「お気持ちだけで」
どうやら俺が彼女へ贈るプレゼントは、センスがズレているらしい。
中学生の頃にあげたアクセサリーは、付けているのを見たことがないまま、十年。
何が欲しいか訊いても「気持ちだけで充分だよ」と言う。
「何も買わなくていいとか、羨ましい」と友人に言われたが、意味がわからない。
「なぁ、本当に何もいらねーの?」
「うん。気持ちだけで」
「そういうわけにもいかないっつーか」
俺は食い下がった。
今年こそ、ちゃんとしたプレゼントを贈りたい。
「じゃあ、当日は朝から夜までずっと一緒にいて」
「そんなことでいいのか」
「うん」
ふたりで一緒に過ごす時間が、どんなに尊いものか。
それがわかるのは、遠距離恋愛せざるを得ない状況になってからだった。
────あなたへの贈り物
1/23/2025, 8:09:55 AM