小絲さなこ

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1/22/2025, 8:21:23 AM



「私の場所は私が決める」


見た目のせいか、あいつは誤解されやすい。
小学生の頃は怖がられていたし、中学生の頃は不良っぽい先輩に絡まれていた。
しかも負けん気が強くて口が悪く、それなりに腕力もあったものだから、反撃してしまって……噂通りの不良だと噂されてしまうし。

「俺に近づくなって言ってるだろ」

あいつが私を突き放す時の言葉。
縋るような目で言われても、ねぇ……
物心つく前からの付き合いなのだ。
こいつが誰よりも寂しがりやなのを、私は誰よりも知っている。


「俺と一緒にいたら、お前も悪く言われるだろ」

だから何だというのだ。
私のことをちゃんと見もしない人からの評判なんて、くだらない。
誰に何を言われても、私はこいつの側にいる。
私の場所は、私が決める。
今までも、これからもずっと。


────羅針盤

1/21/2025, 8:28:08 AM


「叱られるかな」

ふとした時に、思ってしまう。
もしも今、彼女が生きていたらって。
今の私を見たら、なんて言うだろうって。

彼女は純粋過ぎる子で、揶揄ったことや、人のことを悪く言ったことが一度も無かった。
だけど、今の私を見たら、流石に何か言うのではないだろうか。
それくらい、酷い暮らしをしている。

暗い部屋の中、電気も点けず、液晶画面に齧り付く昼夜逆転した日々。
外に出るのは、月に数回。
明日こそ、明日こそやめなきゃと思って、少しずつ活動時間をズラしているけど……
このペースでいくと、一般人に戻るのに何年かかるだろう。

もしも今、彼女が生きていたら……
私のこの生活を見て、どう思うだろう。
流石に叱られるかな。
それとも「頑張ってるね」って言ってくれるかな。


────明日に向かって歩く、でも

1/20/2025, 8:37:07 AM

「直球の言葉」



「俺の良いところって、なんだろう」

いつもギャーギャーうるさい彼が珍しく静かだと思ったら、どうやら何か悩んでいるようだ。

「いつも元気なところ」
「ううーん……そういうんじゃなくてさ」
「ストレートな言葉で人を褒めたり、素直に気持ちを言えるとこ」
「単に難しい言葉わかんねーだけだよ……」
「いやー、でも素直に気持ちを言うのって、なかなか出来ることじゃないと思うよ」
「嘘つくのめんどくせーだけだし」
「面倒だから、心にもないこと言う人もいるんだよ」
「なんだそれ」

彼の頭が、私の肩に押し付けられた。

「ごめん、今の俺、すげーめんどくさいヤツだよな」
「そんなことないよ」

子供の頃からの付き合いだから、何でも知っていると勘違いしそうになる。

甘えるような仕草も、弱音も、見せてくれたのは、幼馴染から関係が変わってからだった。
それが、とてつもなく嬉しい。



────ただひとりの君へ

1/19/2025, 8:34:06 AM


「あなたのために作るもの」

手作りのアクセサリーは、ひとつとして同じものにならない。
誰かのためにひとつひとつ作る。
それが、手作りの良いところでもあり、難しいところでもあるのだ。


パーツに黒、紫、青、白の四色のUVレジンを流し入れ、グラデーションを作っていく。
ラメやホログラムなどのパーツを配置し、硬化させる。

「────とまぁ、天の川みたいなアクセサリーの作り方は、こんな感じ。簡単だよ」
「いやいや、簡単じゃないから!」

十年来の友人に贈ったレジンアクセサリーの作り方を訊かれたので、ざっと説明したのだが、簡単じゃないのか。そうか……

「小学生の頃からビーズだのフェルトだの、色々作っていたから簡単に思えるだけじゃないの」
「そうかなぁ……ていうか、よく覚えてるね〜」

彼女とは小学生の頃からの付き合いだ。

「当たり前じゃないの。毎年、マスコットとか、アクセサリーとか作ってくれたし」
「あー……今考えると、下手なもの押し付けてたかも。ごめん」
「そんなことないって。小学生にしては上手だったと思うよ。実はまだうちにあるんだ。今度持ってくるね」
「それはやめて……」

────手のひらの宇宙

1/18/2025, 6:15:08 AM


「誤解を招く言い方しないで」


ゴウッと強い風が吹き、ロングスカートが踊る。
この丈では真下から風が吹かない限り、スカートの中が見えることはない。
しかも見えたとしても黒の一分丈レギンスが見えるだけだ。

「……なにやってんの」

隣でヤンキー座りをしている彼を睨みつける。

「いやぁ……見えるかなぁと思ってですね」
「変態」
「ゴミを見るような目で見られた。ちょっとゾクゾクしてきた」
「誤解を招くような言い方やめて。もういいから早く歩いて」
「へいへい」



────風のいたずら

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