小絲さなこ

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1/27/2025, 8:23:55 AM


「アレと同じに例えないで」

驚かすのも驚くのも苦手だから、いわゆるサプライズも苦手だった。
だから、サプライズのパーティーするから協力してと頼まれるとモヤモヤする。
相手はサプライズ大丈夫な人なのかって思ってしまう。

「そんなわけだから、サプライズだったら協力出来ない」なんて言うわけにもいかず、逆に不自然な態度を取ってしまい、勘の良いターゲットにバレてしまうという……

「なんでいつもポーカーフェイスなのに、サプライズ隠しておけないのよ」
「だってさ、近くにイニシャルGがいるのわかっていて、平静を装うなんてできる?私には無理。それと同じだよ」
「アレと同じに例えないで!」
「それくらい、苦手ってこと」


────わぁ!

1/26/2025, 9:07:15 AM

「第二章始まる」


想いが通じ合った幼馴染の、ふたりの初デート。
漫画なら、これが最終話かエピローグだろう。

いつもなら、昨日までなら、お互いの家の中間地点でバイバイしていた。
だけど、彼氏彼女の関係になったのだから、数十メートルでも彼女の家に送り届ける。


「これからも、よろしくお願いします」

右手を差し出すと、なにあらたまって……と言いたげな表情をされてしまった。

「ほら、今日からちょっと関係変わっただろ。だから……」
「そう、だね」

ぽぽぽぽっと頬を染める彼女を抱きしめたくなったが、耐える。ここは彼女の家の前!

握手をして、見つめ合う。

俺たちの第二章が始まる────



────終わらない物語

1/25/2025, 9:08:53 AM


「姉の苦悩」


サンタクロースの正体を知ったのは、私が五歳、弟が三歳の時だった。

我が家のサンタはふたり。
そのうちのひとりは女のサンタで、私にこう言ったのだ。

「あの子には、私たちサンタの正体は内緒よ」


あれから十三年。
弟はいまだにサンタクロースの存在を信じている。
高校生にもなってどうなのかと思う。
だけど、弟の友人たちも本当のことを言わずにいてくれているなんて、あいつは恵まれている。
いや、私と同じく、いつまで信じていられるか面白がっているだけかも。

母は大丈夫かしらと心配しているが、大丈夫でしょう。サンタの正体知っても、弟のことだ、せいぜいプチ家出するくらいだろう。しかも家出先は、あいつの友人宅だろうから。

一方、私はいつの頃からか、サンタクロースの仲間になっていた。
毎年送られてくる、サンタクロースへの手紙の返事を書くのが私の役目。

弟は頑張って英語で書いてくれるんだけど、スペルとか文法とか色々間違いだらけ。添削したいのをグッと堪えている。


────やさしい嘘

1/24/2025, 8:43:41 AM

「もしそれが本当なら」



もしかしたら、もしかするかもって、思っては打ち消していた。

彼の瞳に私が映っている。
たぶん、私の瞳には彼が。

保育園の頃──男女の違いもよくわかっていなかった頃からの付き合いだから、距離が近いなんて今さらだ。
だけど、付き合ってもいない男女の『ふつうの距離』ではないことくらい、この年になれば流石にわかっている。

もしかして、もしかしたらって──

それは、彼の気持ちだけではなく、私の気持ちも。

これ以上ないほどに近くなる。

期待、疑惑、混乱、そして、確信?

瞼を閉じて、それを確かめる。



────瞳をとじて

1/23/2025, 8:09:55 AM

「お気持ちだけで」


どうやら俺が彼女へ贈るプレゼントは、センスがズレているらしい。

中学生の頃にあげたアクセサリーは、付けているのを見たことがないまま、十年。
何が欲しいか訊いても「気持ちだけで充分だよ」と言う。
「何も買わなくていいとか、羨ましい」と友人に言われたが、意味がわからない。

「なぁ、本当に何もいらねーの?」
「うん。気持ちだけで」
「そういうわけにもいかないっつーか」

俺は食い下がった。
今年こそ、ちゃんとしたプレゼントを贈りたい。

「じゃあ、当日は朝から夜までずっと一緒にいて」
「そんなことでいいのか」
「うん」

ふたりで一緒に過ごす時間が、どんなに尊いものか。
それがわかるのは、遠距離恋愛せざるを得ない状況になってからだった。


────あなたへの贈り物

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