小絲さなこ

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6/21/2024, 3:08:59 PM

「ぶりっこの色」




「小学生の頃『ピンクはぶりっこの色』っていう風潮があって、嫌だったなぁ」

「あー、あった、うちの小学校もあったよ、それ」

「そうそう……で、水色選ぶんだよね」

「私は水色好きじゃなくて、黒選んでた」

「紫選んだら『いやらしい色だ。変態の色だよ』とか意味わからないこと言われた」

「あー、あったね。紫はヘンタイとか」

「なんだったんだろうね、あれ」


それぞれ別々の小学校どころか地域も違うのに、同じ年頃に同じようなことがあったということは『女の子らしくなりたくない』という気持ちが湧き起こる、そういうお年頃、というものだったのだろう。


「『ピンクってぶりっこの色だよ』ってしつこく言ってくる子がいて、ムカついたから『人の好きなものをヘンなふうに言う意地悪な子は嫌い』って言ったら、その子泣いちゃってさ……」

「うわぁ」

「その子、前から私の好きなものにケチつける子だったから、子供ながら鬱憤たまってたんだろうね……つい、口から出てた」


今、その子はどこで何をしているのか知らない。
でも、私に言われたことが泣くほどのことだったのなら、誰かの好きなものを貶したりケチつけたり……そういうことをもうしていないと思いたい。


────好きな色

6/20/2024, 2:40:45 PM

「騎士と姫」


保育園の頃の君の夢は「おひめさま」だった。
俺に「おうじさまになって」と君が言ったから、身の程知らずな俺はすっかりその気になってしまったのだ。

だけど、成長するにつれて気がついた。
誰がなんと言おうと君はお姫様だけど、俺は王子様なんかになれない。そんな柄ではない。
だけど、せめて騎士になりたい。
常にお姫様をあらゆるものから守る、騎士。

だから、常に君の側に居させてほしい。



────あなたがいたから

6/19/2024, 3:47:17 PM

「濡れた右袖」



みんなの前では、うっかり者を演じているから、毎度毎度、傘を忘れても怪しまれない。
どうせ隣の家なんだし入れてくれよ、と君の傘を奪う。

いつもより、近い距離。
君の方に少し傾けて長傘を持つ。

「今日午後から雨だって天気予報で言いまくってたのに。ニュースくらい観たら?」
「んー、それより寝ていたい」
「もー」


君の自宅に傘ごと押し込み、雨の中に飛び出す。
濡れた右袖を君に気付かれないように。






────相合傘

6/18/2024, 2:29:59 PM

「罪悪感は最初だけ」


どんな汚い手を使ってもいい。
ほんの僅かな罪悪感を抱くだけで、貴女を手に入れられるのなら。

初めは、そう思っていた。



消えていく罪悪感と、それと引き換えに得るものは、ある種の快楽だ。


貴女が気が付かないうちに、見えない檻に閉じ込めていく。


一生気付いてほしくない。
その一方で、気付いて絶望に塗れた表情を見せてほしいとも思う。


罪悪感なんて、もう抱かない。


────落下

6/17/2024, 3:40:46 PM

「Plan」


その日その日を生き抜くだけで精一杯。明日どうなるのかも
わからないのに、将来のことなんて、想像したことがなかった。

自分の好きなものすら、わからなかったくらいだ。やりたいことなんて、わかるはずがない。
たとえあったとしても、自分には無理だろうと思っていただろう。
あなたに出会うまでは。


あなたの描く人生設計には私がいて、ふたりで年を重ねていくことは当然のことなのだという。


長生きなんてしたくないと思っていた。

でも今は、可能な限りあなたの側に居たいと思う。


────未来

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