小絲さなこ

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「姉の苦悩」


サンタクロースの正体を知ったのは、私が五歳、弟が三歳の時だった。

我が家のサンタはふたり。
そのうちのひとりは女のサンタで、私にこう言ったのだ。

「あの子には、私たちサンタの正体は内緒よ」


あれから十三年。
弟はいまだにサンタクロースの存在を信じている。
高校生にもなってどうなのかと思う。
だけど、弟の友人たちも本当のことを言わずにいてくれているなんて、あいつは恵まれている。
いや、私と同じく、いつまで信じていられるか面白がっているだけかも。

母は大丈夫かしらと心配しているが、大丈夫でしょう。サンタの正体知っても、弟のことだ、せいぜいプチ家出するくらいだろう。しかも家出先は、あいつの友人宅だろうから。

一方、私はいつの頃からか、サンタクロースの仲間になっていた。
毎年送られてくる、サンタクロースへの手紙の返事を書くのが私の役目。

弟は頑張って英語で書いてくれるんだけど、スペルとか文法とか色々間違いだらけ。添削したいのをグッと堪えている。


────やさしい嘘

1/25/2025, 9:08:53 AM