小絲さなこ

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6/11/2024, 2:41:02 PM

「駐車場で遊んでいたこと」


少し遠くに高層ビル。
その手前にマンションやらビルやらが見える住宅地。
遊び場は駐車場。

公園に行くには大通りを渡らなければならない。
子供たちだけでそこに行くのは危ないし、日中はほとんど車の出入りがないから、みんな駐車場で遊んでいた。

問題は、すぐに吠えて噛み付く犬の散歩コースだということ。
その犬が来るとみんな逃げる。一目散に逃げる。
たまに逃げ遅れて追いかけられたり、噛まれたりしていた。今から思うと、飼い主は何してたんだろうと思う。

駐車場だから、ボール遊びは出来ない。
せいぜい缶蹴り。
ドロケイが多かったかな。
あとは、隅にある椎の木に登ったり。

たまに駐車場から出て、家と家の間の狭い空間をすり抜けていく、探検ごっこ。
今から思えば不法侵入だ。
塀を乗り越えようとしてスカートの裾を破いたこともあった。

地面に書いた絵をバケツに入れた水で消して、バイバイ。


静かにしていると聞こえてきた、路面電車の音。
今はもう、軽くて静かな音に変わってしまった。

それでも、高層ビルと、煌びやかで鮮やかな光、路面電車を見ると帰ってきたと思う。
どんなに他の建物が変わってしまっても。
あの頃仲が良かった子たちが、この街にひとりもいなくても。


────街

6/10/2024, 2:24:51 PM

「決める勇気」


とくに得意ということがなく、逆にすごく不得意なこともない。
自分の長所も短所もよくわからない。

自分がどうしたいのかが、わからない。

本当のことを言うと、やりたいことがありすぎて、どれを選んだら良いのかが、わからないのだ。

親の跡を継がなければならないヤツが少しだけ羨ましい。継ぎたくないって言ってるあいつには絶対言えないけど。


失敗したくない。
だけど、得意なことが特にない自分は、どの道なら、うまくいくのかわからない。

道を間違えるのが怖い。
外に出なければ、迷子にはならない。
ドアの前で立ち止まっている。

こんな感じだから、他人から見たらやりたいことがないように見えるのだろう。

決める勇気がないだけなのに。



────やりたいこと

6/9/2024, 10:14:05 PM

「雨戸のない部屋」




眩しさに目を覚ます。
いつもなら起き出す時間だ。

日曜日。
試験も終わり、バイトもない。

雨戸がない西向きの部屋にも少し慣れた。

隣で眠る遠距離恋愛中の彼女が身じろぎする。
眩しいのだろう。もぞもぞと頭を布団の中に入れていく。

久しぶりに会えたのだから、どこかに行きたいし、色々なことを話したい。
だけど、もう少しこのままでいたいとも思う。

 
あと五分……
いや、十分。
君が目を覚ますまで、このままで。


────朝日の温もり

6/8/2024, 4:04:55 PM

「柵(しがらみ)」

運命なんて、自分ではわからない。
いつ命を落とすのかもわからない。
数分の差で、そのあとの人生が変わってしまうかもしれない。

それなのに、普段はそんなこと気にしないで生活してる。




「本当は、やりたいこといっぱいあって……たぶん、何年生きても足りない」

だけど、親に決められたレールの上を歩くことになりそう、と彼は言う。

人の寿命なんて誰にもわからない。親よりも長く生きられる保証なんてどこにもないのに、親のために生きるの?

しがらみも、立場も気にしないで、自分のためだけに生きてほしい。
そう、言えたら……

他人の私には、黙って見守ることしかできない。



────岐路

6/7/2024, 3:36:26 PM

「君には知られたくないこと」



君と結ばれないのならば、生きる意味も価値もない。

物語に出てくる魔王のような力があったなら、世界ごと滅ぼしてしまうだろう。

こんなことを考えているだなんて、君が知ったらどう思うだろうか。


君が誰かに奪われてしまったら、辺り一面焼き尽くすだろう。

閉じ込めたはずの君が脱走したら、世界の果てまで追いかけるだろう。
そして、二度と逃げられないように、この手で君の命を奪ってしまうかもしれない。


君のいない世界などに意味も価値もないから、そのまま世界も滅ぼすだろう。


何の力も持たないことに安堵して、苛立つ。


────世界の終わりに君と

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