鮮やかで、美しいものでした。

6/28/2023, 11:48:05 AM

夏-。
君はいつもこの時期になると、
薄い生地のまっさらな制服に、
赤い花のようなリボンをちょんと付けて。
強い日差しがあるというのに、白い透き通るような肌を出して。

学校終わり。
一筋の汗を流し、太陽・コンクリートからの熱を受け、怠そうに体を動かして、近くの駄菓子屋からラムネ瓶をひとつ頼む。
爽快感を求めて、ごくごくと喉を鳴らして火照ったからだに冷たいソーダを、流し込んでゆく。

その後必ず、僕の家に寄ってお母さんと話していく。
そして、気づけば僕の部屋に寝転んで風鈴の音、夏の音を2人で聞いている。
扇風機を回して、やっと居られるかどうか分からなくなるような暑さを持つ部屋に、
何故毎日のように来るのか。
検討もつかなかった。

少し汗ばんだ制服。
綺麗に美しく靡く黒髪。
寝転んでいるせいで、太もも辺りまで上げられた紺色のスカート。

そんな格好の君に、毎回直視出来ずにいた。

6/27/2023, 12:22:03 PM

そいつが言った。

ーここでないどこかでまた合えたら。

始終、何もはっきりとしていない。

放り出しているかのようにも感じる。

無責任な言葉だと言う。

しかし。

自由さが少々滲み出ている。

楽観的。

ゆったりと。

マイペースな性格の持ち主だ。

ゆらゆらと突然やってくる。

酒を片手に、ヘラヘラとした笑みを浮かべながら。

ただ、酔いに来た-。

何かを隠すかのように、言葉を濁して。

その瞳には、なにも写してはいなかった。










6/25/2023, 2:05:36 PM

「-精細な花って、ご存知です?」

繊細な花,,,
想像もつかないのですが、
それは、貴方のような花の事ですか,,?

おや、違うのですか。
では、
教えて貰ってもよろしいでしょうか。

ん?
何故私のような花だと思われたのかって、
特に深い意味はないんですけどね笑
ただ、僕にはそう見えただけですよ。
手が触れただけで、華やかに。美しく。
それでいて、静かに散ってしまいそうで。

ふふっ笑
何をそう、恥ずかしがるんです?
本当に可愛らしいお方ですね,,。
で、僕の質問の答えを聞いていないのですが。


「答えなんて無いんです笑
ただ、誰かの意見を聞いてみたかっただけなんです。
花は全て繊細だと思いますし。
でも、繊細な花って言葉にしてみると、
花のその、繊細さ・魅力が誇張して見えませんか?
それと、花でも、いくら繊細であっても、土との縁は自ら切る事は出来ないと言う事を、示しているのではないかと私は、思っているのです。」

確かに,,そうですね。
今日も、また美しい言葉を教えて頂きましたよ。
あの、僕、あなたの世界観、審美眼、感性などが、本当に好きなのです。
だから-。


最後の言葉を聞く前に、彼は天へと登って行ってしまった。
私も、好きだったんです。
ふわふわと、柔らかそうな髪。
おっとりとした、低めの男性らしい声。
端麗で、優しそうなその、大好きなお顔。

「繊細な花」
とは、彼に作り、送った言葉なのです。
私はずっと、儚く繊細な彼がいつか、
ふらっとどこかへ、
行ってしまうのが怖くて。もう,,,。

繊細な花。
この言葉で、彼を縛っていたくて。














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